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孫氏憂う、日本のChatGPT利用率は7%、禁止企業は72%

2023年10月4日に孫氏の1時半22分に及ぶChatGTPへの熱い思いを語った講演の要約をNoteにします。

孫さんは以前はGPT-4相手に壁打ちをしてたけど、最近はアーム社に複数のGPT-4がディスカッションする装置を作ってもらいそれに参加しているとの事、また、印象に残ったのは「人間のニューロンとAGIのニューロンは、金魚のニューロンと人間のニューロンの差くらいで、AGIをこの先使いこなせるようにならないと金魚の脳みたいになっちゃいますよ。」と力説していた事でした。最大マジョリティーが団塊の世代の70代だという日本ではたしてどれくらいの人口がAGIを使いこなせるようになることやら。


AIの未来: 人工知能は人間の知恵を10倍に拡大する

彼の話の核心は、知能の強さがハードウェアとソフトウェア、この二つの要因によって定義されるという点です。人間の脳のニューロンの数はハードウェアに相当し、学習と教育はソフトウェアに相当すると述べました。

孫氏は、AIの力は同様にハードウェアの強さ、つまりニューラルエンジンの力と、AIのトレーニング、これがソフトウェア的な要因であると明示しました。これら二つの要因の進化により、AIの時代が加速していると指摘しました。

そして孫氏は、"AGI"という言葉を紹介しました。AGIは「Artificial General Intelligence」の略で、これは人間がどんな質問を投げかけても、AIが人間以上の知恵で回答するレベルの知能を指します。孫氏の見立てでは、AGIは人間の知恵の10倍の知能を持つと語りました。そして、このAGIの達成は10年以内に実現すると強く信じています。

ChatGPT-4と未来のAI: 人類の知恵を進化させる

彼は、GPT-4を毎日仕事に活用している人々が少ないことに驚きを表明し、これは電気や自動車を拒否するのと同じで、現代の革新的な技術を拒否することは進歩に対する大きな阻害であると強調しました。

孫氏は、GPT-4は知識の検索ツールとしてではなく、知恵の相談相手やディベートのパートナーとして使用することが重要であると説明しました。彼自身もGPT-4をディベートの相手として使っており、これが新しい見解や解決策を生み出す助けになると述べました。

生成AIと未来のAGI: セルフラーニングと知識の拡充

孫氏は、GPTの新しいバージョン(GTP-4V)が、例えば自転車のサドルの高さを調節する方法を画像認識を通じて指導する能力を持つことを示しました。さらに、テスラの整備マニュアルを一度学習するだけで、GPTは専門の整備士のようにテスラのメンテナンスを指導することができると述べました。

彼は、多くの企業が画像、映像、アバター、音楽、コード生成など多くの分野で生成AIを利用し、これが今後のAI技術の競争を加速させると指摘しました。

インターネット黎明期からAI時代へ

孫正義氏は、ソフトバンクがインターネット関連事業に早期に参入した経験と、その時の日本の大企業や知識人たちの否定的な態度について回顧しました。彼は、インターネットの可能性を早期に認識し、Yahoo!やAlibabaとのパートナーシップを築きましたが、当時は多くの人々から馬鹿にされ、インターネットバブルが崩壊した際には、詐欺師のように非難されたと述べました。

しかし、時が経てば、インターネット関連の企業は世界経済を牛耳るようになり、特にアメリカの企業がその中心となりました。現在、世界のトップ10企業の多くはインターネット関連企業であり、これはインターネットの力と、それに取り組んだ企業や人々が世界をリードしていることを示しています。

孫氏は、物造りが日本の魂であると主張していた人々に対し、物造りや組立業がコモディティ化していると指摘し、真の革新が必要であると強調しました。

そして、彼は未来のAGIに焦点を当てました。孫氏は、現在のインターネット企業が主に広告やeコマースに焦点を当てているのに対し、AGIは人類の知識を10倍に増幅し、運輸、製薬、金融、製造、ロジスティクスなど、あらゆる産業に影響を与えると述べました。彼は、AGIに取り組む企業や個人が、10年後や20年後には人類のリーダーとなる可能性があると予測しました。

