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遙かなる時空の中で7 黒田長政攻略感想

※個人の感想です
※ネタバレあり

 攻略五人目は黒田長政。
 天パの長髪、顔も体格も良く、言いたいことははっきり言う、目的と手段がはっきりしているリアリストである。しかも堅物ではなく、遊ぶときには遊びそうというか、まあ女にモテそうな男前だ。あとは、頭につけたツノがすごく気になる。

 これまで私は、武蔵→五月→宗矩→大和と攻略してきたわけだが、今回のルートで初めて「これから東軍と西軍は天下をかけて戦争をするんだな」とちゃんと意識した。逆に言えば今までは意識してなかったのかよということになるのだが、その通りあんまり気にしていなかった。
 というのも、七緒は令和の世で育ったためそもそも家意識が希薄なのである。織田の姫だという自覚はあるが、身分や立場にまでは意識が向かない。また、彼女は歴史に疎いので、『関ヶ原の戦い』という言葉は知っていても、八葉の名前を聞いただけでは誰がどちらの軍なのかまでわからないし、そこで負けた側の武将たちがその後どうなったのかという知識もない。
 だから、「戦いが始まったら八葉も敵同士になるんだ」とは言っていても、これまでクリアしたルートでは、正直七緒がそれを実感していたのかはあやしかったし、事態をそれほど切迫して捉えてはいない気がしていた。
 それもそのはずで、これまでクリアした四人のうち、大和と五月はあちら世界の勢力争いとは無関係だ(三鶴のことがあるにしても)。残りの二人、宗矩と武蔵は東軍であり七緒とは敵対する側なのだが、武蔵は長政の近習に過ぎず、宗矩の禄は200石にすぎない。宗矩の地位と石高が上がるのは関ヶ原のあとである。
 しかし今回攻略した黒田長政は違う。
 なにしろ従五位の下、甲斐守であり、石高も宗矩とは比較にならない。関ヶ原の戦いでは東軍一番の功労者となる男だ。東軍の中でも指折りの武将である長政と、西軍に属する織田の姫。これで長政ルートが『関ヶ原の戦い』と無関係のシナリオのはずがない。
 また、長政の父は黒田官兵衛なので、七緒の父である織田信長とは因縁もある。長政ルートは東軍と西軍、黒田と織田という二人の立場の違いが生み出す物語でもあるのだ。

 長政は初めから、七緒の持つ不思議な力(封印や招霊や四神、龍神との対話など)よりもむしろ、怨霊との戦い方や采配の振るい方、戦いへの心構えに注目しているようにみえる。
 歴代八葉には「お前は本当に神子なのか」とヒロインの神力そのものを疑ってかかる勢が何人かいるのだが(特に遙か2)、長政はそうではない。七緒が龍神の神子としての異能を持っていると認めてはいるのだ。だが、長政は令和育ちの彼女の精神的な甘さを頼りなく思っている。長政にとって『神子』とは、怨霊を封印し龍脈を整えることが出来るだけではダメなのだ。
 これは、戦国の世で東軍主力部隊を率いる長政ならではの視点と言える。長政は黒田のトップであるが、神子はその長政を従える立場にいるのだ。だから、自分の主として見た時に七緒に向ける長政の目は自然と厳しくなる。
 だから当初、七緒に対する長政の態度は冷たい。というか、常に値踏みしているような目を向けるし、試すようなことを言う。七緒は「幼い頃から人質になっていた」という長政の状況に憤り、「有岡城のことがあって殺されかけた」という長政に同情する。怨霊が出ても、八葉だけを危険な場所に先行させる事をためらう。七緒が特別に優しい女だからというより、我々の価値観ではそういう反応が当たり前のことなのだが、長政にとってはそうではない。七緒の全てが、自分の主としては「甘い」「頼りない」とうつる。
 神子として、将として、織田の娘として、その場にふさわしい動きができるかどうかが、長政にとっては神子の持つ異能と同じくらい重要なのだ。
 長政は他のメンツと比べてねぎらってもくれないし、チヤホヤもしてくれないし、「七つの童女」などと言って子ども扱いはするし、「神子をすげ替えることも考えねば」などと物騒なことを言うしで、プレイヤーとしては「長政コノヤロウ!」と思うことしばしばだ。
 だが、七緒としても自分の甘さや織田の娘としての意識の低さは承知しており、「長政コノヤロウ〜〜〜!! でもそりゃそうだ〜〜!!」と、自分の置かれた立場を意識し、上に立つものとしての成長を見せる。
 これは他のルートでは見られなかった動きだと思う。他のルートでの七緒は、織田の姫というより龍神の神子として、いわば中立の人間として動き回っていたからだ。東軍と西軍共に、邪魔な怨霊を退治してくれる神子には不可侵という暗黙の了解があったように思う。七緒自身、神子としての自覚はあっても、自分が八葉のあるじで一つの部隊の長だという意識は低かった。だが、このルートでは自分の強さを磨き、将として立とうとする七緒が見られる。
 そんな七緒の覚悟や戦いぶりを見るうちに長政の心にもようやく変化が。「戦いぶりに思わず見とれた」みたいな独り言を聞いた時には思わず「雪解け〜〜〜〜!!」とIKKOさんみたいに叫んでしまった。

