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悩めるコミュニティマネージャーのための考えるヒント

ここ最近、BtoB SaaSの企業でコミュニティマネージャーをやっている方や、これからコミュニティを立ち上げたいという方から、相談をいただく機会が何回かありました。私自身も現在コミュニティマネージャーとして、新たなコミュニティの立ち上げと活性化を実践している最中なのですが、たまたま短期間(3年)で複数回(3社で5つ)のユーザーコミュニティ立ち上げを行ってきた経験があり、3社目ともなると、「まずはここから動かせば、こうなるだろう」「この手のブロッカーに対しては、ここを抑えた方が良い」というような経験値がなんとなく溜まってきて、課題や打ち手が見えやすいと思うことも増えてきました。

この経験を、ここ最近ご相談いただいた複数のコミュニティマネージャーの皆さんにお話しするうち、「あれ、なんだか同じことを話しているな」「この悩み、前も聞いたな」と思うことがありました。コミュニティに関わる方が抱える悩みにはある程度共通するものがあり、まとめてエッセンスを言語化すると、参考になる人が結構いるんじゃないかな?と思ったのが、このnoteを書くきっかけです。

もちろんコミュニティの状況は千差万別ですし、私の経験はごく特定の状況における事例に過ぎないので、これが全ての人の悩みにそのまま適用できるかというと、決してそうではないと思います。なので、皆さんが自分の状況に置き換えて解決策を考えるための「考えるヒント」になれば良いかな、という姿勢です。
悩めるコミュニティマネージャーにとって、少しでも答えの糸口を見つけるきっかけになれば幸いです。

前提:BtoBのSaaSにおける、自社のユーザーを対象としたコミュニティを想定しています。

お悩み(1):何度かコミュニティのイベントを自社主催でやってみた。それなりに人がきてくれて、盛り上がっているようだ。でもこれでいいのか、これからどうしていけばいいのかよく分からない。

ヒント:基本すぎる答えなんですけど、コミュニティを通して誰にどうなって欲しいのか、WhoとWhatを定義し直すのが良いと思います。

ユーザーコミュニティを立ち上げることになり、自社のユーザーを集めてイベントを開催した。プロダクトやユースケースに関する情報提供を行い、懇親会をセットして交流してもらった。それを何回かやってみた。でもこれが正解なのかどうか、よく分からない。こういうケース、聞いていると割と多いようです。参加した人の満足度は高く、喜んで帰ってくれるし、毎回それなりの人数も集まっていると、「コミュニティが盛り上がっている」「うまくいっている」という印象が社内・社外ともに持たれがちですが、果たしてそれで本当にそうなのか、このまま同じように続けていくべきなのかどうか、よく分からない、とおっしゃる方がなんだか多い。

私自身も覚えがあります。以前立ち上げたコミュニティで、毎回人は来てくれるものの、参加者が自主的に何かをやってくれるような状態ではなく、通常のマーケティングのセミナーとあまり変わらないような気もするし、コミュニティで理想とされる「ユーザーが自ら動いてくれる」という状態には程遠いんじゃないか?という不安。

今改めて振り返ると、なぜ自信を持って「うまく行っている」と言えなかったのか(あるいは「うまく行っていない」と言えなかったのか)というと、コミュニティに参加した人にその場でどうして欲しいのか、その後どんな行動を起こしてほしいのかを描けていなかったから、コミュニティの評価軸が決まらず、自信が持てなかった。いうことなのではないかなと思います。つまり「コミュニティマーケティングの父」小島さんが言うところのWhoとWhatが不明確、という ことです。

基本のキ、って思いますよね?でも今思い返すと、本当にそうなんですよね。理想的なコミュニティの初期状態というのがイメージできていなかったので、どんなことを想定しておくべきだったのか、がわからなかったんだと思います。

今の私が数年前の自分にアドバイスをするとしたら、こんな感じに多分なります。

1. コミュニティのオーディエンス(Who)をペルソナレベルまで絞り込む。
コミュニティの参加者は具体的にこの人とこの人とこの人、という名前と顔が浮かびますか?コミュニティを始めるときに、その人たちや、その人たちと同じ性質・思い・属性の人たちに参加してもらいたい、というレベルまでペルソナが設定できているべきです。彼らこそがコミュニティの最初のコアな参加者であり、ファーストピン候補になります。ここの設定がぼんやりしていると、「とりあえず人が来てくれればいい」と参加者の数だけを見て、その後どうしたらいいか分からない、という状況になりがち。

