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インタビューメソッド#01<ヒストリーシート>

人物取材の手法としてヒストリーシートがあります。取材対象者に過去から現在に至るまでの経験とそこでの感情の起伏を書いてもらい、行動変容や感情変化とその因子となった出来事などを洗い出そうとするアプローチです。

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慢性的な疾患の治療経験、仕事のキャリア、エイジングと美容、お金や資産に対する考え、といった中長期的に変化していくテーマを扱うときに適しています。これらのテーマは対象者にとって様々な出来事が繋がった一連の経験であると言えます。したがってある瞬間だけの出来事やそこでの感情を切り取るよりも、事象間の関係性や全体のコンテクストで考えることが大切です。ヒストリーシートを使うことで、経験全体としてのコンテクストが掴めたり、個別の事象の意味がより深く理解できたりします。

取材対象者にとっても過去から順を追って振り返っていくことで、自己の経験を棚卸することができ、自分自身でも無意識だった考えや思考を整理して言語化できるようにもなります。インタビュアーとインタビュイーの1to1のやり取りにヒストリーシートというマテリアルが間に入ることで対話がスムーズになるといった利点もあります。

先述の通り、ヒストリーシートは、健康・仕事・美容といった個人の潜在的な価値観と深く結びつくテーマにおいて特に有効な手法ですが、その他の多くの分野でも活用が期待されそうです。今や様々な分野において、事業者が提供する製品やサービスと顧客との関係は複雑化してきています。作って売るという単純なモデルはもはやなく、複合的かつ中長期的なやりとりを通じて丁寧に関係性を作っていくことが求められています。

そういった意味では、特定の分野のみならず、より多くの分野でのヒストリーシートの活用が期待されそうです。

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