 ここから長政は七緒と一緒に遠乗りに行ったり、七緒をからかってみたりと徐々に「俺はこいつのこと気に入ってるぜ」という態度を見せ始める。元々、七緒のことは「上に立つ器量はともかく姫としては可憐」という評価をしてきた長政なので、実力を認めた後は一気に好意が増した印象である。そして長政は自分の気持ちに鈍感なタイプではないので、わかりやすく言葉や態度で好意を表してくれるのがいい。
 特に、遠乗り中に雨に降られて長政のマントを雨避けにするイベントはベタながらもやはり萌えた。ネオロマ界1のプレイボーイ、アンジェリークのオスカー様も漫画版でやっていた由緒正しき馬+雨+マント被せのイベントである。七緒もそれにときめかないわけがないだろう。

 こうして長政と七緒が、お互いのことを「良いな」と思っている状態で共通ルートは終わる。「好きだ」と告白し合ったわけでは無いが、天の川を見て織姫と彦星の話をすることで二人が思い合っていることはきちんと伝わってくる。
 しかし、他キャラと明確に違うのはやはり、長政がはっきりと「自分は黒田の当主で八葉、お前は織田の姫で神子、これ以上踏み込むのはマズい」と自ら七緒を牽制してくるところだろう。

 七緒が龍脈を正して、皆が散り散りになった後、また怨霊騒ぎが起きるのはこれまでのルートと同じだが、私にとってはカピタンがラスボスになるのは今回が初めてだ。
 おお、これまでは毎回場を引っ掻き回しては去り、大和ルートではターラにあれしてこれしていた謎の男の正体がようやく明らかに……!と私としては興奮しきりである。
 『カピタン』というのは『キャプテン』のことなので、『南蛮商人の長』くらいの意味合いだ。個人名ではないんじゃないかと思うのだが、みんな普通に「カピタン」と呼んでいる。褐色の肌に黒髪、遙か4のアシュヴィンみたいなカラーリングの色男である。神子を「プリンセーザ」とポルトガル語で呼びかけているので、カピタンの母国はポルトガルなのだろう(といってもこの時代のポルトガルはスペインに併合されている)。
 カピタンの現れる所には南蛮の怨霊が現れる。しかし、カピタンは現れた怨霊を退治して回っており、そのことで民に感謝されている。
 それはいいのだが、大阪城に出た怨霊を退治したカピタンは、淀殿から商売上の特権を与えられたり、城への出入りを許可されたりとやりたい放題であり、七緒たちは警戒する。(淀殿は神子の親戚なんだから、もっとカピタンを疑ってもいい気がする)。  
 怨霊を封じることが出来るのは龍神の神子だけのはずなので、七緒たちはカピタンの自作自演を疑うが、証拠がない上カピタンに直接問いただしてものらりくらりとかわされてしまう。
 このあたりから、カピタンの目的が徐々に明らかになり始めるのだ。 
 自ら怨霊を呼んでそれを退治したように見せかけ、人々の信頼を得る。有力者や権力者からの信用を得るやいなや特権を獲得し、それを足がかりにしてその場所での影響力をも獲得する。どうやらそれがカピタンのやり口なのだが、九州でも同じようなことをやろうとしている。
 それを知った長政は自国の豊前に取って返す。事が怨霊絡みである以上、もちろん七緒と他の八葉たちも一緒だ。
 しかし九州に上陸するや、そこでカピタンとその信奉者たちが拠点を作っていることが判明。勝手に船の入港を管理するわ、自作自演の奇跡を見せて民衆や黒田家中の若武者たちをたぶらかすわで、長政をぶちギレさせる。長政は指揮官としてはクールだが中身はかなりの激情家だ。
 カピタンは悪魔の力で怨霊を呼び寄せる事ができるらしいのだが、故意に龍脈を傷つけていることから、やはり南蛮だろうと本邦だろうと、怨霊を呼ぶためには龍脈が乱れていないといけないのかもしれないし、怨霊を呼んだから龍脈が傷ついたのかもしれない。いずれにしても、大元のカピタンをなんとかしないとせっかく修復した龍脈がまたボロボロになってしまう。

