見出し画像

国政野党の劣化で「都構想」住民投票は賛成が圧勝する

 こんなことを書くと反対派の方々からは怒られるだろうが、今回の住民投票は賛成派が圧勝すると思っている。私は、都区制度という理不尽な制度を導入することには反対だが、情勢は非常に悲観的に見ている。どんな太い鞭を打たれても、先のとんがったハイヒールで踏みつけられても、それが気持ちよいと泣いて喜ぶ人に、いくら痛いからやめたほうがいいと言ったところで無意味である。

 それでも、こうしてnoteで書き綴っているのは、賛成が多数になろうが、反対が多数になろうが、この都区制度論議が終わることはないからである。賛成が多数であれば、新しく設置される特別区は東京と同じような苦難の歴史を歩むことになるし、反対が多数であったとしても、維新の会は勝つまでじゃんけんを続けるに違いないからである。

 この議論は、都区制度が世界から消滅するまで続けなければならない。

本当に反対派は賛成派を「猛追」しているのか

 ABC朝日放送とJX通信社による世論調査では、賛成派が反対派をわずかに上回っていて、あたかも反対派が「猛追」しているかのように見える。

スクリーンショット (6296)

スクリーンショット (6297)

 確かにこう見ると、反対派が徐々に盛り返し、賛否の差を3.1ポイント差にまで縮めている。

 だが、思い出していただきたい。2019年4月の大阪府知事選・市長選のダブル選挙の情勢調査でも、差は僅差だった。

 府知事選では、前大阪市長の吉村洋文氏が知名度を生かし、自民党が擁立した元副知事の小西禎一氏を一歩リードしている。大阪市長選は、前知事の松井一郎氏と前大阪市議の柳本顕氏が競り合っている。

 では、結果はどうだったか。

スクリーンショット (6301)

スクリーンショット (6302)

 どちらも、維新の圧勝である。「一歩リード」「競り合い」という言葉がいかにむなしいことか。たまたま読売新聞の調査を例に挙げたが、報道機関はどこも似たようなものだった。公明党が腰を抜かして都構想賛成に回るのも仕方ないのかもしれない(笑)

 報道機関の情勢調査は、それはそれで正しかったのだろう。投票日の当日に調査するわけではないから、調査時には態度が不明だった有権者が投票したり、投票に行く予定がなかった人が投票所に足を運んだのかもしれない。最後まで悩んでいた有権者が投票日の朝に態度を決めたのかもしれない。

 選挙には往々にしてあるものだ。それぞれ僅差でつばぜり合いをしていても、ある瞬間、一気に勝ち馬に雪崩打つことがある。とりわけ、当選者が一人しかいない小選挙区や首長選にはありがちだ。

 昨日はこんなニュースも舞い込んだ。

 山口氏は梅田と難波、天王寺の大阪市内3カ所で維新代表の松井一郎市長、同代表代行の吉村洋文知事らと街宣車に立ち、幅広く支持を呼びかける予定だ。
 公明は前回反対派だったが、昨年の大阪府知事・大阪市長のダブル選で維新が圧勝した結果を受け、推進派に転じた。支持者らに反対意見が根強い中、挙党態勢をアピールし、理解を得る狙いがあるとみられる。

 党の代表が直々に来阪するのだから、尋常ではない。今回の住民投票で、公明党は賛成の姿勢を明確にしているが、党内では賛否が分かれている。

スクリーンショット (6298)

 党として賛成している公明党の支持層の半数弱が「反対」している。これはもう、党本部の代表が直々に支持者を前に〝お説教〟せねばなるまい。果たして支持母体の創価学会がどう票を取りまとめるのかわからないが、公明党は必ず勝ち馬に乗る政党だ。山口代表が街頭に立って、よもやの反対多数だったとしたら党中央の顔をつぶすことになる。必ず勝ちに来るだろう。

旧民主党勢力の劣化度合いが激しすぎる

 そして、何より気になるのは野党の動向だ。

 立憲民主党の公式Twitterが投降したイラストの品の悪さとKYぶりは尋常ではない。このステレオタイプな大阪のおばちゃんイメージ。大阪の住民投票でなにが問われているのかという点にはまったく触れていない。問答無用で印象操作に走るSNSの嫌な部分を見せつけられたような気分だ。

 当然のことながら、この投稿は都構想賛成派には格好のネタとなり、見事に大炎上した。

 複数の媒体がこれを取り上げているが、一番しっくりしたのは東スポさんだ。

別の50代女性は「賛成派も反対派もどっちもどっちやわ。『冷静に判断してほしい』とか言うてるけど、そんなどうでもええことで文句言い合っとらんと、誰でも分かるようにメリット・デメリットの話できるように考えたら? アンタら(政党)を一番解体してほしいわ」と双方をまとめてぶった斬った。