私自身が今コミュニティマネージャーとして実践しているケースで言うと、Asanaのコミュニティの対象者は「(1) Asanaのファンで、自身の所属に関係なく、Asanaを個人として広めたいと思っている」「(2) 企業に勤めていて、社内でAsanaを使っており、自チームでもっと活用を深めたり、他のチームや部門にも広げたいと思っている」の二つのペルソナを設定しました。

(1)はオープンにワイワイしながらどんどん外に広がっていくイメージ、(2)は導入や運用の課題を持つ企業内での浸透を助けるイメージがあり、それぞれの起点となるコミュニティメンバーが数名思い浮かぶ状態でした。

2. コミュニティのコンセプト(What)を行動レベルまで落とし込む。
そのコミュニティは誰にとって何を目的としたものなのか、というコミュニティのコンセプトを明文化することはすごく大事です。参加する人に、どういう場なのかを理解してもらい、望まれる振る舞いを理解してもらえるからです。私は、かつてコミュニティの立ち上げを行ってきたLINE WORKSでも前職のオートメーション・エニウェアでも、そして現在のAsanaでも、必ずコンセプトを明文化して、イベントのたびに参加者に説明しています。

Asanaの場合は、コミュニティのコンセプトは「ワークマネジメントツール「Asana」のユーザーやエキスパート同士がつながり、共に学び、アイデアを共有し合うためのグローバルコミュニティ」。これはグローバルで共通です。そして、コミュニティを通じてかなえてほしいアクションとして、以下の3点を参加者にお伝えしています。

1. Asanaを活用したワークマネジメントや、Asana導入・運用のノウハウ&アイデアを共有
2. 同じ思いを持った他のメンバーとの交流
3. 自身のチームや組織でより良い仕事の仕方を実践

同時に、参加者に対してとは別に、社内的にコミュニティの意義を明文化して説明するのも大事です。Asanaにとってコミュニティは、プロダクトの成長の源泉である、口コミを生むためのものです。この意義が明文化され、幹部を含めて承認され、全社に対して共有されているため、「なぜコミュニティをやるのか」という問いに対して、口ごもることなく毎回同じ回答をすることができますし、社内に対して自信を持って説得することができます。

お悩み(2) : コミュニティマーケティングとカスタマーサクセス、どちらを目指すのか?

ヒント:どちらを目指すかによって、あるべき姿は大きく異なる。

悩んでいる方のお話を聞いていると、「コミュニティをやるからには、Twitterで積極的にアプトプットしてもらわないといけないのではないか?」「コミュニティは必ず自走を目指さないといけない」など、成功している有名なコミュニティの姿を自社にとっても「あるべき姿」であると考えてしまっているケースがあります。

が、こういう形が本当に目指すべきなのかどうかは、WhoとWhatによると私は思っています。典型的なところで言うと、「コミュニティマーケティング」「カスタマーサクセス」どちらを目指すのか、この二つの大きな目的の違いによって、あるべき形はだいぶ異なると思っています。

コミュニティマーケティングを目的としたコミュニティの場合、典型的なものとしてイメージされるのはやはりAWSのユーザーグループ、JAWS-UGのような姿だと思います。分科会が多数あり、それぞれの分科会をユーザーが全て主導し、大規模なユーザーカンファレンスがコミュニティ主催で行われ、イベントのたびに大量のTweetやブログなどのアウトプットがある。コミュニティの活動が外部からよく見える形で行われ、日本のAWSの成長をコミュニティが支えてきたと言うことがよく分かります。AWSが"Pay as you go"つまりクラウドベースでサブスクリプションのモデルを採用し、日本で開始した当初は個人の開発者や小規模なSIerを中心にビジネスが成長してきたことは周知の事実ですが、コミュニティのオーディエンスもまた顧客のターゲット層と重なる形で、開発者を中心に様々な分科会が組織され、コミュニティからサービスの利用者が広がっていくという「マーケティング」としての機能を果たしてきたと言えそうです。

​コミュニティが我々の代わりに勝手にお客さんを生成してくれます。そんなことあるのか、と思うかもしれません。例えば、趣味の世界。デジカメ、自転車が好きな人の集まり。こういう人達は言われもしないのに、同僚とか色んな人に「自転車良いよ」とか「このデジカメいいよー」とかどんどん言いますよね?