AIの受け入れとソフトバンクの野望

アメリカでは51%の会社がChatGTPを取り入れるなか、日本ではわずが7%しか取り入れておらずそれどころか72%の企業が使用を禁止している状態のなか、全社で積極的に導入している様子を語りました。

  1. 企業のAI利用率:

    • 米国では51%の企業がChat GPTを使用しているが、日本ではたった7%であり、これは日本企業のデジタル化の遅れを示しています。孫氏は、この遅れが日本の競争力低下につながっていると指摘しています。

  2. ソフトバンクのAI戦略:

    • ソフトバンクは、モバイル、LINE、Yahoo、PayPayなどを通じて大量のデータとユーザータッチポイントを持っており、これらのデータを利用してAIをトレーニングし、さまざまなサービスを提供しています。

  3. AI活用の推進:

    • 孫氏は、顔認証技術の導入により、セキュリティが向上し、コストが大幅に削減されたと述べています。また、生成AI活用コンテストを通じて、社員のAI活用のアイデアを競わせ、特許を申請するなど、AIの活用を積極的に推進しています。

  4. 特許とイノベーション:

    • ソフトバンクは、数ヶ月で生成AIのテーマで1万件の特許を申請し、孫氏自身も多くの発明をしており、このようなイノベーション推進の取り組みにより、ソフトバンクがAIの利用をリードしていることを強調しています。

  5. ソフトバンクの文化と野望:

    • 孫氏は、ソフトバンクが最もAIを活用する企業グループになることを目指しており、これはソフトバンクの文化の一部であると述べています。

ソフトバンクと未来のAI技術の進化

孫氏は、AIの進化に対する理解と準備の重要性を強調し、これからの10年間が人類、企業、そして国々にとって重要な時期であると述べ、行動を起こすよう呼びかけています。

  1. ARMとの関係:

    • ARMはソフトバンクグループのコアカンパニーとして、AIとAGI(Artificial General Intelligence)の時代において活躍する役割を担っています。ARMのチップはデバイスとクラウドの両方で使われ、エッジコンピューティングを強化しています。

  2. モデルの進化:

    • 孫氏は、大きな言語モデル (Large Language Models, LLM) からマルチモーダルモデリング (MMM) への移行を示唆しています。MMMは、テキストだけでなく、映像や音声など複数のモードを含むことで、AGIに向けての一歩となると説明しています。

  3. AGIとASIの未来:

    • 孫氏は、10年以内にAGIが実現すると予測し、その後の10年でAIの能力が人間の能力を1万倍超えるASI(Artificial Super Intelligence)の時代が来ると語っています。

  4. 人類の未来とAI:

    • 人類は、この技術的シンギュラリティに向けて準備し、その影響を理解し対処する必要があります。孫氏は、この10年間が人類の未来を形作る重要な期間であり、AIの進歩を理解し受け入れることが重要であると強調しています。

アームのAI技術戦略と進化

ソフトバンクグループのコア事業となっている、アームのCEO、レネ・ハース氏がリモートで講演しました。

  1. AIの焦点:

    • アームはAI技術に大きな焦点を当てており、その技術はアームの製品とサービスの中心になっています。これには、自動運転車、スマートフォン、温度計など、多くの異なるデバイスとアプリケーションが含まれています。

  2. 効率とエネルギー消費:

    • AI技術は計算能力を必要とするため、エネルギー効率は非常に重要です。アームはエネルギー効率の高いチップとアーキテクチャを提供しており、これはAIのワークロードを効率的に処理するために必要です。

  3. 収益とAI:

    • アームの収益の大部分は、AI技術から得られており、近年の収益は順調に伸びています。これは、ソフトウェアの複雑さが増し、AIアプリケーションが必要になるためです。

  4. プラットフォームとフレームワークのサポート:

    • アームは、多くの異なるAIフレームワークとプラットフォームをサポートしており、プログラマと開発者が簡単にプログラムを作成できるようにしています。

  5. NVIDIAとのパートナーシップ:

    • アームは、NVIDIAのグレースホッパーデザインと連携して、エネルギー効率の高いCPU技術を提供しています。これは、データセンターとクラウドベースのアプリケーションにとって特に重要であり、電力消費と効率のバランスを取ることが重要です。

