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【自治トピックス】No.56

 毎年、江の島が目の前に見える片瀬東浜で初日の出を迎えている。日の出の時間は、晴れていれば午前6時50分ごろで、鉄道の終夜運転を利用しなくても近隣なら始発電車で間に合う。そういうこともあって、コロナ禍でも大勢の人が集まる。例年、初日の出にはアホが集まってくる。失礼な言い方だが、周りからすれば笑ってしまうしかないアホがいるものだ。例えば、極寒の海に飛び込むアホがいる。酔っ払っているのだろう。同行した仲間たちにあおられたのだろう。気温0度前後という寒さで、服を着たまま海に飛び込めば、凍えてしまう。それ以前に、砂浜に集まった何千、何万という群衆が極寒の中を静かに待っているのは、そんなアホを見たいからではない。ひとえに初日の出を拝みたいからだ。酔っ払いが海で暴れているなど、邪魔でしかない。ほのかに殺意もわく。そういう殺気を感じて、仲間たちが止めに入る。びしょ濡れの酔っ払いがガクブルと震えながら砂浜にうずくまる。絶景である。そんな光景は毎年見かけるが、なぜか今年はなかった。その代わり、これまたアホっぽい水上バイクが日の出ギリギリまでバカ騒ぎしていた。ひたすら初日の出をスマホのカメラにおさめたい群衆からは、ただひたすら邪魔でしかない。うるさいし、目障りである。水しぶきをあげて盛り上がっている彼等には、その殺気は届かない。幸い、彼らは日の出の時間が近づくと沖へと向かった。そういえば、今年は、国道134号線で渋滞に捕まった痛車を見かけなかった。ブロブロブロブロブロ…とエンジンを吹かしながら渋滞に捕まっている痛車ほど痛いものはない。かっこいいと思っているのは本人だけで、沿道の聴衆からはいい笑いものでしかない。

 江ノ電は2年連続で終夜運転を行わなかった。深夜、人影もない静寂に満ちた腰越商店街のど真ん中を満員の電車がコトコトと走る。その不思議な光景はもう見られないのだろうか。初日の出を迎えるまで、静寂と喧騒が混じった不思議な世界は、もう記憶のかなたである。

 さて、今年最初のニュースの切り抜きを始めよう。

 小池知事は「EVは各社が競い合うように生産販売しているが、インフラが整っているのか。先日(視察で)団地をみてきたが、駐車場には電気のコンセントさえない」と問題意識を述べ、「維持管理費用も原則全額補助で、一気にEVが必要とする環境を整えていく」と語った。

東京新聞2021年12月29日配信

――22年度予算の編成作業が大詰めを迎えています。どの分野に重点配分する方針ですか。
「新型コロナウイルスは我が国にとっての不都合な課題を洗い出した。その一つがDX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れだ。英北部グラスゴーで開催された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)においても、世界から見ると周回遅れの状況をさらすことになった。DXと脱炭素の波に遅れるわけにはいかない。22年度の予算ではデジタルとグリーンの分野で未来への投資を進める」

日本経済新聞2022年1月1日配信

 12月に入るとマスコミ各社のインタビュー依頼が都庁の報道課に集約される。時間は各社15分程度だろうか。知事には数日、取材集中日が設けられて、立て続けにインタビューを受けることになる。その成果が年末年始に知事インタビューとして紙面を飾る。とはいえ、中身はない。たった15分では詰め切れるものも詰め切れない。痛い質問にちゃんと答える人ではないから、話をはぐらかす。だが、そこを追及しようにも時間切れだ。

 それにしても、日経と東京、どちらも読めたものではない。中身がないにもほどがある。EV、温暖化、デジタル化など、ポスト五輪を意識した政策が打ち出されているが、次に進むには過去の清算が不可欠だ。誰か、築地市場跡地の再開発を聞かないのだろうか。東京五輪の赤字について質問しないのだろうか。

 東京都は2022年度、都内の新築一戸建て住宅の屋根に、太陽光発電設備の設置を義務付ける条例制定を目指す。国も義務化を検討したが、住宅価格上昇を懸念する声が強く、見送られた。都は地球温暖化対策には必要と考え、有識者検討会の議論を踏まえた中間まとめを、4月ごろに公表する方針だ。

東京新聞2022年1月3日配信

 知事取材のお土産だろうか。東京新聞らしからぬ提灯記事だ。例えば、大規模事業者が住宅開発を行うと、太陽光パネルが屋根に乗った住宅がずらりと並ぶ。いったい、いかほどの温暖化ガスを減らせるものなのか。

