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  4-⑯ 大僧正

「お願いします!来年の3月中旬まで、ここで修行をさせてください!」

 12月中旬•••彼の姿は高野山金剛峯寺にあった。深山の奥に開かれた、真言密教の総本山である。
 山上には寺院、宿坊、公園、学校•••門前町が広がっている。
 四国霊場八十八ヶ所を回り、スタート地点を巡礼し円を結び、ここ金剛峯寺にお礼参りをする事が、真の意味での結願なのだ。

 彼は10月中旬に1番札所をスタートし
、不思議な一期一会を積み重ね 1400キロを踏破、八十八番札所に辿り着き、一番札所で円を結んだ後に和歌山に移動、南海高野山線に乗り、ここ金剛峯寺に辿り着いた。

 彼は必死であった。
彼には、どうしてもあと3回、通し遍路をしなければならない理由があった。
 天国で眠る師匠、決着をつけずに天国に行ってしまったライバル。最愛の人と
、生まれてくるはずだった小さな命•••そして、自分自身の為に。

 平身低頭の彼の前に、1人の威厳に満ち溢れた高僧が現れた。
 座主でもある大僧正であった。

 金剛峯寺の頂点に君臨する最高位のその人であった。


「顔を上げなさい」
暖かさと厳しさも感じさせるその声音が
、僧堂に凛と響き渡った。   

 大僧正はその慈悲深い眼差しで、しかと彼を見つめた。そんな彼もまた負けじと、最高位であるその人を真摯に見つめ返した。
 大僧正の瞳は、この世の全てを、全てのものを見通すかのように透き通っていた。

 彼の心の葛藤を、苦難を抱えながらも
、それでも必死に生きようとしている、その真摯な眼差しに何かを感じ取ったのだろう、大僧正は優しく包み込むような笑顔を見せた。

「よろしい。今日からここで心の修行をしなさい」

 薄曇りの空から、ふわりと落ちてくるものがあった。本格的な冬の始まりであった。

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 彼は土佐湾沿いを南下していた。
全長1.6キロのトンネルを、遍路道を横切って建設された高速道路の真下を、大雨で荒れに荒れた峠道を、多くの人々の汗が染み込んだ遍路道を歩き続けた。

 ここ数日の寒暖の差で、体への疲労蓄積の度合いが激しい。それでも、80キロ先の足摺岬の先端に建つ三十八番札所を目指し、歩みを進める。

 小休止の為、道路沿いの屋根の付いたベンチで座っていると、若いカップルを乗せた車が目の前で停車した。
 車を降りた2人から、
「お疲れ様です!」と、声を掛けられ、
経口補水液2本とウェダーインゼリーのお接待を受けた。車で遍路旅をしているカップルであった。

 彼は頭を下げ、3回祈りを唱えてから
、納め札を渡した。

「大切にします」と言い、2人は頭を下げてそれぞれのご朱印帳の中に収めた。

「お気をつけて!」

 温かい言葉を掛けてくれたカップルを乗せた車が完全に見えなくなるまで、彼は2人を見送った。

 不思議なご縁を重ね、ふたたび歩き続ける。

 円を結びながら、縦にも横にも絡まり合う縁を、彼は実感していた。

雪に染まる金剛峯寺。


 PS•••いつもお目に留めて頂き、心より感謝申し上げます🥹🙏次回配信は2月10日土曜日午前8時です🕗翔馬を陰で支える住職、そして仲間達の想いが翔馬に届きますように🙏そして、天国からの使者が🦋そして、彼の背中を照らす光が✨

 それではまたお会いしましょう!

         AKIRARIKA

🐴💨🔥🐴💨🔥🐴💨🔥🐴💨🔥🐴💨🔥

      🐴おまけ🐴

ギリギリでした😅
2センチ⁉︎

 クラシック戦線真っ只中、私の一推し
ビザンチンドリームが薄氷を履む、ギリギリの勝利を掴みました🏆😅あの位置から差し切るとは😱😰賞金を加算できた事で、どのようなローテを組むのか注目されますが、皐月賞直行でしょうね!明らかに中山コース向きではないので、皐月賞は取りこぼす可能性がありますが😅、東京コースなら、今週共同通信杯に出走のエコロヴァルツと最強牝馬レガレイラとの直接対決に勝てる可能性が🔥🔥楽しみです😊😊

一騎打ちかなあ?

 ジャンタルマンタル、マイラーじゃないのかなあ?😅😅


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