 カピタンの九州での動きと、結城や平島からの情報によると、どうやらカピタンは九州の瓜生島を足がかりに九州七国を手に入れ、さらに日本全土を支配しようとしているらしい。そ、そんな無茶な!とは思うのだが、七緒たちはそれを止めるために島に上陸することに。
 そこでカピタンが呼び出した最大級の怨霊レヴィアタン(リヴァイアサン)を七緒たちは倒し、カピタンは去る。

 その後は関ヶ原の戦いへと舞台が移る。
 怨霊やカピタンという共通の敵に対しては仲間同士の神子と八葉も、そこから離れると敵同士になってしまう。
 長政は東軍、七緒は西軍となり、長政が再三言ってきた事(自分たちには立場がありそこからは逃れられない)が現実になる。七緒のいる岐阜城は長政の軍に攻められて投降することに。
 長政は『人質』として七緒を黒田に貰い受けるのだが、あれだけ「俺達は敵同士になる」「生きて会おう」と切ない別れになったわりに、あっさりいい感じに話がまとまったので正直あんまり緊迫感はなかったと思う。だが、長政が七緒を担ぐスチルにはときめいたし、まさかネオロマで「七緒は生きてていいけど織田秀信は切腹ね」というわけにはいかないだろう。戦国を舞台にした「敵同士の恋愛」の限界だったのかもしれないが、そのへんをあんまりリアルを追求すると、しんみりし過ぎて乙女ゲーとしてのときめきを失ってしまう。

 さて、混乱を極める関ヶ原でカピタンが何かしでかすのではと案じた七緒は戦場に向かう。すると決着がついたはずの戦場で、この前倒したはずのレヴィアタン(強いやつ)とカピタンが同化してラストの戦闘になる。
 ここで初めて、カピタンの口からこれまで大暴れしたことへの動機らしきものが語られる。これまでのラスボス、平島の動機は足利復興、ターラの動機は人間への復讐だったが、カピタンがなんで日本を支配したいのか自分の国を作りたいのかはよくわからなかった。だが、「神の秩序を壊し」と言うからにはキリスト教の『神』と、その神によって作られた倫理観や価値観を憎む理由があったのだろう。
 「この世界の神を壊して自分が神になる、そのための国を作る」と夜神月みたいなことを言うカピタン。だったら日本じゃなくて、まずはお前の憎む『神』がいるヨーロッパでやってくれよ。と思わなくもない。 

 日本を足がかりに、いずれはキリスト教国家に喧嘩を売るつもりだったのかもしれないが、いずれにしても迷惑な話だ。
 最後は粘るカピタンを長政が銀の弾丸で弱らせ、七緒が封印する。その後、長政から七緒に「お前はこれから生涯をかけて戦を起こさないように力を尽くすという。だったら俺はお前のそばでそれを生涯かけて見ていてやる」とプロポーズ。
 といっても今の黒田(関ヶ原勝利側)は、織田(関ヶ原敗北側)と縁組しても家としての益がないのだが、長政の策によって婚姻への道が開けることに。
 自分たちには『立場』があると再三七緒に釘を差してきた長政だが、彼の言う『立場』とは三つもある。その三つが解消されないかぎり、二人が結ばれるのは難しいのだが、逆に言えばそれがなくなれば結ばれてもいいわけだ。
 一つ目は、神子と八葉という立場。これは怨霊を封印し龍脈を戻したので自然に解消される。
 二つ目は、戦場での東軍西軍としての立場。これも合戦が終わったので解消だ。
 三つ目は、織田と黒田という立場。こればかりは生まれの問題なのでどうやっても解消できない。しかしここで長政は、徳川家康に戦働きの褒賞として「七緒を徳川の養女にしてほしい。しかるのちに娶りたい」と願い出る。七緒を織田ではなく徳川の娘にすることで、障害となりうる三つ目の『立場』を覆してみせたのだ。
 織田信長の娘かつ龍神の神子である七緒を徳川の養女にすることは、家康にとって悪い話ではないし、『徳川の姫』を正室にするのは黒田家にとっても歓迎すべきことである。史実でも長政の継室は徳川の養女なので、それをうまくストーリーに組み込んだなと思う。
 何より、ずっと自分の恋心を冷静にコントロールしていたように見えた長政が、実は随分前からこの策を考えていたのかと思うと胸が熱い。

 こうして先行きに何の障害もなくなった二人が、離れる前に分け合った縁結びのお守りを合わせるシーンで物語は終わる。
 七緒は長政から覚悟を学び、長政は七緒から素直に感情を示すことを学ぶ。似た者同士のカップリングではなく、互いに足りないものを「足りない」と自覚した二人は、自分が持っていないものを持っている相手に惹かれたのだなと思う。
 ラストでは、合戦の後で各地に散った仲間から七緒にたくさんの文が届き、長政がそれに嫉妬している。最初はこちらを子ども扱いしてきた大人の男が、最後にはヒロインにズブズブになっている様子を楽しむことができるのだ。

