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年金2,000万円問題について有権者として整理してみた

そもそも論点がわかってなかったのですが、参院選も近いし理解しておこうと思って調べてみました。

2,000万円はどこから出てきた数値か?

金融審議会の市場ワーキング・グループがまとめた「高齢社会における資産形成・管理」という報告書(以降、報告書と称します)に記載されている内容が元になっているようです。6月3日に金融庁が公表しています。次のリンク先の(別紙1)が報告書の内容です。

まず、報告書次のように書かれています。

収入も年金給付に移行するなどで減少しているため、高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は約5万円となっている。
(報告書p.10より引用)

同じページに実際の収支(平均値)が図示されています。解像度が低かったので、出典元スライド資料p.24の図を載せます。

高齢夫婦無職世帯の収入・支出の平均値を、2017年に実施した家計調査を元に示しています。
実収入209,198円に対して、実支出は263,718円です。支出の方が54,520円(約5万円)多いです。

これを受けて、報告書に2,000万円の根拠(前提条件)が書かれています。

収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20 年で約 1,300 万円、30 年で約 2,000 万円の取崩しが必要になる。
(報告書p.16より引用)

5万円 × 12ヶ月 × 30年 = 1,800万円(約2,000万円)です。

なお、この間に給付される社会保険給付は、191,880円 × 12ヶ月 × 30年 = 69,076,800円(約7,000万円)です。上記の例の場合ですが。

2,000万円「不足」するとは書かれていない

上記の収支の例において、収入源は主に社会保障給付(つまり年金給付)であり、退職金などの貯蓄が含まれていません。そのため、例えば退職金が2,000万円あれば、30年間は家計が赤字になりません
また、上図の右の方に書かれている通り、調査対象の平均純貯蓄額は2,484万円であり、2,000万円の収支差額を補えます

そもそも貯蓄額を前提に支出をしている家計が多いはずなので、年金給付だけでのやり繰りを計画している家計があるとは考えづらいです。このため、上記の家計は特に問題ない(2,000万円の不足は生じない)と言えます。

年金と貯蓄を合わせても足りない場合はどうする?

上記の例は平均値なので、貯蓄が少ない世帯もあります。報告書には、平成26年度の全国消費者実態調査を元に次のように書かれています。

65 歳時点における金融資産の平均保有状況は、夫婦世帯、単身男性、単身女性のそれぞれで、2,252 万円、1,552 万円、1,506 万円となっている。
(報告書p.16より引用)

単身世帯は夫婦世帯より金融資産が少ないですね。支出を抑えるという対処もできますが、生活水準を下げたくない場合は資産形成が必要になります。そこで、報告書には次のように書かれています。

自らの望む生活水準に照らして必要となる資産や収入が足りないと思われるのであれば、各々の状況に応じて、就労継続の模索、自らの支出の再点検・削減、そして保有する資産を活用した資産形成・運用といった「自助」の充実を行っていく必要があるといえる。
(報告書p.24より引用)

また、調査結果に関して次のような記述もあります。

投資による資産形成の必要性を感じつつも、投資を行わない理由として上位を占めているのが、「まとまった資金がない」、「投資に関する知識がない」、「どのように有価証券を購入したらよいのかわからない」という回答であり、顧客側の問題に加え、金融機関側が顧客のニーズや悩みに寄り添いきれていない状況が窺える。
(報告書p.20より引用)

投資したいけど方法がわからないという人もいるので、金融機関がサポートできれば不足分をある程度は補えるよね、という感じですかね。

まとめ

2,000万円は、年金給付をおもな収入源とする高齢夫婦無職世帯が、30年間にわたって貯蓄から切り崩す総額を算定したものだった。調査対象世帯には平均で2,000万円以上の貯蓄があるため、不足額ではない

感想

2,000万円不足する世帯もあるとは思いますが、貯蓄がある世帯の実収支を元に算定した値だとわかりました。しかし、貯蓄から切り崩す分の5万円を「赤字」と表現されると誤解しますよね。。実際、私も心配してました。

まあ参院選の争点にするほど重要な話ではなさそうです。消費税の方が重要かな。そもそも退職後の生活より、南海トラフ地震の方がよっぽど心配です。

ただ、メディアで取り上げられたおかげで調べようと思えました。デモに参加する性格ではないので、調べる癖はつけていきたいと思います。
最後に、以下の記事のおかげで問題が整理できました。感謝。


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