見出し画像

【自治トピックス】No.61

 母が新型コロナウイルスに感染した。2月1日に高熱の症状が出て、2日にはPCR検査で「陽性」の判定。保健所からの連絡は5日午前だった。保健所の業務がひっ迫しているとは聞いていたが、重症化リスクのある高齢者が4日間、何のケアもされずに放置されてしまう。これはやはり異常事態だ。幸い、母は介護施設で働いていたため早くに2度のワクチン接種を済ませていた。仮にワクチン接種の効果が切れていて、しかも感染したのがオミクロン株ではなくデルタ株だったらと思うと、ゾッとする。日本はどちらかというと、欧州と比べて新型ウイルスの封じ込めに成功してきた国ではあるが、最初の感染が見つかってから2年も経つというのに、こういう医療や保健所のひっ迫が相変わらず続いている。いったい何のために憲法や法律が存在しているのか。つか、政治家はコロナで絶滅してしまったのだろうか。

 今週もニュースの切り抜きから。

 石原慎太郎氏が2013年の国会論戦で「日本人への遺言」を残していたことが、改めて注目されている。東京都知事を辞任して国政復帰した直後で、悲願の憲法改正や、沖縄県・尖閣諸島の実効支配、首都圏上空の横田空域、国のバランスシート、天皇陛下の靖国参拝などについて持論を披露していた。当時の映像を見直すと、石原氏の憂国の思いがあふれていた。

夕刊フジ2022年2月5日配信

 これは、2013年2月12日に衆議院予算委員会での論戦である。私は当時、ネット中継をリアルタイムで観ていた。夕刊フジはこれを美談として記事にしているが、私には都知事4期目の延長戦をやっているようにしか思えなかった。しかも、もう終わってしまったはずの三宅島のNLP問題をわざわざ蒸し返した。

 NLPとは、米空母艦載機離発着訓練のうち夜間に行う訓練で、現在は硫黄島で行われている。かつて三宅村では受け入れの賛否を巡り村を二分する騒ぎになったが、強い反対運動で実現には至っていない。石原氏は、2000年の噴火で三宅村が疲弊しているから、NLPを誘致しろと、当時就任したばかりの安倍晋三首相に迫ったのである。

 当時の政調会長の藤尾が、青嵐会の仲間ですが、あの人も剛直な人だったけれども、ややちょっと権柄ずくで、政調会長はすごく偉いんだと自分で言って回るぐらいのおもしろい人だったんだけれども、三宅島へ行っても威張りまして、つくってやるみたいな言い方をするから島民が反発して、結局、島民の投票結果は僅差で負けたんですよ。
 三宅島といったら、十何年ごとに噴火を繰り返して、非常に厄介な島なんですけれども、今も本当に疲弊していますが、かつての噴火でできた溶岩の台地があって、これを活用したら簡単に滑走路ができるんです。しかも、航空母艦みたいに、周りは海だから。

国会議事録から衆議院予算委員会2013年2月15日

 もちろん、これにはさすがの安倍首相もゼロ回答だった。私の地元にある厚木基地は、硫黄島が天候等で使えない場合の代替場所だったので、深夜にものすごい轟音に悩まされたことがある。本当にシャレにならないのだ。政治家としての信念があるのならともかく、18年ぶりに国会に復帰して、今さら昔話を持ち出されても、三宅島の島民からしたら迷惑な話だったのではないか。

 見た目と内面のギャップが大きい人だった。2003年秋、石原慎太郎さんの三男・宏高氏の衆院選初出馬を取材した。当時、銀行を辞めたばかりで無名の宏高氏。当然、報道陣は応援に来る慎太郎さんに群がる。ところが、当時は政界ににらみも効く超大物の東京都知事。連日駆けつける記者には目も合わせてくれない。単に群がるだけの日々が続いた。
 そして宏高氏の投票日。慎太郎さんの投票風景を取材しようと、私は朝から石原邸の近所の小学校にいた。記者は私のほかに1人いるだけ。黒塗りの車で現れた慎太郎さん。投票が終わって車に乗り込むと、周囲に報道陣がいないのを確認したのか、窓を開けて私に話しかけてくれた。「親だから『宏高』って漢字は知っているけど、一応平仮名で書いたよ」。そういって笑うと窓を閉めた。

