注）画像は、まったく知らない人です

３８歳になった冬
僕はももひきを買った

汗っかきで暑がりな僕が
ももひきを買う日がくるなんて
３８歳の初秋まで思いもしなかった

じゃあ、どうして
ももひきを履こうと思ったの
当時、友人たちは首をかしげた

それは

ユニクロのヒートテック
という商品だった

まだ極暖はなかったが
テレビCMで人気のタレントさんが
ももひきとババシャツに袖を通していた

それまで俺の中のももひきは
最下層の負け組が身に着ける装備だと
思っていたから

人気のタレントが着た途端
格上げされたようだった

流行りに弱い僕は
催眠術にかかったように
ヒートテックを購入してしまった

案の定、世間では
ヒートテックはメガヒット

だがまだ、この時期のみんなは
俺ももひき履いてるんだ、とは
大ぴらにできていなかった

多くは隠れももひき中毒者だったのだ

それでもなお、ユニクロはCMを続け
ユーミン、サザン
俳優のみならず最高峰の有名人を起用した

ちょうど冷え性ブームの波にものって

日本の冬にヒートテックを
身に着けているのは当たり前
という場力を得たのだ

こうなるともう
ももひきを隠す必要がなくなる

むしろ

え？履いてないの
と反対に尋ねられてしまうくらいに
ももひきは成功者にのし上がったのだった

たしかに僕はもう
ももひきなしの人生なんて
考えられない

NO　MOMOHIKI　NO　WINTER

今週の月曜日
僕はももひきを履いた

数日前旅行に行った
大阪の暖かさに慣れてしまっていて
朝の氷点下は、キツかったからだ

１１月１３日
い(１) い(１) 意(１) 味(３)の日
僕のももひき記念日だ

言っておくことがある

ももひきは履いたら最後で
この先の人生、死ぬまで
履き続けなければならないし
シーズン初めに履いた時点で
そのシーズンが終わるまで
脱ぐことは許されない

糖尿や血圧の薬と一緒なのだ

ちなみに

ももひきはヒートテックだけではない
今では優れものが多数出ている
その優れた能力は個人差があり
合う合わないがあるのだ

例えば

乾燥肌の年寄りにヒートテックを着せると
痒くてひどいことになる
ヒートテックは水分を吸って
熱に変える仕組みらしく
乾燥肌の人には不向きらしい

施設のおばあちゃんにプレゼント
なんてヒートテックを渡して
乾燥肌が助長され
無意識で掻きむしってえらいことになる
なんてのは、施設あるあるだ

いずれにしても

日本はももひきに侵食された
ユニクロの支配下のもと
名前もレギンスと名を変えた

アミノパウダーやアルプス水みたいに
なんだか横文字でイケてるじゃん
みたいな認識で市民権を得たのだ

だが

どんなにカッコよくしても
あなたの着ているそれは、ももひきだ
おしゃれに言ってるようだが
それは、ババシャツだ

そうやって、旧式な概念を
１０年かけて払拭してきたのだろう

ここ最近の僕と言えば
小便の後、無意識でチョロっと漏れた感覚で
ナニのしまりが
悪くなったことを自認するのだった

ももひきがあって
被害が最小限になった

僕は、ホッとした