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京都 玄関の景色

京都の玄関先で見かける物といえば、
ー 祇園祭のちまき
ー 鍾馗さん
ー 軒行灯

京都に引っ越したばかりの頃に「あれは何なんだ?」と思って調べてみました。京都に来る方も来た方も、きっと気になると思うのでnoteします。

祇園祭のちまき

食べるちまきではなく、願いを込めて飾るちまきを街中のあちこちで見ることができます。

祇園にある「おおきに財団」の玄関のちまき

毎年7月の祇園祭で各山鉾町と八坂神社でちまきが販売されます。
ちまきは笹の葉や藁で作られています。洛北の農家の方が原型を手作りされて、各山鉾町がお札や装飾を取り付けて、八坂神社でお祓いをしてもらい、宵山期間中に販売されています。

疫病退散を願う祇園祭のちまきには、厄除けの御利益があると言われています。
基本的なご利益は厄除けですが、山鉾ごとのご利益もあります。
例えば、
夫婦円満の芦刈山
安産の占出山
学業成就の白楽天山
雷除けの霰天神山
などなど。
雷除けって、なかなかユニークなご利益ですよね。

祇園祭期間中に京都駅で展示してあった各山鉾のちまきなどの授与品

ちまきは疫神が家やお店の中に入ってこないように、必ず玄関の外に掛ける必要があって、玄関の内側では御利益はないそうです。
外に掛けるので、街中を歩いているとたくさんのちまきを見かけます。

複数のちまきを玄関にかけていることもみかけます。

たくさんのちまきがかけられている祇園のお茶屋さん 一力亭
多くの山鉾町が自分のところのちまきを一力さんに贈っていらっしゃるのだろうと想像します。

ちまきに書いてあるのは「蘇民将来子孫也」そみんしょうらいしそんなり

「備後国風土記」逸文に残されている説話で、南海を旅していた素戔嗚尊が、宿を求めて蘇民将来と巨旦将来を尋ねます。兄の蘇民将来は貧しく、弟の巨旦将来は栄えていました。ところが巨旦将来は宿を貸さずに断りますが、蘇民将来は貧しいながらも粟穀の座と粟飯でもてなし宿を貸しました。
蘇民将来の真心に歓ばれた素戔嗚尊は、「後の世に疫病流行すれば、蘇民将来の子孫といい、茅の輪を腰につけておけば免れさせる」と約束されました。
この説話に因み、祇園祭では「蘇民将来子孫也」の護符を身に着けて神事に奉仕します。

https://www.yasaka-jinja.or.jp/event/gion/
八坂神社

祇園祭期間中は「蘇民将来(之)子孫也」をよく目にします。


毎年祇園祭の時に新しいちまきをもらい、前年のちまきは山鉾町の会所にお返しする風習です。
祇園祭の期間中の一定日時しか買えないので、京都の人は大変です。長刀鉾や鷹山など人気の山鉾は、ちまきを買い求める行列が大変なことになります。
最近はWebでの販売や予約ができるようになっているようですが、京都の皆さんは並んで買うことに意義を感じているような気がします。

鍾馗さん

ちまきほど頻繁ではないですが、京都中心部の碁盤の目エリアでたびたび鍾馗しょうきさんを見かけます。

美味しいお茶やお茶スイーツがいただける小山園にも鍾馗さんがいらっしゃいました
西尾八ッ橋 本店には鍾馗さんがお二人
祇園祭の黒主山の会所が入っている建物にも鍾馗さんがいらっしゃいました。写真左端です。

京の街並みには欠かせない屋根の上の鍾馗(しょうき)さん、魔除け・厄除け・学業成就にと飾られているのですが、それには京都に伝わるこんな謂れがあるからです。

昔、京都の三条に薬屋が新しく店を構えて大きくて立派な鬼瓦を葺きました。 するとお向かいの奥さんが原因不明の病に倒れてしまいます。病を治そうと原因を探ると、薬屋の立派な鬼瓦により跳ね返った悪いものが向いの家に入ってしまうからだということがわかりました。
そこで鬼より強い鍾馗(しょうき)さんを伏見の瓦屋に作らせ、魔除け・厄除けに据えたところ病が完治したというのです。

それ以降、京都では鬼瓦の対面に鍾馗さんを据えるようになったようです。

https://kyogawara.com/about/shoki.php
浅田製瓦
DESIGN WEEK KYOTOで鍾馗さんを作っていらっしゃる浅田製瓦工場見学させてもらいました

DESIGN WEEK KYOTOは毎年2月に開催されていて、京都の伝統工芸を守っている現場を見学できるイベントです。ご興味ある方は是非、チェックしてみてください。大人の社会科見学という感じで、めちゃ楽しかったですよ。


軒行灯

ちまきと鍾馗さんは一般家庭にもお商売をされているお店にも、どちらにもかけられていますが、軒行灯はお商売をされているお店だけで見られます。

明治時代に電気看板が用いられるようになった頃に京都で軒行灯が流行したそうです。軒行灯を作るにはお金がかかるので、大きな軒行灯をかけていることは商売繁盛している証でもあったようです。

木屋町通にある鳥初の軒行灯は木が使われていて立派です
正面通にある甘春堂
俵屋吉富の小川店では店内で美味しいスイーツをいただけます
楽焼窯元の和楽
祇園祭の太子山の会所となっている秦家住宅
輪違屋の軒行灯がこれまで見た中で一番大きいと思います

四角の軒行灯があれば、六角形の軒行灯もあります。木製だったり銅が使われていたり、と個性の違いを見比べるのもおもしろいです。
商店街ではおそろいの軒行灯が掛けてあることもあります。京都で街歩きする時に軒行灯も探してみてください。

他にも

ちまき、鍾馗さん、軒行灯が京都三大玄関景色(個人的に勝手にそう言っています)ですが、他にも送り火のから消し、角大師、福笹、人気大よせなども見かけます。

送り火のから消し
五山の送り火の炭を間口に掛けることで、厄除けになるといわれています。

一番左の紅白の水引がかけられているのが送り火のから消しです。
たぶん買うことはできないので、送り火保存会の知り合いからもらうしか入手方法はないのではないかと思います。

角大師
比叡山や蘆山寺など天台宗のお寺で角大師つのだいしの護符をいただけます。個人宅やお店の出入口で角大師の厄除けの護符をかけていらっしゃるのを見かけます。

キュートなお顔をされていると思うのは私だけでしょうか

福笹と人気大よせ
京都ゑびす神社の福笹と人気大よせにんきおおよせ

あんみつが美味しい月ヶ瀬
ちまき、福笹、人気大よせがかけられていました

東京に住んでいた頃には知らなかったのですが、関西ではえびすさんに商売繁盛を祈願する文化があります。


京都の文化は知れば知るほどおもしろく、もっと知りたくなります。

興味が尽きない京都を月別にnoteしていますので、よかったらご覧ください。



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