 長政ルートには「敵同士の恋」「塩対応からの恋」「モテる大人の男と少女との恋」など、これでもかというほど『鉄板だが萌える展開』が詰め込まれている。
 また、長政は偉そうで(実際偉いけど)、威圧的で、自信家で、能力があって頼りになる。つまり、カテゴリ的にはいわゆる俺様キャラに近い。こういうキャラがこちらに落ちてくる様子はジャンル、作品を問わず「いとをかし」となるものなのだ。
 だが、巷にあふれる俺様キャラとヒロインの恋愛の多くは、俺様キャラの地位や経済力がヒロインよりも高い場合が多い。だが、長政と七緒の場合はむしろヒロイン七緒の方が長政よりも上、もしくは同格といえるのが面白いところで、そこがこのルートを『よく見かけるストーリー』にせずに済んだ一因かなと思う。
 長政ルートは、もはや婚姻しても利益がない織田の姫を黒田家がトリッキーな策で娶る流れだが、もし織田信長が死なずに織田政権が続いた世であれば、頼み込んで七緒を嫁にするのは黒田家の方だったはずだ。もちろん徳川の養女にする必要もなかっただろう。本能寺での父の死がこういうところにも影響するのだと思えば、これも含めて長政ルートは戦国が舞台の作品らしいストーリーだったと思う。

 あと、再三書いているが、私はクリアするまでは公式も関連ワードもプレイタグも見つけ次第すべてミュートして攻略に臨む。だが、関連がよくわからないゆえにミュートをすり抜けるワードもあるのだ。
 遙か7の場合、それは「ふわラテ」「ネスカフェとの癒着」である。
 なんなんだそれは。遙か7とネスカフェがコラボでもしたんか。
 ツイッターで流れてくる呟きを見ながらそう思っていた時期が私にもありました。
 長政ルートをやるまでは。
 やったらすぐに理由がわかったし、攻略中は自分でも「思ったよりもネスカフェ」とツイートした気がする。甲斐守は私が思った以上にふわラテを飲んでたのである。
 まあそれはいいのだが、ラストスチルの藤棚の下でも飲ませたのはいくらなんでも、という気がした。そっちが気になってしまうので、ラストのカフェラテは別に無くていい。

 だが、このルートをクリアしてもなおカピタンへの謎は深まるばかりであった。最初から、よく知らん日本での覇権を求めてやってきたのだろうか。
 マジで結局YOUは何しに日本へ?
 この時期のポルトガルといえば、ポルトガル(銃)、マカオ(生糸)、日本(銀)の三角貿易でボロ儲けしており、つまりカピタンが裕福な南蛮商人であることは間違いない。だが、武器は売るほどあるにしても日本につれてきている仲間の数は限られているし、カピタン軍の兵士にしようとしている日本人を合わせても兵の数は全然足りない。その人数で日本征服はいくらなんでも無理である。
 そもそも、なんで彼がそんなに日本を支配したいのかとかがよくわからなかった。
 ただ、『レヴィアタン』という旧約聖書の生き物が出てきたり、キリスト教の秩序を憎んでいたり、ポルトガル系っぽかったり、商人だったりするカピタンはもしかしたら、改宗したユダヤ人なのかもしれない。
 彼の出身地と思われるイベリア半島は、悪名高いヨーロッパの異端審問の中でもひときわヤバい異端審問の地である。
 前述したようにポルトガルはスペインに併合されているが、スペインの宗教裁判はヨーロッパ随一の恐ろしさなのである。改宗したと言い張っても、ユダヤ人というだけで命の危険は高かった。だからスペインと併合された時には、異端審問を恐れた多くのユダヤ人がポルトガルを離れたのだ。カピタンは本国でよく無事だったなと思う。身の危険を感じで故郷からオランダあたりに脱出した、とかそんな話なのだろうか。
 結城の話ではカピタンは両親を失って教会で育ったらしいのだが、両親が改宗者で宗教裁判にかけられた可能性はある。そこから何がどうして悪魔の力で怨霊を呼べるようになったのかはまだわからないが、彼がカトリックや神を憎む理由にはなる。
 カピタンは「私は神を、信仰を、この世界のすべてを、この理不尽な世界を……(ここに続く言葉は「消したかった」もしくは「憎む」だろうか)」と言っているが、中世ヨーロッパの神、信仰、世界そのものは全てカトリックの秩序に基づいたものなので、そこから外れたものは異端になるのだ。異端として迫害されたくなければ、そこに組み込まれるか逃げるかしかない。もしくはすべてを壊して作り変えるかだ。
 カピタンは逃れて力を手にした結果、後者を選んだということなのかもしれない。

 さて攻略も残り三人。
 次は阿国さんに行こうかと思う。



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