 米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)は30日、今月23日以降、米軍関係者75人が新型コロナウイルスに感染したと発表した。変異株「オミクロン株」の検査を行っているかどうかは明らかにしていない。全員が同基地内で隔離され、感染者に日本人従業員はいないという。同基地の感染者は80人となった。

読売新聞2021年12月30日配信

 一方、黒岩知事は、米海軍横須賀基地の感染者急増を受け、基地からの外出制限強化などの対策を日米両政府で講じるよう林外相と岸防衛相に要請した。

読売新聞2022年1月1日配信

 首都圏には複数の米軍基地がある。横田、厚木、横須賀など。当然、横須賀基地だけで感染者が出ているとは思えない。まだクラスターが発生していない基地では、基地の内外の出入りはどうなっているのだろうか。既報の通り、沖縄県ではダダ漏れだったわけで、首都圏の米軍基地は大丈夫とはならないことは念頭に置いておくべきだ。

 地域政党・大阪維新の会は、2023年春に予定されている大阪市長選の公認候補について、党内外から公募をしたうえで22年秋に予備選を行って決定する方向で調整している。予備選の方法は、市民対象の電話による世論調査で最も支持を集めた人を選ぶ案も浮上しているという。党の活性化や有権者の注目を集める狙いがあるが、内部には「人気投票になりかねない」との慎重論もある。

朝日新聞2021年12月30日配信

 朝日新聞は否定的な論調だが、私は首長選の候補者を「予備選」で決めるというスタイルは、他の党も採用すべきだと思う。例えば、都知事選の野党共闘の候補者はこれまで、野党幹部の密室談合で決めてきたものだ。とても民主的な決め方とは言えない。早い段階から立候補希望者同士が政策論戦を競い、支持者から信任を得た候補者が首長選に立候補する。米国大統領選挙でも行われている手法だし、自民党の総裁選もミニ予備選みたいなものだ。

 議会を長期欠席した議員への報酬に対し、減額規定を設けた条例を制定しているのが、47都道府県議会中約2割の9府県にとどまっていることが2日、産経新聞の取材で分かった。無免許運転の発覚後、東京都議会を長期欠席した木下富美子前都議=辞職=に議員報酬の支払いが続いていたことが問題視されたが、全国的には制定の機運が乏しく、条例適用にも高いハードルがある実態が浮かび上がった。

産経新聞2022年1月2日配信

 都議会での騒動をきっかけに議員報酬の減額規定の議論が全国に広がったというのに、肝心の東京で議論が進んでいないのは大草原…(笑)

 私は反対。有権者には4年に一度、選挙で審判を与える権利があるし、リコールという制度もある。

 性的少数者のカップルとその子どもらの関係を公的に認める「ファミリーシップ制度」の導入自治体によるオンラインサミットが27日、開かれた。東京都内では唯一制度を導入している足立区が参加し、現状の手応えや課題を共有した。

 サミットでは、その11自治体の首長や担当者が参加(3自治体は傍聴のみ)し、それぞれの制度の周知の方法や課題などを話した。足立区の近藤弥生区長は、区内で19組がパートナーシップを宣誓し、うち2組がファミリーシップ制度を利用したと説明。また、中高年のカップルの利用もあることから、今後は両親やお互いの介護を視野に入れた取り組みが必要だと指摘した。

朝日新聞2021年12月28日配信

 区議会で騒ぎのあった足立区がいつの間にか先進自治体みたいな顔をしているところが笑えるのだが、そこが〝やり手〟の近藤区長らしい。単に権利を認めるというだけではなくて、介護など家族機能の代替として受け止めているところが興味深いところだ。

 大阪府が庁内のIT関連業務を民営化させるため、民間企業と共同出資する新たな事業会社の立ち上げを検討していることが2日、関係者への取材で分かった。〝縦割り行政〟を新会社が打破し、システムの調達から開発、運用までを統合。コスト削減を図りつつ、好待遇での専門人材確保につなげ、民間に比べて遅れているデジタル改革を加速させるのが狙いだ。

産経新聞2022年1月3日配信

 最近、自治体のデジタル化の話題を見ていると、それは民間企業の仕事じゃないの?と思うことが多かったが、大阪府はついにIT関連業務を丸ごと民営化してしまい、新会社を設立しちゃおうと、振り子を振り切ってきた。都庁には「デジタルサービス局」が設置されているが、それらを政策立案・企画部門を除いてIT会社に投げてしまうわけだ。こうなると、デジタルに精通している振りをしていた役人は青ざめてしまうだろう。

