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B2Bのユーザーコミュニティを半年で2つ立ち上げた話(後) コロナ後のコミュニティのあり方

こんにちは。この記事は、「B2Bのユーザーコミュニティを半年で2つ立ち上げた話」3回連載のうちの後編です。前編・中編はこちら。

まだ前編・中編をお読みでない方は、よろしければぜひ読んでみてください。

※この記事の内容は、筆者が在職していた時点(2019年7月〜2020年7月)での内容になるため、現在の状況とは異なる可能性があります。また、個人としての見解であり、企業としての公式見解ではないことをご理解いただければ幸いです。

はじまりの12月、そしてコロナ・ショック

2019年7月に入社して、ファーストピン探しと社内の合意形成を並行して行い、ユーザーグループの幹事メンバーがほぼ揃ったのが9月。
9月末に最初の幹事ミーティングを行い、10月から準備を進め、最初のオフラインのミートアップがなんとか12月の頭に実現しました。

行ったのは、ユーザー側の幹事メンバーと一緒に企画・準備したユーザーグループミーティングと、ベンダー主催のDeveloper Meetupの二つ。それぞれ1回目を、入社から5ヶ月後に当たる12月にやっと開催することができました。

二つの異なるコミュニティを同時並行で準備していたことに加え、個人的にも11月〜12月にかけてはイベント登壇の機会が相次ぎ、まさに目の回るような忙しさだったことをよく覚えています。

社内外の様々な方々と細心の調整を重ね、来てくださる方に楽しんで交流していただけるよう、様々な趣向を凝らして準備したユーザーグループミーティングは、お客様の会場で80名程度にて実施しました。この日をキックオフとして、翌年から開催する分科会のテーマやスケジュールなども同時に発表。事例発表、懇親会などもとても盛り上がり、参加者からたくさんのポジティブな感想をいただけて、ようやく一つのスタートラインに立った達成感がありました。

Developer Meetupは、社内で手を挙げた有志のメンバーと共に準備を進めて来ました。ユーザーグループとは異なり、いかにオープンでカジュアルな雰囲気で楽しんでいただくかという点を工夫。小さな会場で、着席でのハンズオン・セッションを行ったため、30名程度の定員に対し事前に3倍以上の申し込みがあるという高倍率のイベントになり、当日は参加者の熱気で暑いほど(物理的に、、)の盛り上がりでした。Tweetも130件以上あり、Togetterまとめが拡散されるなど、想定していたアウトプット中心のコミュニティをスタートすることができた実感がありました。

と、こんな感じで、7月の入社から半年弱で二つのコミュニティを無事にスタートし、新年明けて2020年からいよいよ本格始動!
と息巻いていたわけですが・・・

来てしまったわけですよ。例のアイツが。

年明けの1月くらいから少しずつ話題となっていた新型コロナウイルスが、2月になって一気に日本に入ってきて身近なものとなり、2月半ばに大規模イベントの自粛が始まりました。自社の大規模マーケティングイベントが中止になったことを受け、2月下旬に予定していた「1回目のユーザーグループ分科会」「2回目のDeveloper Meetup」も直前で延期に。その後のオフラインの活動にめどが立たない状況になってしまいました。

コロナ・ショックと否応なき方向転換

2月下旬のイベントが延期になった頃、コミュニティ界隈では様々なイベントが軒並み延期・中止になる一方で、一部ではオンラインで開催する動きも出てきていました。
私も自分が個人の立場で運営している「カスタマーマーケティングmeetup」の方では、2月19日に予定していたオフラインイベントを急遽オンラインのYouTube配信スタイルに切り替えるというチャレンジを行いました。
手探り状態ではあったものの、予想以上のポジティブな反響があり、オンライン開催の手応えを感じていました。

一方、ユーザーコミュニティの方はそれほど簡単にはいきません。
ユーザーグループの方は幹事メンバーがコロナ対応で業務多忙になったことや、オンラインのフォーマットに慣れるまで時間がかかったことから、1ヶ月程度は何もできない状態でした。
Developer Meetupの方は、延期後すぐはオフィスに登壇者が集まってセミリモートで配信する方法を考えていたのですが、オフィスがクローズになり、解除される見込みが立たず。

こんな状況ではあったのですが、ユーザーグループの方は、4月にオンラインで初の分科会を開催したことをスタートに、Zoomを使った少人数の座談会スタイルで月に1回程度開催するというフォーマットが徐々にできてきました。並行して、Slackでオンラインコミュニティを立ち上げ、日常的なやりとりをチャットベースでできるように。最初は投稿も限られていましたが、徐々に発言するメンバーも増えてきて、オンラインのコミュニティと分科会をリンクさせてコミュニケーションを継続し、全体を盛り上げる。という形ができできました。

そしてDeveloper Meetupの方は、5月下旬にやっとフルリモートでMeetupを開催。地方からの参加者も多く、TweetやZoom内のQ&A、チャットも盛り上がり、結果150名超の参加者に240件超のTweetという、前回を大きく上回る結果となりました。

コロナ後のコミュニティのあり方

コロナの前と後で、コミュニティはどう変わったか?というテーマは最近よく取り上げられるため、あえて言及する必要もないかもしれませんが、やはり大きな影響があったのは確かです。
コロナのおかげで日本企業のDXが図らずも進んだ側面がありますが、コミュニティにおいても同じことが起きました。
ベストプラクティスを探して試行錯誤した結果、私がうまくいったと思ったフォーマットはこんな感じです。