 結局、住民投票で問われる「大阪市廃止・特別区設置」とは関係のないところで炎上しているのだ。立憲民主党の投稿は何を伝えたいのか意味不明だし、それを取り上げて燃やしている人たちもしかりだ。

 立憲民主党のKYぶりは、これだけではない。

 原口一博衆院議員のTwitterでの投稿も、いったいなにをやっているのだろうかとあきれる。今回の住民投票で賛成が多数になったとしても、大阪府は「大阪都」にはならない。そもそも、そこは住民投票で問われていないのだ。

 今回の住民投票は、大阪市の廃止と特別区の設置という一点が問われている。それ以上でもそれ以下でもない。

 しかも、原口氏は東京都以外にも特別区が設置できる法律を制定した当時の民主党政権の当事者である。都構想に実現の道を開いたのは民主党政権だ。そのことに対する反省もなく、今さら問われてもいない「大阪都」のことをぶり返すKYぶりは、いったいなんなのだろうか。

 2015年当時、国政の民主党はまだ健在だった。その後、民進党と名前を変え、小池百合子率いる希望の党の挫折で、国民民主党と立憲民主党に分裂。旧民主党勢力でも都構想では賛否が分かれている。

 国民民主党の前原誠司代表代行、日本維新の会の馬場伸幸幹事長らは8日、地方分権に関する勉強会「新しい国のかたち協議会」を衆院議員会館で開いた。大阪市を廃止し特別区に再編する大阪都構想の住民投票(11月1日投開票)に賛成する決議を決定した。

 前原氏は以前から維新との連携を模索していて、民進党時代から国政選挙での共産党を含めた「野党共闘」に難色を示していた。彼の選挙区は京都1区で、共産党の牙城。自らの選挙を考えれば、共闘などあり得ないのはわからないでもない。ならば、自分が共闘しなければいいだけの話だが、維新にしっぽを振ったというわけだ。

 2020年都知事選で、前原氏はわざわざ東京まで維新推薦候補の応援に駆け付け、マイクを握った。おそらく都構想実現後は、維新に飲み込まれる存在なのだろう。

 2015年と比較すると、圧倒的に旧民主党勢力が劣化し、都構想賛成派と反対派に分裂し、大阪の反対運動の足を引っ張っている状態だ。

 もちろん、劣化しているのは旧民主党勢力だけではない。

住民投票は宇宙人か地球人かは問われていない

 発端は、11月1日実施の「大阪都構想」の是非を問う住民投票を前に、7日に読売テレビ「かんさい情報ネットten.」に松井一郎市長と、共産党の山中智子市議団長が出演。大阪では自民党と共産党が同じ方向を向いていることを聞かれると、山中氏は「この構想そのものが財源から財産から権限からむしり取ると言われた方もいましたが、そういうものなので、同じ地球に住む者が宇宙から侵略してきて支配すると言われたら、どの国も、自分たちは侵略されたくないというのは同じ思いだろう」と述べた。

 山中さん、それを言っちゃあ、おしまいよ(苦笑)

 共産党の野党共闘の方針は、各政党の目指すべき国の将来像が異なっていたとしても、目の前の国民の要求に一致して、団結しようという趣旨だったはずだ。だから、共産党と自民党が目指すべき自治体の将来像が異なっていたとしても、「大阪市廃止・特別区設置反対」という一致点があれば、お互い共闘しようということではないか。

 地球人だとか、宇宙人だとか、そんな話は必要ない。

 この住民投票は、維新政治に賛成している人も反対してもらわなければ反対多数にはできない。だから、反対派が安易に「維新vs既成勢力」という構図をつくってしまうと、それは維新の土俵に上がってしまうことになる。2019年のダブル選挙でもわかるが、それをやったら勝てるわけがないのだ。

 今回の住民投票は、維新政治が問われているわけではない。

 この場で口を酸っぱく繰り返しているが、住民投票で問われているのは、「大阪市廃止・特別区設置」である。

 立憲民主党の政治姿勢も、共産党の世界観も問われてはいない。もちろん、イソジン騒動の是非も問われていはいない。

 大阪市民のあるべき統治機構が問われているのだ。そこを正面突破してもらいたい。

 残念ながら、現在、反対派は維新の土俵に乗っけられていると言わざるを得ない。

 おそらく、18日に公明党の山口那津男代表が来阪することで、空気が変化するだろう。「猛追」「僅差」「賛否拮抗」というメディアの繰り出す適当な言葉に惑わされてはいけない。このままでは賛成派の圧勝を許すことになる。本当の勝負はこれからだ。



ほとんどの記事は無料で提供しております。ささやかなサポートをご希望の方はこちらからどうぞ。