 とはいえ、行政には行政本来の仕事がある。そこは忘れないでいただきたい。ブルーシートに寝ている人たちに「デジタル化」と言っても、空しいだけだ。

 「本当は名前を変えたくない、変えたくなかったとつぶやく人たちがいます」。制度化を願う高松市民の会(通称・ぼそぼその会)の山下紀子代表(49)は2021年12月16日、「選択的夫婦別姓制度の議論の活性化を求める意見書」の国会提出を求めて市議会委員会で意見を述べた。職場で旧姓使用が認められずつらい思いをした人。家の事情で名字を変えられなかったため夫に改姓させた人。どちらが姓を変えるか話し合いがなく、つらかった人。望まない改姓で精神的苦痛や社会的不利益を経験した当事者の声を代弁した。市議会の全会派が賛成を表明。同市議会で市民の陳情が採択されたのは14年ぶりだ。

毎日新聞2022年1月2日配信

 選択的夫婦別姓制度を導入して困る人はどこにもいないので、さっさと導入すべし。

 ただ、ネットのイデオロギー丸出しの罵り合いには何の意味もない。こうやって地方議会で相手の顔を見て話し合えば、ほとんどの議員は理解し合えるはずだ。同姓でなければ家族が崩壊するとか、日本の伝統がどうとか、武蔵野市の住民投票条例と同じで、都市伝説みたいな話でブレーキをかけるのは勘弁してもらいたいものだ。一方で、慎重派や反対派=右翼みたいなレッテルを張って、攻撃態勢に入ってしまうサヨク諸君にも自制を求めたい。SNSでの神学論争から離れて、顔の見える対話をしてほしいと思う。

 山本知事は群テレの幹部を念頭に「おそらくアニメを見たことがないんじゃないか。鬼滅の刃もワンピースも。世の中のトレンドやアニメの捉え方へのバランス感覚が多分ない。おそらく表現の自由みたいなことを考えたこともない」などと持論を展開。「トップマネジメントの恐るべき感性の鈍さにぼうぜんとした」とまくし立てた。

朝日新聞2021年12月28日配信

 知事が放送していいというなら、いったい誰が誰を忖度して放送を取りやめたのだろうか。むしろ、そっちの方が怖い。知事も事例に出した『鬼滅の刃』では、鬼の首は吹っ飛ぶし、人間がばったばったと死ぬ。それを子どもたちは普通に見ている。『ワンピース』に至っては、主人公は海賊だ。

 神奈川県大和市の大木哲市長(73)が職員へのパワーハラスメントを指摘され、本人が行為を否定している問題で、市議会の調査特別委員会は27日、管理職を対象にしたアンケート結果を公表した。「市長によるパワハラと捉えられる言動を直接受けた、もしくは、見聞きしたことがあるか」との質問に、回答者全体の約6割が「ある」「見聞きしたことがある」と答えた。

朝日新聞2021年12月28日配信

 やり手市長にはありがちなパワハラ疑惑。兵庫県明石市長の事例もある。そう受け止められたのであれば、素直に頭を下げればかっこいいが、市議会まで乗り出してきてしまうまでこじれさせるのは、危機管理能力の欠如だ。

 市は、江の島関連や源義経を主祭神として祭る白旗神社、大庭景親の館を太田道灌が改修し城郭としたと伝承される大庭城跡など市内8カ所を県が開設した「13人の御家人たち ゆかりの地めぐり」の特設ウェブページに掲載した。

 今後、市は市観光協会や鎌倉藤沢観光協議会、観光関連事業者と連携し、市内外の鎌倉幕府に関係するエリアを周遊するプロモーションなどを検討。鎌倉時代をはじめ、歴史に着目した観光コンテンツの充実を図る方針だ。

神奈川新聞2022年1月2日配信

 また人が増えるなあ…(遠い目)

 2001年12月に兵庫県明石市の大蔵海岸で、帰省中だった金月美帆ちゃん=当時(4)=が生き埋めになった砂浜陥没事故は30日、発生から丸20年を迎えた。同市の泉房穂市長が現場を訪れ、市民の安全を守り、事故の教訓を継承していくことを誓った。

 事故後に入庁した市職員は50・4%と半数を超え、組織内の教訓の継承が課題に。同じ01年に発生した歩道橋事故と砂浜陥没事故の記憶を風化させないため、市は7月21日を「市民安全の日」に制定。新人・若手職員が毎年現場を訪れているほか、「安全」の視点で日常業務に向き合う大切さを説く研修用の動画を今夏制作した。

神戸新聞2021年12月30日配信

 たった一つの事故を20年継承するのは非常に難しい。この場所は明石大橋を目の前にした風光明媚な海岸だが、花火大会での歩道橋将棋倒し事件もあって、事故の印象が強い。以前、訪れたことがある。普通に歩いていても、事故が起こるという怖さのある場所ではない。明石市は、職員の研修にも取り入れて、「安全」の視点で日常業務に向き合っている。これは他の自治体も参考にしてほしい。


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