スポーツ報知2022年2月1日配信

 最盛期には新聞各社が番記者を付けていたから、いつも顔を見る記者には安心して口を滑らしただろう。どうしても彼自身が吐いたヘイトの数々が目立ってしまい、ネットでは片方が神格化し、もう片方が全面否定する光景が見られるが、その人となりは冷静に捉えるべきだ。シャイでやさしい老人が、外国人や障がい者、高齢者をあからさまに差別する発言を繰り返していたのだ。そういう老人が大衆の熱烈な支持を得ていた。

 蓮舫氏はこれを報じた記事を引用し、「ご遺族のご意向で決めるものなんだろうか。元都知事のご逝去には哀悼の意を捧げますが、コロナ禍で都の財政も厳しい中、都民葬は最優先ではないのでは」と疑問を投げかけた。

東京スポーツ2022年2月7日配信

 参院議員である蓮舫氏がたかが「都葬」ごときで意見する理由が分からない。「都葬」というのは、財政状況でやったりやらなかったりするものなのか。コロナ禍だから参列できる人は少なくなるかもしれない。豪華絢爛に行うのは、石原さん自身も望んでいないだろう。粛々と行えばいいのではないか。Twitterでも都葬の開催に反対するハッシュタグが登場しているが、「俺の気に入らない都知事の都葬に税金など使わせるか」というノリでやっているのだとしたら、とことん軽蔑したい。

「ヨットマンはゴールに向かって、波や風を読んだりしながら艇を動かしていく。石原さんは波を読むというか、波をつくって、うねりをつくって、風を読むというか、風を吹かし、時には嵐を呼んだ。弟さんではありませんが。それでゴールに突き進む。そういうヨットマンだったのではないかと思っている」と、石原さんの弟、故石原裕次郎さんの代表作「嵐を呼ぶ男」にかけて話した。
その上で、生前の業績を念頭に「『おれがやるんだ』という強い意志を持って、進めてこられた。いろんな意味で学ばせていただいた」としのんだ。

日刊スポーツ2022年2月4日配信

 ちょっと何言ってるのか分からない。

 新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」による感染拡大が続く中、東京都は3日、緊急事態宣言の発令を政府に要請する際の新たな指標を発表した。感染が収束傾向になく、重症用病床使用率か入院患者に占める酸素投与が必要な患者が30~40%になり、かつ1週間平均の新規感染者が2万4000人に達した段階で判断する。医療提供体制の逼迫(ひっぱく)度と社会経済活動への影響を重視した。

東京新聞2022年2月3日配信

 最初、病床使用率50%で緊急事態宣言を要請するはずだったのが、あっという間に50%に達したことから、宣言の基準をわざわざ細分化し、ハードルを上げてしまった。そもそも、実効再生産数が次第に下がっているというのに、新規感染者が2万4千人など、本当にあり得るのか。 つまり、宣言を出さなくていい理由を後付けで作っているのである。こんなことをやっていたら、基準の意味がない。

 新型コロナウイルスの感染を自分で抗原検査キットなどで確認して療養する「自主療養」を巡り、神奈川県は1月28日から1日正午までに1823件の申請があったと明らかにした。黒岩祐治知事は同日の記者会見で「想定を超えた人数。(保健所の負担が減り)ありがたく思っている」と話した。

 検査キット不足に対応するため、知事は検査を省いて症状だけで判断して自主療養に入る仕組みの必要性を指摘し、国と調整する考えを表明。「オミクロン株に限った対応」と前置きした上で、「インフルエンザも皆が病院に行くわけではなく、自宅でじっとしている人もいる」と説明した。