・大人数向けウェビナースタイル(YouTubeやZoomウェビナー) + 場所を変えてのパーティ(ZoomやRemoなど)
 100人規模のミートアップの場合。
 特に一方的に喋るパターンの場合、一人がずっと喋るプレゼンよりも、2〜3人が掛け合いで進めるテレビ番組スタイルの方が見ている人にわかりやすい。
 オンラインだと交流が薄くなるのがネックですが、最近はZoomのブレイクアウトルームや他のツールなどを使ってうまく小部屋に分けて、濃い懇親会ができているケースもあるように思います。

・少人数での座談会(Zoomなど)
 分科会などで密に情報交換をしたい場合は、参加者を10人以下に絞って、全員が不安なく会話ができる場づくりをすると、濃い意見交換ができることが分かりました。
 それでも初めての人同士だとオンラインではオフライン以上に会話がしづらかったりするので、ファシリテーターがうまく全員に声をかけるなど、ファシリテータースキルが求められます。オフラインと違って移動の手間やロジ周りの準備が不要なので、手軽に開催でき、気軽に参加できるのがメリットです。ただ一度にあまり長い時間やると疲れるので、1時間くらいの短さで、高い頻度で(月1回〜2回程度)やるのがオススメです。

ミートアップを参加人数と内容+ツールで分類すると、こんな感じのイメージ。ツールはあくまで一例で、他にもあると思います。

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そして、ミートアップだけでなく、非同期のオンラインコミュニティを用意して連動させるのがおすすめです。

ツールはSlackやFacebookグループなどのお金をかけないものから、commmuneのやcoorumなどのコミュニティ専用のツール、はたまた自社開発など色々あると思いますが、参加者の属性やコミュニティの目的に合っているものであれば何でもいいと思います。ミートアップ的なものとは別に、日常的にやりとりができるフォーラムのようなものがあると、コミュニケーションが途切れず継続できるのと、ナレッジが言語化されて蓄積されていくというメリットがあります。

運営側からの一方的な情報発信でなく、いかに参加者同士での発言を引き出せるか、が活性化のポイントになります。私が立ち上げたコミュニティでは、最初は発言する人が限られていたため、幹事メンバーが率先して話題を投入する、発言してくれた人には皆でひたすらスタンプ&返信する、を繰り返していくことで、少しずつ発言するメンバーや発言量が増えてきました。

これまでは「オフラインとオンラインをミックスする」という考え方でしたが、これからは「オンライン前提で、リアルタイムコミュニケーション(ミートアップなど)と非同期のコミュニケーション(チャットなど)を行き来させる」という考え方をするとうまくいくように思います。

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ミートアップでオンラインコミュニティを案内し、逆にオンラインコミュニティの参加者にミートアップを案内する。
あるいは、オンラインコミュニティで出てきた話題をミートアップで扱い、ミートアップで議論しきれなかったポイントをオンラインコミュニティで継続する、などいろいろな行き来の方法ができると思います。

そしていずれオフラインのイベントができるようになったら、オンラインを前提としつつ、オフラインをプレミアムシートとして開放する、そんなミートアップができるのではないかと楽しみにしています。

おわりに:コミュニティは戦略と熱量

これまで長々とこの1年間のユーザーコミュニティの立ち上げからコロナ・ショックまでを振り返って来ました。
私自身は残念ながら7月で会社を離れることになってしまいましたが、コミュニティはありがたいことに在籍中のメンバーとユーザー幹事の皆さんで継続してくれています。

この1年間を振り返ってみると、コミュニティのあるべき形を最初に描いて実行に移す経験ができたこと、そして何よりも、コミュニティを通じて多くの素晴らしい方々に出会えたことが私の財産になりました。
ユーザーグループの幹事メンバーの皆さんとは、ベンダーとユーザーの立場を超えて、同志として一つのものを作っていく仲間になれました。こんな出会いは滅多にあるものではないと思っています。

私自身のコミュニティの挑戦も、まだまだ終わりません。
今回のチャレンジで大きな手応えを感じた反面、やりきれなかったこと、もっとうまくやりたかったこともたくさんあります。

折しも、6/5にお招きいただいたCCEXのコミュマネ会で、こんな発言をさせていただいたことがありました。

特にコミュニティの戦略に関しては、今回私自身ももっと力を注ぐことができれば良かったと思うことの一つです。
こちらも偶然ですが、海外のレポートに見るコミュニティの戦略の重要性について先日記事を書かせていただく機会がありました。

記事にも引用した、State of Community Managementというコミュニティに関する調査レポートの冒頭に書かれているのが、こちら。

成功する生産的なコミュニティを構築・運用するには、根本的に異なる考え方が必要です。これは、組織を中心に据えた考え方ではありません。コミュニティを構築する人は、自分が知っていることをビジネスの言語に翻訳できる必要があります。これは、多くのコミュニティプロフェッショナルにとって大きなスキルギャップです。
State of Community Management 2019 より引用。筆者が翻訳)

日本におけるコミュニティの盛り上がりは、まだ始まったばかり。
コミュニティを職業とする茨の道も、まだ始まったばかりです。

プロダクトがあり、ファンがいれば、コミュニティを中心に熱狂を作り出し、大きなムーブメントにすることができる。
それに火をくべ、中の人を助ける存在でありたいと思っています。

これからコミュニティを立ち上げるという方、今まさに試行錯誤中という方、その他全てのコミュニティに関わる方、ぜひ一緒に挑戦を続けましょう!

最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
ご質問やご意見などがあれば、どうぞTwitterで教えてください。コミュニティについての気軽なご相談もウェルカムです。
少しでも皆さんの挑戦のお役に立てれば、そんなに嬉しいことはありません。

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