  6. 未来のトレンドと課題:

    • 今後のAI技術は、さらに多くの電力を消費する可能性があり、これは新しいアーキテクチャとエネルギー効率の高い技術の需要を高めるでしょう。また、データセンターのワークロードが増加するにつれて、エネルギーの消費も増加するため、これは重要な課題となります。

  7. 低電力技術の重要性:

    • AI技術の進展に伴い、エネルギー効率がますます重要になっています。これは、モバイルデバイスからクラウドまでの全てのデバイスとアプリケーションに影響を与えます。

  8. アームの低電力アーキテクチャ:

    • アームのアーキテクチャは、消費電力と効率に焦点を当てて設計されています。これはアームのDNAの一部であり、エンジニアは低電力技術から始めて製品を設計します。

  9. エンジニアのトレーニングと経験:

    • アームのエンジニアは、低電力技術を基盤としてトレーニングを受け、この重要な要素をプロダクト設計に組み込みます。

  10. 業界の認識とアームの専門知識:

    • 他のベンダーもアームの低電力技術の重要性を認識しているが、アームのアーキテクチャとノウハウは単に模倣することはできないというポイントがあります。

  11. 将来の協力と展望:

    • ハース氏は、このトピックが個人的で歴史を変える可能性があると述べ、孫氏との連携を通じて、低電力技術とAIの未来について更に議論していく意向を示しました。

孫正義氏とレネ・ハース氏の対談

孫正義氏とレネ・ハース氏はAGI(Artificial General Intelligence)の時代に人間の仕事がどのように影響を受けるか、そしてAGIが社会のどのような分野に大きな影響を与えるかについて議論しています。

  1. 人間の仕事の未来:

    • AGIの時代でも、人間の仕事はまだ存在する。コンピューターだけでは解決できない問題も多く、人間のマネージャーやサポートが必要とされる場面がある。

  2. 新たな仕事の創出と喪失:

    • 技術革新により新しい仕事が生まれる一方で、一部の仕事は喪失される。しかし、全ての人間の仕事が消失するわけではない。

  3. 健康と医療の分野におけるAGIの影響:

    • AGIは健康と医療の分野で大きなインパクトをもたらす可能性があり、個人化された健康管理を実現できる。例えば、定期的な診察や基本的な健康質問にAGIを利用することが可能。

  4. 人間とAGIのコラボレーション:

    • 人類の願望や問題が存在する限り、人間とAGIのコラボレーションの機会は常に存在する。AGIは人間の問題解決のパートナーとなり、社会をより発展させる助けとなる。

  5. ディベートと探求:

    • AGIと人間の仕事の未来についてのディベートは続くテーマであり、これは人間が引き続き考え、探求しなければならない重要な問題である。

  6. 共創と新サービス:

    • AGIと人間がパートナーとして共にソリューションを導き出し、新たなサービスを生み出すことで社会がより幸福になる可能性がある。

  7. 社会問題の軽減:

    • AGIの導入により、事故の減少や死亡率の低下など、社会問題が軽減される可能性がある。

  8. 環境保護と仲裁:

    • 人間が地球の環境を破壊する行動を取っている場合、AGIが介入し、行動を変えるようアドバイスする可能性がある。また、喧嘩などの仲裁にもAGIが利用される。

  9. 公平な社会の実現:

    • AGIが人々にもっと公平なフェアな環境を提供する手助けをする可能性がある。例えば、食料や住宅などの公平な供給を政府が管理するのにAGIを利用することができる。

  10. 管理と規制:

    • AGIの利用には適切な管理と規制が必要であり、各国でこれらの管理と規制を実施する必要がある。

  11. 未来への楽観:

    • 孫正義氏とレネ・ハース氏は、AGIによって人間の社会がもっとエキサイティングで幸せになる未来に楽観的である。そして、このテクノロジーを利用して人々を幸せにしたいと考えている。


孫氏がiPhoneを他社に先駆けてSoftBankに導入した時以来の熱い講演でした。

OpenAI社のCEOサム・アルトマン氏と計画を立てているChatGPT専用デバイスについて書いたNoteも合わせてご覧ください↓


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