あべこべ

スマホが普及した現代、人気のない日本の端にあるような村にも少なからず影響はある。

冬はスキー場として、はたまた温泉街として栄える日本有数の観光地の村の住民の田中は夏場の仕事の無さ、景気の悪さにうんざりしていた。


夏場のある日、村の公共温泉でこんな話を耳にする。


「最近都会じゃ、脱毛なんてのが流行ってるんだって〜?」

「何だいそりゃ?」

「毛の多い男は野蛮だと言って顔に手や足、はたまた股間の毛なんかを専用の機械で無くしちまうらしいぜ?」

「都会の女は趣味悪くねえか?」

「そんなことはないだろ?想像してみろ?」

「なんだい?」

「コイツァ綺麗だと思った女を長年の努力。やっとの思いで肌を重ねる。」

「そんないい話あるか?」

「うるせえ、そいで女を布団に横にした時に、あちらこちらからジャングルの様な毛が生えてたらどう思う?」

「そいつぁ最悪だ。脱いだ時に毛の多い女はなぜか興奮しねぇ!毛なんて汚らしいもんせめて剃るなりなんなりしておいてくれよぉ?」

「女も同じこと思ってるんだ」

「なるほどなぁ。 よし、あがるか」

「ちゃんと毛剃ってからな」

「うるせえ」


こんな会話を聞いていた田中は閃いた。

こんな外れの村じゃそんな店あるはずがない。都会と比べる事もない!これだ!これで夏場もなんとかやりくり出来る!!! 


何かを閃いた田中は機材を揃え、冬場は観光業、夏場は脱毛サロンとして家計をやりくりするために店を開く。

看板には大きくこんな文字

「時代は変わる。ジャングル男はもうモテない。


脱毛サロン田中 オープン」


物珍しさに村人はこぞって集まった。そうして田中は村中の男の体全身の毛を無くし夏場を乗り切った。

そんな外れの村で毛のないスッキリとした空気を味わうことなんてなかなかできない。

村人はこぞって彼に

「いい腕してるねぇ〜スッキリ感がたまらなくて通っちまったよ。毎回シャンプーなんかもしてくれてありがとなぁ。ここのシャンプーがまたいいんだ。外に出た時の快感が最高なんだが、これでもう最後の施術だったか?ありがとなぁ。」

田中は村で評判の脱毛サロンとなったが、村人の毛はもう生えてこない。これはまずい。とはならない、田中はこれも計算の内。

その次の年、看板の文字はこう入れ替わっていた


「そこのハゲ!毛なし金なしの男に誰が寄ってくる!これで女をおもてなし


育毛サロン田中 オープン」

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