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お国自慢とは。岩手山を眺め思う

新聞記者時代、異動してきてすぐの河北新報の記者に「郡山のお国自慢は何?」と尋ねられた。



その後出た記事。(抜粋)

 1年ほど前まで暮らした盛岡では、こと岩手山の話になると、寡黙な人が突如冗舌になって驚かされた。

 「毎朝、岩手山を眺めながら通勤するんですよ。すごいでしょ」とか「マンション住まいですけどね、窓枠がまるで額縁のようでして」といった具合。そういうせりふは、わが家の玄関先から望む夕映えの岩手山を一度味わってからにしてほしいと常々思っていた。

 翻って郡山。誰に尋ねても「何もない街ですよ」と素っ気ない。確かに中心市街地は味気ない郊外店の見本市みたいだが。


そういうわけで、岩手県民ご自慢の岩手山とはどんなもんじゃいと気になっていたのである。

※私は何もないとは言ってない!


岩手は東日本で唯一、未到の地だった。

なぜかずっとご縁がなく、八戸を目指し秋田を目指し通り過ぎてばかりだったが、婚約者が一関市出身だったことからなんだかちょっと、思いがけず、ドキドキを伴う東日本踏破になった。


一関での儀式(?)を一通り終えたあと、
ともかく岩手山である。

高速を走り、盛岡に着いたのは午後6時。この季節、当たり前に外は真っ暗だ。もちろん山なんて見えない。

二人の中ではちょっと奮発して取ったホテルメトロポリタンに着き、ひとまず夜の街に繰り出した。立て看板を読みつつ開運橋を渡り、気持ちよく食べて飲んで0時ごろ帰宅。さすがに疲れてそのまま眠りに付いた。

起きると朝8時。青空と何やらそびえるものが、ロールスクリーンから透けて見えた。

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確認せずとも分かった。こ、これが岩手山だ…!


その後、例の河北新報記者に「岩手山がよく見える」とおすすめされた高松公園へ。

道中ふたたび開運橋を渡っても岩手山。
ああ、昨日は知らなかったけどここにもあったんだ。

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高松公園は広大な池を遊歩道がぐるっと囲んだ小高い公園。日露戦争勝利に歓喜した住民が記念にと植えた桜が名物だとか。

着いたはいいが、その桜の枝隠れて山は見えない。「たいして見えないじゃん」とぼやきながら池の周りを歩き出し、ふと池の方を見ると

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この景色!


標高約2000mの岩手山。周りに高い山がないからか、街中に入るとすぐに見えなくなり、そしてまた顔を出す。そしてその姿も街中からとはいえ、違う表情を見せてくれる。

ホテルからの眺めより、公園から見た岩手山はなだらかで長い裾野をよりはっきりと見ることができた。

福島の名峰・磐梯山はゴツゴツして男性的な「いかつさ」「壮大さ」を感じさせる一方、こちらは女性的な柔らかさを感じ、まさに雪化粧を纏った姿が美しい。

確かにこれが窓から見れるなら、それは大いに自慢したい。


福島県のお国自慢はと聞かれればきっと「酒」と即答できるのに、こと郡山に関することだと急に口籠ってしまう。

猪苗代湖は猪苗代町のものだし、観光地と呼べるものも思い付かない。日本で初めての24時間営業のセブンイレブン?西田敏行?県内唯一の遊園地?県外の人に自慢するとしたら?

改めて聞かれることもないがゆえに、改めて考えることもなかったかもしれない。

友人の同僚で、小野町出身の方がこう話していたという。
「小野には松月堂がある」
(朝8時開店でふわふわのオムレットがとても美味しいお菓子屋さん)

ならばと郡山。美味しいものは数あるが、全ての土台である米や野菜は本当に美味しい。

野菜は焼くだけでご馳走になるような名作が気軽に手に入るし、地元の米は他県のブランド米が物足りなくなるようなうまさがある。


「お国自慢」なんて、どデカい山なんかじゃなくても、そんなものでいいのかもしれない。
胸張って地元の農を自慢していきたい。

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