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【れいわ】山本太郎衆院議員の辞職は政権党が喜ぶだけ【参院選】

 結論としては、山本太郎という政治家は一人しかいないということです。

 2021年10月の衆院選で、山本太郎は東京比例ブロックのれいわ新選組名簿1位で当選しました。つまり、「山本太郎」という名前で有権者に投票してもらったわけではありません。本人が記者会見で申している通り、れいわ新選組の議席は減りません。

 れいわ新選組は、山本太郎の個人政党です。山本太郎が全てです。ご存知の通り、れいわ新選組の街頭宣伝は山本太郎のワンマンショーです。彼がしゃべり出すと、自然と人が集まってきます。支持者だけではありません。彼のアジテーションはそれだけ人を引き込むのです。これをゲリラ的に全国各地で行い、政治の微風を起こします。あなどってはいけません。

 衆院議員であっても、同じことはできます。しかし、当然公務との兼ね合いで自由に全国を駆け回ることは難しいでしょう。参院選の比例区は全国一つです。日本の津々浦々に彼の声が届かないと、れいわ新選組の議席増は望めません。自分がマイクを握らないと、選挙に勝てないのです。

 同じことを、共産党がやったらどうでしょうか。党首である志位和夫委員長は比例代表南関東ブロックで当選しています。仮に夏の参院選で比例ブロックから立候補するとしましょう。名簿順位の2位である畑野君枝が繰り上げ当選となります。共産党ほどの支持基盤があれば、参院全国比例でも志位和夫は余裕で当選するでしょう。

 しかし、政治的インパクトはあるでしょうか。当然ながら、全くありません。

 自民党や公明党、立憲民主党、日本維新の会、いずれの政党も、そんなことしなくても議席を得ることができます。

 これはあくまで、ミニ政党に効果的な戦術でしかありません。

 比例区で議員辞職しても政党としては議席が減らない。衆院議員が任期途中で議席を投げ出し、参院選に立候補する。

 これを選挙制度の「抜け穴」と捉える人たちがいます。私は全くそうは思いません。選挙区、比例区、それぞれの特徴を利用した、小政党なりの戦い方でしかありません。それを道義的に良いか悪いかを判断するのは、あくまで有権者です。「党利党略」という批判もあるでしょう。しかし、選挙制度に欠陥があるわけではありません。

 こんなことで選挙制度に見直しが必要なら、まずは大政党に利する小選挙区制から根本的に見直すべきです。

 一方で、山本太郎のとった行動を英雄視する考え方にも賛同できません。人気者が選挙を椅子取りゲームにしてしまったために、国政も地方政治も劣化しているのです。都知事選が政策論争ではなく、ただの人気投票になってしまったのは、政治家たちの党利党略が原因です。結果として都知事はみんな自分の獲得した椅子に落ち着くことができず、都政は迷走を続けています。

 国会議員は、自分の任期に責任を持っていただきたい。どんな大義名分であれ、辞職すべき不祥事でも起こさない限り、ほとんどの任期を残したまま辞職することなど、許されていいはずがありません。発信力のある野党政治家が安易に議席を投げ出す行為は、政権党である自民党にとっては口には出さなくてもウェルカムに違いありません。また、マイノリティーの民意を反映させるのに有効なツールである「比例代表制」という選挙制度を「見直し」という名のもとに改悪につなげる口実にも悪用されかねません。

 山本太郎衆院議員は4月19日、衆院本会議で辞職を許可されました。いまだに参院選で、どの選挙区から立候補するか明言していません。彼にとって地域の課題などどうでもいい。参院選は、れいわ新選組という看板を掲げた国会の椅子取りゲームでしかないのです。それを無責任に大々的にメディアが報じて、ちょっとした炎上状態が起きるからこそ、彼はインパクトのある候補者としてどこかの選挙区に降臨します。

 結局、参院選はそういう大根役者の大立ち回りばかりが注目されるのだろうなと、ため息が出てしまいます。



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