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"組織・キャリアにおけるスポンサーシップ"についてまとめてみた

2020年は、「経営・管理職層に女性が少ない」をテーマに細々とアクションしてきた。

「難しい問題だよね」で終わりがちなこのテーマをどう前進させるか。

社内外で壁打ちをさせてもらう中で、個々人の意見や感情はいったん置いておいて、「構造の問題」として課題提起をすれば、具体的な議論につながるのではないかと考え、9月には取締役会でも本議題を扱った。(経緯は『取締役会で『経営・管理職層におけるジェンダーギャップ』に関する議題を初めて扱った話』にまとめている)

「構造の問題」に対してどう取り組むか

さて、構造の問題だと仮説を立てたとして、果たしてどのように取り組んでいけばいいのだろう。

様々と調べているうちに、スポンサーシップという考え方と出会った。一般的に、スポンサーとは資金提供者を意味するが、このページによると、キャリアにおけるスポンサーシップは、以下を意味するという。

・スポンシー(支援される人)の能力や人間性に対する信頼をもとに、そのキャリア構築を支援するために、スポンシー自身と周囲に働きかける思考と行動、またはこれらのプロセスを促進させるための制度をさす
・組織行動論の研究者であるハーミニア・イバラ氏が提唱した理論で、特に女性のリーダー育成・キャリア育成の場面で用いられる
・社内人材を活用し若年者の成長を促進するメンター制度から、さらに踏み込んだキャリア形成の支援方法

これまで、「ひとりひとりが、キャリア・働き方を自分でつくる会社へ」というミッションを掲げ、キャリア形成の支援を目的とした機会やツールをいくつかつくってきたが、スポンサーシップという観点を持てていなかったことに気がついた。

スポンサーとは、「コネクター」「機会提供者」「昇進推薦者」

では、具体的に、スポンサーの役割はなにか。

「メンター」と「スポンサー」の大きな違い』によると、スポンサーの役割は、以下のように定義されている。

「スポンサー」をこう定義している――庇護の対象とする部下のために労を惜しまず昇進を後押しし、少なくとも次のうち2つを行う上司である。
・対象者の潜在能力を本人に認識させ、解き放つ。
・上級幹部とのコネクションを持たせる。
・幹部のあいだで認知度を高める。
・昇進のチャンスを増やす。
・幹部らしく振る舞う方法を教える。
・社外とのコネクションを持たせる。
・さまざまな助言を与える。

私自身のキャリアを振り返ると、インターンで働き始めた当時の女性上司、新卒時代の営業部部長であった江戸(現アディッシュ社長)、新卒で入社したガイアックス上田さんらが、スポンサーの役割をしてくれていた。私は、スポンサーシップを受けられやすい環境にいたのだということに気づいた。

女性に対してスポンサーシップが発揮されない構造

一方で、人は、自分に似ているメンバーを引き上げる。その力の働きをMini Me(ミニミー)と言うそうだ。男性にとってのMini Meは男性になりやすい。その逆もしかり。

A Lack of Sponsorship Is Keeping Women from Advancing into Leadership』には、以下のように課題提起されている。

・スポンサーシップの欠如が女性のリーダーシップ(経営・管理職層)への進出を妨げているのではないか
・女性にはメンターは豊富だが、スポンサーが少ない傾向がある
・女性は女性のメンターを希望するが、そのメンターが影響力を持っていない
・男性の同僚と比較して、女性は、上級指導者との有意義なやり取りが少ない

女性だから昇進が難しいというわけではなく、経営・管理職層が男性ばかりであるため、Mini Meの連鎖により、男性には当たり前に行われているスポンサーシップが、女性に発揮される仕組みになっていないのだと理解した。

社内のスポンサーシップをどのように高めていくか

こういった構造の問題に対応していくため、一部の外資系企業や大企業では、社内でスポンサーシップ・プログラムが組まれているという。

ゴールドマン・サックス流女性社員の育て方、教えます』には、ゴールドマン・サックスが、「メンター制度」に加えて「スポンサー制度」をつくって取り組んでいることが書かれている。

・対象となる女性社員1人に対して、所属部署ではない幹部クラスが2人スポンサーとしてつく
・女性社員の仕事ぶりを複数の管理職が総点検し、キャリアについてアドバイスする
・本人に代わって、彼女の業績や能力をアピールし、人脈づくりなどを通して本人の昇進をバックアップする

もちろん、女性を対象としたリーダーシップ研修を行うという選択もあるだろう。いずれにせよ、男性で占められている経営・管理職層と女性がいかにタッグを組めるか、そもそも対話する機会をつくれるか、がポイントであるように思う。

社外で発揮されるスポンサーシップ

スポンサーシップについていろいろと調べているうちに、ふと、『1兆ドルコーチ』に描かれているビル・キャンベルの働きを思い出す。

・自分の知っている成功した女性リーダーを、ほかの女性リーダーに紹介した
・女性CEOを集めた会を開催し、テーブルを囲む女性同士でチャンスを与え合うようにと促した
・取締役が必要になったら、まずこのメンバーのなかから探せと、いつもグループに促していた

これは、社外で発揮されているスポンサーシップの例と言えるのではないかと思うようになった。

そう思うと、私がコーチングをお願いしている垂水さんも、他社の経営・管理職層の女性とつなげてくれたりと、スポンサーの役割をしてくれていることに気づく。

2021年は、社外コミュニティから社内に実験を仕掛けたい

ここまでつらつらとスポンサーシップについて書いてきたが、いまの段階で、社内のスポンサーシップを高めることを目的とした制度設計をしても、時期尚早感がある。

2021年は、まず、社外のスポンサーシップという観点で、社外の女性役員同士がスポンサーシップを発揮しあえるコミュニティをつくりたい。そして、組織のスポンサーシップをテーマに一緒に実験をしていきたい。

2020年は、素敵な女性経営層の皆さんと出会うことができ、コミュニティの原形をつくることができた。これから、コミュニティがどのように育っていくか、どんな実験をしていけるか、すごくワクワクしている。


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