東京新聞2022年2月1日配信

 検査しないで、「オレコロナ」と判断して自主療養に突入した場合、それは学校や職場に対する説明ができるのだろうか。下手すると、「今日、咳出るんで、オレコロナ」と言えば、勝手に自主療養に突入できてしまう。最後に、「インフルエンザも皆が病院に行くわけではなく、自宅でじっとしている人もいる」というのは本当なのか。軽症で、自分がインフルエンザと気づいていないケースはあり得ると思うが。

 松江市の市民団体「どうする島根原発?みんなで決める松江の会」は31日、中国電力島根原発2号機(同市)の再稼働の是非を問う住民投票条例の制定を求めて上定昭仁市長に直接請求した。投票条例案が近く市議会で審議される見通し。
 島根原発を巡っては、住民避難計画の策定が必要な原発30キロ圏に入る鳥取県境港、米子両市に別の市民団体が既に同様の直接請求をしており、両市議会でもそれぞれ条例案が審議される予定。

共同通信2022年1月31日配信

 原発の再稼働は、今も現在進行形の課題。本当に地元が原発再稼働を望んでいるのであれば、堂々と住民投票を行えばいいだけのことだ。そういう住民に身近な問題を政治家にお任せしないで、市民が意思表明していく。民主主義としては健全だ。

2日、鳥取県米子市の臨時市議会本会議中、伊澤勇人副市長が自席で倒れているのに、伊木隆司市長が気づきました。 議会では当時、市民団体共同代表の河合康明さんが意見陳述をしている最中で、河合さんは医師免許を持っていました。
河合康明さん 「顔色が非常に青白くなっていて大変びっくりしました。1人の医師として、これはいけないと思い行動しました。頭を下にしてネクタイを緩めました」

山陰放送2022年2月2日配信

 米子市議会で、その住民投票条例案の質疑を行っている最中に副市長が自席で倒れ、意見開陳に立っていた市民団体の代表が介抱したというエピソード。副市長はご無事で何より。

 静岡県熱海市で昨年7月に発生した大規模土石流で、同市議会は4日、地方自治法に基づく調査特別委員会(百条委員会)を開き、起点となった土地での盛り土造成の経緯を詳しく把握しているとみられる13人を参考人招致すると決定した。

共同通信2022年2月4日配信

 2030年度末予定の北海道新幹線の札幌延伸に伴い、JR北海道から経営分離される函館線小樽―長万部(140.2キロ)の並行在来線の存廃を巡り、沿線9自治体と道の協議が3日、倶知安町で開かれ、うち7自治体がバス転換を受け入れる意向を示し、余市―長万部(120.3キロ)は廃止となる見通しとなった。

共同通信2022年2月4日配信

 新幹線が通る代わりに並行在来線が廃止されるという全国どこでも起きている矛盾。これってつまり、倶知安にたどり着いても、そこから先の鉄道が存在しないということ。バスがあるじゃないかと思うかもしれないが、これまで北海道内で廃止された赤字ローカル線の代替バス路線はほぼほぼ壊滅状態である。人口減少でバス路線が廃止されたり、便数を減らして走っていても不便すぎて誰も乗らない。ほとんど地元の意地で空気を運んでいる路線もある。

 JR北海道はそのうち大多数の在来線を放棄して、北海道新幹線の経営会社になってしまうのではないか。

利用者が減っているJR大糸線の一部の区間について、JR西日本が3日、バスへの転換なども含めて検討すると発表したことについて糸魚川市の米田市長は、「廃線などの話は寝耳に水。遺憾であり残念だ」と述べました。