これが自社の製品やサービスについて語ってくれる人がいてくれたらどんなにいいことか。ちなみに、これを制度化されたのが、たぶんアジャイルメディアネットワークさん。こういうのをやっていくのに非常にコミュニティが良い。どんどん人に話しているうちに、どんどん自分もそのサービスを好きになってく。コミュニティの中でどんどんファンになっていく。コアなユーザーにどんどんなっていくんです。

(引用元:商品はファンには売るな!?AWSマーケティング担当者が語った、最強のコミュニティ運営術 https://logmi.jp/business/articles/21744)

(余談ですが、小島さんがJAWSについてお話しされている記事はたくさんあるんですけど、私は2014年のEvent Marketing Summit vol.1の講演録であるこのLogmiの記事が一番生々しくて好きです)

カスタマーサクセスを目的としたコミュニティの一つの理想系は、Salesforceのユーザーコミュニティではないかと私は思います。JAWSと同様に分科会が多数ユーザーによって組織され、自走する形で多数のイベントが開催されています。旧来のユーザー会とは一線を画す形で、BtoB、特にエンタープライズにまで広がった商材にしては異常なほど、ユーザーを中心に熱狂的な盛り上がりを見せているのが特徴です。Saleforceのコミュニティ"Trailblazer"はカスタマーサクセスの組織に位置付けられる形で成立し、コミュニティでアクティブなユーザーはそうでないユーザーに比べて高い活用度や受注金額を示すなど、カスタマーサクセスの文脈で明確な効果が出ています。

坂内:コミュニティ上でアクティブな顧客とそうでない顧客とを比較した場合、次のような違いが見られています。

・受注商談金額が2.5倍
・パイプラインが2倍
・33%以上の製品活用度
・顧客離れを25%削減

(引用元:【超・実践編】Salesforce 坂内本部長に聞くユーザーコミュニティの立ち上げから継承まで https://markezine.jp/article/detail/36577)

あなたが現在関わっているプロダクトのコミュニティは、どちらを目指すものでしょうか?例えば特定の業界をターゲットにしたプロダクトで、守秘義務やセキュリティが厳しい業界慣例があるのであれば、コミュニティマーケティングを目指すにしても、Twitterでわいわい盛り上がるのではなく、別の形の理想像があるかもしれません。その場合は、例えば業界内で他の知り合いの人に広めてもらうためにどうすれば?という問いを立てて、そこに至るためのHowを考える。答えが見つからなければ、Whoに立ち返って、コアなペルソナをもった人がどんな手段で普段他の人と情報交換やコミュニケーションをしているかをリサーチしたらいいと思います。

カスタマーサクセスを目的とする場合、自社がずっと運営リソースを確保できるというコミットメントがあるのであれば、自社主催でイベントをやり続けることも私はNOではないと思います(その形でスケールするのかどうか、というのはまた別問題ですが)。

カスタマーサクセス文脈でのコミュニティの場合、ハイタッチやテックタッチと並ぶ形で「コミュニティタッチ」という表現でコミュニティを位置付け、専任のカスタマーサクセスが一社ごとに個別に伴走する手法との対比で、ユーザー同士がサクセスをお互いに学び合うことを目的として、コミュニティを企業が推進しているというケースもあります。

「ユーザー同士がサクセスを学び合い、結果としてカスタマーサクセスの指標(チャーン低下やARR向上など)に貢献することを目的とするのであれば、いきなり自走を目指すのではなく、企業が主体となって緩やかに運営していくという選択肢もアリだと私は思います。ただしこの場合、コミュニティを継続させるために社員が運営するリソース確保が必須になるため、長期的な視点に立って必要なリソースを確保するというコミットメントをきちんと社内で取っておく必要があります。

お悩み(3) : コミュニティのイベント、どうやるのがいいですか?

