今朝見つけた昔の日記

Parisから帰国した。

今回は2020SSコレクションの展示会だった。4日間に50社程のバイヤーやファッションディレクター、ジャーナリスト、キュレーターなどと会いファッションを色々な側面から見つめて話し合う忙しく充実した時間だった。

着いた翌日はいつもバスク人の友人と設営をする。マレに借りた倉庫からラックや鏡、テーブルなどショールームに必要な全ての備品を運び出し組み立てていく。運搬の道中には彼のビジネスやフランスの政策、parisの変化について彼の止まらないトークに便乗する。運転は荒い。何気ない話だが、外国人としてparisに住む事の難しさや客観的視点を持つからこそ見える今のこの街の姿を彼の口から聞ける事は楽しい(たまに出るバスクの話も面白い)。業者に頼めばそれまでだが、こういうローカルな話題をカーステから流れるスペイン語のポップ・ミュージックをバックに聴くのにはまた一種の趣があると僕は思っている。

年にプレ・メインと4回Parisで展示会をしていると3ヶ月おきに各国のバイヤーに会う事になる。地元の友人よりも密な間隔だ。そうなると毎回のコレクションを買い付けてもらっているというよりも、同じチームで今のファッションを検証している様な感覚になる。これだけ密なので彼らもストレートに思いを述べるし、自分は洋服で物を言う。つまり自分たちがファッションを通して社会とそしてファッションの社会に対してどういうスタンスを取って行くのか、そんな話をしている様だ。

どれだけ買ってもらえるかは大事だが、僕がもっと重要だと思っている事はファッションの世界にいて自分が意見を持つという事。ブランド(つまりはデザイナー)が意見を持たなくなればリテールには商品がモノとしてただ並ぶ事になる。それでは遅かれ早かれバイヤーはそのブランドの必要性を感じなくなるだろう。そしてその意見というのはディテールに向けたものではなく、そのディテールが映し出す女性に向けたものであるべきだ。そして女性をインテレクチュアルにもてなしたければ、自ずとこちらにも知性を求められる事になる。


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