NHK2022年2月4日配信

 JR大糸線の糸魚川・南小谷間は、川沿いの風光明媚なローカル線だ。南小谷以南は、新宿からの直通の電車特急が走っている。かつては北陸本線からの直通のスキー列車が白馬まで走っていたが、北陸新幹線の並行在来線がJRから切り離されて、もう実現は難しいだろう。大糸線は、北陸新幹線の並行在来線ではないが、開通の余波で他の在来線から孤立した盲腸路線となってしまい、JR西日本としてはテコ入れの手段を失ってしまったと言える。

 ちなみに、長野県は大糸線とほぼ平行に走る高規格道路「松本糸魚川連絡道」を計画している。

 長野県知事は2022年2月3日(木)、高規格道路「松本糸魚川連絡道路」の一部となる「安曇野道路」について、新規事業化を求め国土交通省あて要望を行います。
「松本糸魚川連絡道路」は長野県松本市の長野自動車道と新潟県糸魚川市の北陸自動車道を直結する全長約100kmの高規格道路です。JR大糸線と全線にわたって並行しています。工区ごとにルートの概略検討などが行われており、新道建設ではなく現道の国道147号・148号などを改良することが決定している区間もいくつかあります。
 この道路により、大町・白馬方面の長野道からのアクセスが向上。さらに、富山方面から松本市や中央道方面へ、長野市をバイパスしてショートカットするルートにもなります。

乗りものニュース2022年2月2日配信

 まずは、その一部である「安曇野道路」の事業化を目指しているが、将来的には糸魚川まで延伸することは確実だ。この高規格道路が完成すれば、大糸線全線の存続すら危ぶまれるのではないか。今回、一部区間の廃止を免れたとしても、どこかでまた蒸し返される運命にある。

 沖縄県尖閣諸島の領海内で中山義隆石垣市長や市職員、保守系市議らが乗船する調査船が海水採取などの調査活動を実施したことが31日、分かった。市側が東海大学の「望星丸」をチャーターし、同日午前7~10時まで魚釣島と周辺の北小島、南小島の近海で実施した。

沖縄タイムス2022年2月1日配信

 奇しくも、石原元知事の亡くなった日の前日に調査活動が行われている。これは偶然なのだろうか。

 西銘恒三郎沖縄担当相は5日、自民党の県知事選候補として名前が挙がっている前宜野湾市長の佐喜真淳氏について、「全県選挙で32万票近くとったのは彼しかいない。もちろん名前は挙がる」と述べ、有力視した。那覇市内で記者団の取材に答えた。

琉球新報2022年2月6日配信

 つまり、前回の知事選と同じ組み合わせ。4年前とは「オール沖縄」の力関係がかなり変化しているが、やはり現職は強い。タイミングにもよるが、コロナ禍が一段落していれば、有権者の空気も今とは様変わりしているだろう。そこに、普天間基地の地元市の市長経験者が出てくるというのは、どうなのだろうか。基地移設の是非でガチンコ勝負となると思うが。

 西之表市馬毛島への米軍機訓練移転と自衛隊基地整備計画を巡り、八板俊輔市長が岸信夫防衛相と3日に面会した際に手渡した要望書が市ホームページで公開された。その後半部分の内容が、計画不同意から“容認”に転じたと市民に受け取られている。

 基地整備に伴う米軍再編交付金や自衛隊員の居住に「特段の配慮」を求める部分。幹部ら数人で推敲(すいこう)を重ね、極秘扱いだった。担当課以外の中堅・若手職員の一部も「突然の方針転換」と受け止めた。

南日本新聞2022年2月7日

 馬毛島の基地計画を巡って「反対」だったはずの市長がいつの間にか条件闘争をしていて、市民がひっくり返ったという顛末。米軍機の訓練とは要するにFCLPで、三宅島で企てられたNLPと同じ、空母艦載機離着陸訓練のことである。結局、日本人は自分たちの防衛の問題を自分たちで責任を持とうとはしない。沖縄に押し付け、本土の弱い自治体に押し付ける。


ほとんどの記事は無料で提供しております。ささやかなサポートをご希望の方はこちらからどうぞ。