ヒント:イベントの作りはオーディエンスとアクション次第

イベントの作りやコンテンツは「常にこれが正解」というのがなく、オーディエンスとアクション次第だと思います。今はオンラインイベントがほとんどだと思いますが、大人数向けのウェビナー配信スタイルだと交流よりも情報提供が主になりますし、交流をメインにしたい場合は、少人数・双方向でやり取りできる安全な場を用意した方が、一般的には参加者のエンゲージメントが高くなります。

公開イベントにして誰でも参加できるようし、できるだけ多くの人に広めてもらいたいのなら、Twitterのハッシュタグを用意してツイートを奨励するという形がうまくフィットしますし、Enterprise企業が抱える導入の課題を同じ立場の人たち同士で共有するなら、イベント自体を非公開にして、イベントの内容自体も非公開を前提として開催する方が、目的にマッチします。要はイベントの作りは一つでなく、誰に対して何を求めるかによって柔軟に変えた方が良いということです。

参加者に対して、単に参加するだけではなく、イベントの内容をTweetしてほしいとか、次のイベントの登壇に名乗りをあげて欲しい、あるいは参加後一定期間におけるUsageのメトリクスを上げたい(そこまで細かくtrackできるなら)、などの具体的な次のアクションを規定しておくと、それに対して達成できたかどうかが評価の指標(KPI)になります。一つ一つのイベントを開催するときに、仮説でいいのでこれを設定しておくと、「今回のイベントがうまくいったかどうか」を社内に対して客観的に報告できるので、コミュニティに実際に参加していない社内の人や、上司に対して説得力が出ます。期待値コントロールの一種です。

 例えばAsanaのコミュニティでは、ユーザーミートアップという一般公開のイベントを開催するときは、参加者の数の他に、その後の1ヶ月間でどれだけコミュニティメンバーへの申し込みがあったかという数字をトラッキングしています。これは、ミートアップの目的が参加者を集めるだけでなく、コミュニティの正式なメンバーを増やすきっかけになることを意図しているためです。

お悩み(4):社内へのレポートをどうしたらいいかよく分からない。

ヒント:「コミュニティを正しく理解している人はとても少ない」という前提で、丁寧なレポーティングを心がけるのが吉です。

私がこれまでいくつかの会社でコミュニティをやる上で一番悩んできたポイントは、実はここです。
数字が明確に上がる営業や、施策の形が分かりやすいデマンドジェン系のマーケティングと異なり、ユーザーコミュニティというのは新しいタイプの企業活動なので、その意義や実態を理解している人は社内にまずいないと思ってかかった方がいいです。もしいたらラッキーなので、その人を味方につけて仲間を増やしましょう。

コミュニティに関する誤解として多いのは、大体次の3つでしょうか。

1. 期待値が高すぎる
コミュニティを始めると、どんどんユーザーがアウトプットしてくれて、イベントに登壇するスピーカーもすぐに確保できるし、自走してユーザーが自主的に勉強会をたくさんやってくれる。結果として企業のブランドに貢献するから、どんどんやれ!というケース。コミュニティ・マーケティングの理解としては間違っていないのですが、それに至るためにめちゃめちゃ時間がかかる(数年という単位)、並大抵なことでは実現できない(自走するコミュニティなんて数えるほどしかない)、ということを理解していない。

実際にコミュニティに参加したことのない幹部層に多いので、どれだけ大変かというのを地道に説明していくしかないと思います。大事なのは、始める前に「すぐに結果は出ないものだから、長期的な視点に立ってサポートしてほしい」ということをきちんと伝えて同意してもらうことです。

2. 間違った理解がされている
一般的なマーケティングイベントだと思っている(=参加者をリードとして扱い、インサイドセールスからコールしようとする)」「お客様への感謝の場だと思っている(=営業がつきっきりでアテンドし、他のユーザーと交流させない)」という誤解、多いです。悪気がなく誤解しているケースがほとんどなので、ここを軋轢と捉えてfight backしてしまうと、溝が生じがち。

戦うのではなく、「皆さん知らないかもしれませんが、違うんです、こういうものなんです」と優しくガイドしてあげましょう。コミュニティに有害な行動(直接売り込みなど)をしそうな人がいたら、事前にきちんと禁止事項として伝えたり、申し訳ないですけどイベントには参加してもらわないようにするのが良いです。こういう方々は、自分にとってコミュニティはどんな得になるのかを知りたいので、彼らの目線でベネフィットを伝えてあげると、うまくコンテキストが合って、望む振る舞いをしてくれたり、味方になってくれます。

3. 誰も関心を持ってくれない
1. コミュニティやってるの?いいね。という反応はあるものの、自分は当事者ではなく、コミュニティは「あったらいいね」なCSR活動的なものだと思われている。ユーザーの熱量を知らなかったり、コミュニティがビジネスにどう役に立つのかを理解していない。

マーケティングファネルを示して社内で説明したり、実際のユーザーの熱量を示すものをまめに社内で共有したりすると、あるとき目の色が変わって急に前のめりになったりします。

イベントがあるたびに社内にレポートしたり、成果を定量的な数字で伝えたり、コミュニティから出てきた有益な情報(ユースケースや事例、新規商談に繋がったケースなど)を積極的に共有すると、だんだん理解が進んでくると思います。

お悩み(5):KPIどうしたらいいですか?

