くにきだ

2001

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ジョナス・メカス「リトアニアへの旅の追憶」と地に足のついた生

ジョナス・メカス「リトアニアへの旅の追憶」ジョナス・メカスは、アメリカの実験映画作家だ。いや、実験映画作家と言われているが、彼の映画はもっと個人的で、創造的だ。実験というよりは、詩的な映画である側面が大きい。 リトアニアへの旅の追憶は、戦時中、リトアニアからアメリカへと亡命したジョナス・メカスが、自ら彼自身の人生を辿る映画だ。アメリカでの記録、リトアニアへの帰還と家族との再会、戦後のハンガリーの3部で構成されている。 映画は、メカス自身がカメラをもち、彼の目に映る世界を刻

    • 【読書】『天路の旅人』読了後の爽やかさについて

      天路の旅人 沢木耕太郎氏が珍しくテレビに出ていた。 ちょうど「天路の旅人」を読んでいたから、何を語るのか興味があった。天路の旅人は昨年読んだ長編の中でも心に残った作品の一つだった。 リアタイできなかったので、アマプラで見逃し放送を見た。 沢木耕太郎の話し方は淡々としていた。だが、芯のあるはっきりとした声だった。桑子アナが放送中にも気付いていたが、沢木耕太郎の眼は少年のようにキラキラとしていた。 「天路の旅人」は沢木耕太郎自身の旅ではなく、西川一三という男の旅をいうつか

      • 世界が離散化され、最適化されている

        移動エントロピー 移動エントロピーは情報の流れを定量化できる。しかし、十分な長さの二つの時系列データが揃った場合に限る。もっといえば、各要素が取りうる確率分布がわかっていないと計算できない。連続値を扱うにしても、どこかで離散化してあげる必要がある。 情報理論は離散化された世界、つまりデジタル空間上での物差しが前提となっている。従って、情報量を定量化する際は、世界の複雑さが少しばかり、削られていることを加味せねばならない。 僕らが何かを離散化する、すなわち、現実の世界を切

      ジョナス・メカス「リトアニアへの旅の追憶」と地に足のついた生