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いま、軽自動車から目が離せない。ペーパードライバーのはじめの一歩。「軽の世界」

ご存知の方も多いかもしれませんが、詳しくない方にお話しするとびっくりされるのは、

軽自動車は、日本独自の規格で設計されている、国内専用車

なんです。これは良くも悪くもなんですが、最近はメリットの方が大きいなと感じています。というのは、周囲を走るクルマのアクティブセーフティー(衝突軽減ブレーキや、危険に対する各種アラート)が充実してきて、最大の懸念だった

追突に対するディスアドバンテーが小さくなりつつある

という点です。

追突に関する衝突安全性に関しては、ヨーロッパの規制が最も厳しくて、その背景には アウトバーン/アウトストラーダ と呼ばれる、日本よりも遥かに高い速度で運用されている高速道路における走行性能や衝突安全性が前提となっているところにあります。150-200km/hで当然のように巡航するのが日常茶飯事。クルマの格(主にサイズに比例する)によって走るレーンも自ずと決まっていて、区間は限定されるものの自己責任において速度無制限で走行することができます。日本では考えられないですよね。しかしそれが当たり前の世界における衝突安全性は、自ずと高くなるわけです。

と、いうわけで、クルマに詳しい人たちは輸入車を好んで買ったり勧めたりするし、「軽は危ないからなぁ」というコメントを出しがちで、そしてぼくも近いことを思っていたのですが、2023年現在でいうとその過去の常識もちょっと違ってきてるんじゃないかなと思うのです。

昔は、軽自動車を作った上で、それを大きくしてちょとムリのある普通車って沢山あったのですが、最近は逆なんじゃないかと思っています。(ぼくが所属していたMAZDAでは当時、軽自動車の開発はやっていなかったこともあり。)本当は聞いてみたいんだけど、なかなかR&Dの商品企画にの人からその辺の開発の根幹を聞き出すのは難しくて、想像するしかないのですが、ぼくは薄々そんなふうに思っています。

例えばですが最近だと、トヨタ・ヤリスって、ほとんどダイハツの技術で作られてるなぁと思うんですよね。元々、Vitz / Yaris に積まれてた3気筒のエンジンってダイハツのエンジンがベースだったと思うし、なんと言ってもピクシス・エポック/ミラ MT に乗ると、ヤリス/GRヤリス の味がするんですよね。(アクアはトヨタ、ヤリスはダイハツ、って棲み分けなんと違うかな?)

あと、タウンエース バン、あれもほとんど内装なんて アトレー なんじゃないかなと。ダイハツ タントと トヨタ ルーミー(これはダイハツ トールのOEMだけど)も、ほとんど基本的な設計が同じに見える。

というのも諸々考えまして、高速道路に乗らなければ、もう軽自動車でもいいなと思い始めています。

ダイハツ キャスト なんて、先代まで何やりたかったのかわからなかったけど、今となってはあれのライバルは MAZDA C X-30 だろう。それくらい上品だ。乗り心地もいい。

今、もいいなと思っているのは 日産 DAYZ 。多分だけどあれは EVの日産  SKURA のベースになっているクルマだから、伝統的に培ってきた基本的な骨格作りのノウハウと新時代への適応のためのオーバースペックのためか、走り方の挙動が非常に 「クルマらしい」。似たのにROOXってのがあるんだけど、それも人気だけどやっぱりスライドドアが重かったり後席をギリギリまで下げてリアウィンドウに子供の頭がくるような運用にはちょっと気持ちがざわッとしてしまう。コトが起こってからでは後悔しても仕切れない。その点でもDAYZは、

日本の軽自動車かくあるべし

って言ってるみたいで、とても好きだ。少し趣味にふっていいんだったらHONDA NONOE も捨て難いけど、ちょっと狭い。この際だから話すと、古賀が2023年時点で最もいいなと思う軽自動車は、

ダイハツ ムーヴ・キャンバス

だ。これについては優勝だ。ただこれは、コスパとか機能とか使い勝手とかそういう評価軸ではなく、

ドライバーとして車両をコントロールした際、BMWから乗り換えても遜色ないレベルでちゃんとしてる。

そんな点だけで優勝とか言っちゃってるので、他の細かいことは知らない。ただ、あの乗り味と、本革を使ってないのに樹脂で本革の手触りを再現していることとか、加速、減速、旋回中の挙動や、ロールのセンターが高速域から低速域まで一貫してて、非常に安心・満足できる。

ダイハツを買ったらダイハツから降りられない(またダイハツを買ってしまう)というのは、こういうことかと唸らされてしまう。新しいモデルになるたびに確実に進化してくる。細かい話をするとは長くなるので(すでに長い)そろそろ終わりにするが、

もしレンタカーやカーシェアや試乗車に、ムーヴ・キャンバスを見つけたら、乗ってみてほしい。で、その後に、BMWの118i や CLAあたりと乗り比べてみてほしい。日本のガラパゴス自動車進化論は、きっと海外の自動車エンジニアが見たらびっくりすると思う。220万円でそんなことできるんかいな!!!!ってね。

タントには、スライドドアのオートクロージャーどころか、助手席のオートクロージャーもついてるからね。レクサスじゃないんだから、っていう

日ごろのアシには軽自動で、遠出する時はメルセデスのEクラスでも借りて出かける、みたいな生活は、いいなぁと思います。

自動車開発テストドライバー
古賀


古賀章成です。自動車開発テストドライバーという仕事をしています。主に、運転を苦手だと感じている人に、安心してもらえるような・自信をつけて楽しんでもらえるような練習の仕方やクルマの在り方を研究・開発しています。頂戴したサポート費は、テストや開発の経費として活用させていただきます。