ヒント:KPI(業務上の実績の測り方)とROI(やっていることのビジネスへの貢献度の測り方)をごっちゃにしない

KPIに悩んでいる方の話を聞くと、実際にはKPI(Key Performance Indicators:目標数値に対してどれくらい達成したか)ではなく、ROI(Return on investment:コミュニティからどれだけの利益が得られたのか)を出そうとしてしまっているなというケースがとても多いなと感じます。

KPIは「自分がやっていることの業務上の実績を測る数値」なので、実際にやっている施策(イベントとかオンラインのコミュニティとか)と連動するものを、確実に測れる数値として設定することをお勧めします。この数値が自分の評価に直結するからです。
そして大切なのは、この数値を上司と事前に合意しておくということです。コミュニティのことをきちんと理解しているマネージャークラスはそれほど多くないので、自分がやったことを客観的に評価してもらうために、「ここを目指します」という目標を数字で合意しておくのは、ビジネスパーソンとしての必須項目だと思います。

ちなみにやってはいけないのは、ここにNPSを設定することです。言うまでもなく、NPSは全ての顧客接点の活動の結果なので、特定の部署だけが背負うものではありません。

ROIは、本来コミュニティ施策において測るべき数字ではありません。AsanaのCMOも言っています。
なのでこういう経営幹部の元でコミュニティを正しく理解してもらった上でROIを測らないというのが一番の解決策ではありますが、なかなかそうもいかないですよね。また、ROIそのものでなかったとしても、コミュニティ内部ではなくビジネスの文脈で意味のある指標を数値として提示できると、ビジネス上の重要なステークホルダーに対して、コミュニティの存在意義や熱量を彼らの目線で理解してもらうことにもつながります。
なので、それほど大変ではなく測れる数値があるのであれば、あくまで参考値として定期的に出すというのはお勧めです。

例えば「コミュニティ参加者と、そうでないユーザーとで、どれくらいARRやChurnに差があったのか」とかは測れそうですよね。ただこれはKPIとして追うものではなく(追うとコミュニティから直接収益をあげるようなおかしな方向になってしまいますよね)、あくまで、自分たちがやっていることは、会社に利益をもたらす、きちんと意味があることであるというのを、社内のステークホルダーに示すためのものだということです。

この二つの指標をきちんと理解して使い分けると、KPIを立てるのはさほど大変ではないし、ROIは無理して出す必要はないと言うことがお分かりいただけるのではないかと思います。

コミュニティへの根本的な理解がなく、ROIを無理矢理出させたがる経営幹部がいたら、ぜひAsanaのCMO Dave Kingのポッドキャストを聞かせてください(英語ですが)。
コミュニティは"Unnegotiatable budget"(交渉の余地のない予算)であり、コミュニティやPRなど長期のブランド投資のROIは示せないので、FounderやBoardとは"Trust Me"で先に合意したということをはっきりと言っています。グローバルでトップクラスのマーケットシェアを誇る、アメリカのユニコーン企業のAsanaのCMO、つまりマーケティングの責任者が、です。


さてコミュニティマネージャーからのお悩みに対するヒントを5つ答えてきたところでそろそろ文字数が1万字近くなってきましたが、全然書ききれませんでした・・・。

まだまだ他にもよく聞くお悩みはあるので、次回また別の記事でご紹介できればと思います。

ちなみに7/20の #CMC_Meetup のイベント「CMC_Meetup Vol.19 "会社に評価されるコミュニティの創り方"」に登壇させていただきます。Coral Capitalの津田さんと一緒に、コミュニティのKPIや、会社からの評価軸についてお話しさせていただく予定です。LTも7本(!)と、様々なコミュニティのお話が聞けそうで楽しみです!

それではまた!

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