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魔女の話

2023/08/07(月)

 ひさびさに「涼しい」と感じる朝。
 うまく眠れなかったが、外の空気にふれて爽やかな気分になった。

 午前中の時間をすべて費やして、京極夏彦『絡新婦の理』を一気に読み終えてしまった。
 初めて読んだときは、必死に物語を追いかけてひたすら圧倒され、冒頭で描かれる舞い散る桜の渦に呑み込まれるような心地だった。今回もその読後感は変わらないが、再読であること、私の読書力も多少は上がったこと、作中で提示される京極節(物事に対する透徹した価値観の数々)への理解が深まったこと……などの理由で、どういう構造ともくろみを持った小説であるのか、昔よりはいくらか見えた気がする。それゆえに「とんでもない小説である」という畏怖もより強まったわけだけど。
 個々の人間など取り替えのきく駒にすぎず、誰がはめ込まれても大勢(たいせい)には影響なく動いていく社会や犯罪のシステムの話。家父長制とフェミニズムと魔女の話。思想もひとつの感情であり、感情が事実の認知を誤らせるということから人は逃れられないという話(劇中でも逃れられているのは京極堂と榎木津だけじゃないか)……
 27年前に、デビュー2年めの、30代前半の男性作家が、この重層的な小説を書いたのか。京極先生がいちばんの妖怪だよ(ありがち)

 9月に『鵼の碑』が出る前に、もう1作くらい長篇シリーズのどれかを読み返して気分を高めておきたい。どれを読もう。「これを読んだら、その登場人物がけっこう重要な役割で再登場するから『鵼』がより楽しくなる」みたいなのがあればいいんだけど。

 国立科学博物館の運営資金が足りなくてクラウドファンディングで募るというのが話題になった日だった。目標の1億円はたちまち達成したらしい。私も日本酒がもらえるコースに応募しようかと思っていますが(大人気でまだアクセスできない)しかし、博物館というのは、展示を客に観せるのは二の次……というわけではないけど、あくまでも貴重なものを保管したり研究したりするのが施設の本義でしょう。その予算が危ぶまれるというのは怖いことではある。
 私もクラファンでお金を募ろうかな。どんなリターンがいいだろう。酒席を設けてくれれば全国どこでも駆けつける権とか? それは私が楽しいだけだな。

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