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アンジェリークルトゥール クラヴィス攻略感想

 ルトゥール攻略感想3人目は闇の守護聖クラヴィス。
 ストレートの黒髪長髪に紫の瞳、彼が司る闇を具現化したような美形(しかもデカい)だ。ヒロインのアンジェリーク・リモージュが金髪で明るい印象の容姿なので、この二人を並べると天使と魔王っぽいというか、その配色にはオタク心が最高にくすぐられる。
 救済される者とその救い手というか、闇の中の一筋の光というか、容姿の対比だけですでに「良きかな」と思わせるのがクラヴィスとリモージュの組み合わせだと思う。

 それにクラヴィスには、守護聖の中で彼だけの「特別」と言っていい設定がある。
それは、クラヴィスに昔本気で愛した女性がいたという事だ。ヒロインアンジェリークと同じ名前で同じ髪の色で、さらに同じ女王候補という立場だった現女王との恋である。
 現女王が女王候補時代、クラヴィスは彼女に恋していたが、恋より使命を選んだ彼女は女王になりクラヴィスの手の届かない存在になった。
 クラヴィスは過去にヒロイン以外の女性に本気で恋をして、しかも失恋した経験があるのだ。
 もしかしたら、他のキャラにも実はそういう過去があるのかもしれないが、ゲーム内にそれが描かれているのはクラヴィスだけだ。
 他の守護聖にとってのリモージュ(とロザリア)は最初、自分たちが協力すべき女王候補にすぎない(そこから恋に発展するのが醍醐味だし)。しかし、クラヴィスにとって、リモージュは最初からもう少し特別というか、名前といい髪の色といい明るい性格といい女王候補という立場といい、何もかもが昔の恋の痛みを思い出させるような女の子なのだ。
 以前の失恋の傷を引きずる男を新たな恋に落とす、これこそが他の守護聖との恋愛とクラヴィスとの恋愛の最大の違いであると私は思う。

 乙女ゲームには意外と「ヒロイン以外の女性を本気で好きになった過去がある男」が少ない。
 ネオロマなら、私はクラヴィスの他にはアリオス、コルダの金やんくらいしか思いつかない。
 乙女ゲームには「これまで他の女と付き合ったことはあるが、本気で好きになったのはお前(ヒロイン)だけだ」みたいな男が結構出てくるし、その言い回しにはやっぱりときめく。
 ただし二次創作の、過去の女との恋愛を何が何でも「本気じゃなかった」「他と付き合ったことはあっても彼の初恋はヒロイン」に落とし込む作品が私はあんまり好きではない。
 攻略対象はヒロイン以外にマジ恋した過去があったらあかんのかという話であり、私は「前の恋にももちろん本気だったけど、ヒロインとの恋はそれ以上だった」という方が好きだ。
 もともと私には、攻略対象が過去にヒロイン以外の女に恋した経験を否定したい気持ちがよくわからないのだが、たまに見かけることは確かだ。しかし、クラヴィスとアンジェリークのカップリングの場合、クラヴィスの過去の恋愛を否定的に捉えてたり、無かったことにしようとしている人は見たことがない。
 クラヴィスの場合、この過去の恋愛と失恋経験が魅力の1つになっているからだと思う。この経験があることで、彼を闇の底から連れ出してくれたヒロインとの恋が一層輝くからだ。
 厭世的で無口で引きこもりがち、仕事に対しては必要最低限の気力で臨み、常に徹夜明けみたいなテンションなのがクラヴィスだが、彼が守護聖になった経緯に加えて過去の失恋話が加わることで、「お前もっとやる気出せよ」ではなく「そうなるのも仕方ないよな」みたいな気持ちになるし、それだけ女王陛下を愛していたんだなと思える。前の恋にそれだけ真剣だった過去があることで、クラヴィスって誠実なんだなあと感じる。そして、今度こそヒロインと幸せになっておくれよとプレイヤーに思わせるのだ。
 クラヴィスにとって、アンジェリーク・リモージュは胸の痛みを思い出させる存在であり、最初はその明るさや前向きさをうっとおしく思っているフシがある。クラヴィスの司る力とは正反対のタイプのアンジェリークに「ここまで踏み込んでこれるのか? 闇だぞ?」と覚悟の程をちょっと試すような雰囲気もある。
 それでもめげないというか、全然自分や闇の力を怖がらないアンジェリークにクラヴィスは次第に興味を持つ。
 それは、冬眠中の生き物が穴蔵からちょっと出てくる気になったようなもので、アンジェリークと過ごしたクラヴィスの感想も「眩しい」「お前は元気だな」みたいなものから、次第に「暖かい」「心地良い」にチェンジしていく。
 クラヴィスとのデートを成功させたり菓子を振る舞ったりして距離が近づくたびに「クラヴィス〜、(穴蔵から)ゆっくり出ておいで〜、こっちは明るいよ〜」という気持ちになる。
 クラヴィスがアンジェリーク・リモージュに興味を持ったきっかけの一つは、昔恋した「アンジェリーク」かもしれないが、リモージュと親しくなっていく過程で、リモージュ自身の魅力に惹かれていったのだと思う。
 クラヴィスには、明るくてへこたれなくて、前向きでガッツのある女がよく似合う。ただでさえ、闇というマイナス要素の強い力を宿しながら長く聖地にいるクラヴィスは「疲れた〜、ここにいるのもう飽きた〜」みたいな状態である。リモージュは、そんなクラヴィスに「もっと頑張れ!」というエールではなく、「え? ここ素敵じゃないですか? もっと探検してみましょう、もちろん一緒に」とにこにこ言ってくれそうなタイプだ。
 クラヴィスにとってリモージュは目を焼くような強すぎる光ではなく、陽だまりのように暖かな光なのではないかと思う。彼女を自分の天使だと言って、クラヴィスがその手に口づけするスチルは最高に良かった。
 冒頭でも書いたが、クラヴィスはエンディングで「今度こそ幸せになってくれ〜!」と祈りたくなる守護聖ナンバー1だ。
 そして、森の湖2段階目くらいで女王エンディングを迎えた時に何となく罪悪感を覚える守護聖ナンバー1でもある。
 「お前「も」女王の座を選ぶのか」というセリフに、ごめん! 告白を断ったわけじゃないし試験を頑張っただけで私は全然悪いことしてないはずなのに何かごめん!という気持ちになる。
 10年以上経ってプレイした、このリメイク版でもそこで感じた気持ちは変わらなかった。

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