でき太くん三澤のひとりごと その97
◇ 心残りなこと
今朝、歯を磨いているとき、ふと昔会員だった方のことが頭をよぎりました。
「あのお母さん、今頃どうしているのだろう」
もうかれこれ7、8年くらい前になるでしょうか。
小学5年生で、進学塾での成績があがらずに困っているという男の子が入会してきました。
この子の家系は、お父さんもお医者さん、おじいちゃんもお医者さん、ひいおじいちゃんもお医者さんという、代々お医者さんでした。ですからその小学5年生の子もお医者さんになることを当然のように目標としていました。
お医者さんになるには、やはりそれなりの学校に通う必要があるようで、そこに入学するためにかなりレベルの高い進学塾に通っていました。
ただ、進学塾での成績がなかなか上がらない。
決して努力をしていないわけでもなく、学校から帰ったらすぐに塾の宿題に取りかかり、就寝もかなり遅かったようです。
また、塾とは別に家庭教師も雇い、成績を上げるための方策で考えられるものはすべて取り組み、何とかして成績を上げ、塾でハイクラスに行こうと努力していました。
しかし、出てくる結果がいつも良くない。
「あれだけやったのに…」
「なんでいつも結果がでないのだろう…」
困り果てた末、でき太くんにたどりついたのでした。
私がそのお子さんの学力状況を把握させていただいたときに感じたことは、学力的には決して不足はなく、すばらしい資質を持ったお子さんだということです。
ただ、彼の解答の運筆状況等をみると、字や数字は小さくて薄く、筆圧も弱い。また、粗っぽい印象もありました。(つまり雑ということです)
こういう運筆のときは、たいてい結果がでないものです。
運筆は、その子の精神状況や思考レベル等をよく表しています。
このお子さんは、まさに頭の中がゴチャゴチャになっていて、自信がないのです。
この状況でプリントを作成して学習してもらっても、結果がでないことはわかりきっているので、まずはお母さんにアポイントをとり、じっくりお電話でこのお子さんの状況をくわしく伺いました。
そこでわかったことは、そのお子さんの教育面(学校の教科学習、塾など)のことはすべてお母様に一任されているとのことでした。
別の言い方をすれば、ほとんどお母様任せで、お父様は結果についてどうのこうの言うだけ。
「努力がたりない!お前が甘やかすからだ!」とか。
さらに、成績がわるければ親戚からもどうのこうの言われる。
お母様は何とか結果が出せるように、何とかみんなの期待に応えられるようにひとり努力していたのです。
私は直感的に、「原因はこれだ」と思いました。
ここ数回のコラムでは「環境」について書いてきましたが、みなさんもそういうお家で自分が勉強していることをイメージしてみてください。
自分が勉強しているときに、お母さんがお父さんにキツく言われている姿。
親戚に嫌味たっぷりの言葉を投げかけられているお母さん。
自分のせいでいつも責められるお母さん。
そんな環境で、じっくり集中して勉強できる小学5年生がいたら、たいしたものです。
おそらくその子は、勉強していても「心ここにあらず」で、時間だけがすぎていたはずです。
これでは結果が出ないのも当然です。
私は早速お母さんに「環境」を少しずつ変えていくことを提案しましたが、ここですでに2時間近く話をしていましたので、今後の対策についてはまた後日じっくり話し合いをするということになりました。
ところが数日後、お母様からお電話があり、でき太くんは受講しないということになりました。
言いづらそうに、お母さんが「通信ごときじゃだとダメだと主人が言うものですから…」と受講しないわけを教えてくれました。
最後、涙声になっていたお母さまの様子から察すると、お母さまはでき太を受講したかったのだろうなと思いました。
その後、お母さんとその子はどうなっているのでしょうか。
お二人ともしあわせだったらよいのですが。
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