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でき太くん三澤のひとりごと その102

◇ 昭和の変わった塾 その2

前回の昭和の変わった塾。
ぜひ伝えておきたいエピソードが1つだけありますので、今回も少しお付き合いください。

私が中学3年生だったとき、その塾には3クラスほどありました。

私のクラスは生徒が半分ほど退塾した程度だったのですが、他のクラスではクラス全員退塾という、まさに経営を度外視したようなびっくりするようなことが起きました。

1クラス全員退塾。

まさに昭和。
今ではとても通用しないです。

風評を恐れず、我が道をいく。
自分が信じる教育のあり方を貫く。
すごい姿勢です。

さて、その全員退塾させられたクラスで、唯一ひとりだけ復学できた子がいました。

なぜ、復学できたのか。

あとからその子に聞いた話ですが、その子は母子家庭で経済的には決して裕福ではなく、お母さんが家計が厳しい中でもなんとか息子のためを思い、生活費などを節約するなどして、何とか月謝を捻出していたそうです。

そのような背景をその子は知っていただけに、お母さんに「宿題をやっていかなかったから退塾させられた」とは言えなかったそうです。

ですからその子は、塾のある日はいつも通りに家を出て塾に行き、先生に塾に戻らせてほしいとお願いしていたそうです。

もちろん、その先生は昭和のストロングスタイルですから、

「退塾の決定は変わりません」

と、迷うことなくきっぱりと断れたそうです。

2回いっても断られ、3回いっても断られ、4回いっても断られる。

そこでその子は、塾がある日以外も先生を訪問し、

「お願いします。塾に戻らせてください」

と懇願したそうです。

多少、その子が話を盛っている可能性もありますが、6回目か7回目にようやく、

「仕方ないですね。。。それだけ言うなら復学してもよいでしょう」

と、塾に戻ることを許してくれたそうです。

たいていは、「退塾」ということを理不尽だと感じ、他の塾に行ったり、親御さんが塾に怒鳴り込んできたりと、復学することなどほとんどなく、その子の復学が最初で最後の事例となりました。

その復学ができた子は、親に心配をかけることなく無事に復学できたことを喜んでいましたが、大人のネットワークというのはすごいもので、先生から親御さんに今回の顛末はすべて報告されており、その子がお母さんからこっぴどく叱られたことは言うまでもありません。

ただ、その子のお母さんが、「何度も先生のところにお願いにいったあんたの姿勢はすばらしかった。これはお母さん誇りに思う。それが物事に真摯に、本気で向き合うことだよ」と言われたそうです。

いいですね、昭和のストロングお母さん。
私はこういうお母さん、大好きです。

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