世紀の一戦の決着は写真判定に委ねられた。
　全馬が検量室前に戻ってきた。
愛馬の健闘を称えながら、関係者がその結末を見守っていた。

「お疲れさん！手に汗握るグッドレース！まだ心臓がバクバクしとるわ！さて、どないなるのやら?」　　
　朝日師が笑みを浮かべて、ゲメインシャフトと翔馬を迎えた。

「届いたと思いますよ！ギリギリ！」

　サックス師はサムズアップをして、ヴァイオレットエヴァーガーデンと未来を迎えた。
「Good Race！Rising sun MIRAI！&  You are strong horse！」

　2人はがっちりと握手を交わした。

　ラーヴルもB・バシュロンも、僅かに及ばなかった事を確信しているのか？悔しげな表情を見せている。しかし、全力を尽くした男達から、やがて笑みが溢れた
。

「今日は、彼ら2人に神の光のご加護があったのかな？」
　ロッシの言葉に何かを察したのか、森永師が続けた。

「ええ。そのようですね。神の光です」
2人は満足気な様子で、好敵手と認め合う2人を見つめていた。

　スタンドは静寂に包まれている。
これほどまでに長い写真判定は、英国競馬史にも例がないであろうと、実況アナウンサーが伝えていた。

　20分が経過した。
人々はただただ、世紀の1戦の結末を見守るばかりであった。

　全馬がゴールを駆け抜ける事25分後、スタンドが大きく揺れた。

　静寂が破られたのだった。

　興奮の洪水が世界を支配した。
歓声がどよめきの波となり、競馬場すべてを包み込んだ。

「・･・･・･」
「･・･・･・」
　2人は顔を見合わせた。
7年前にタイムスリップしたのか？いや、これは現実だ。

　翔馬は何度も目をこすり、瞬かせ、それでも変わっていない掲示板を見つめている。

　未来は、惚けたような表情で掲示板を見つめ、やがて、これが現実と理解したのか、睨みを効かせて言った。

「おい！どうしてくれるんだよ！英国まで来て引き分けかよ！トロフィーだって、優勝レイだって、記念馬服だって、1つしかないんだぜ！」
　翔馬は笑った。

「それはこっちのセリフだ！間違いなく差したと思ったのに・･・」

「中途半端な事すんじゃね〜！」

　いや･・･2人ともあまりに長い写真判定に嫌な予感がしていたのだ。まさに予感
的中。英国G1レース史上4度目の2頭同着優勝である。

　主催者はてんてこ舞い・･・その混乱ぶりは想像がつくであろう。そう・･・未来の言う通り、全てが1頭の為だけにあるのだから。

　ヴァイオレットエヴァーガーデンのB・サックス師が朝日師と握手を交わした。

「やあタイセイ、おめでとう！キミが若かりし頃、父の厩舎で研修していた時、オレと約束したよな！いつか英国でG1勝てよって！何で調教師になってからで、しかもこのレースでって、嫌がらせかい
⁉︎」

　サックス師の軽口に、周りにいた他のジョッキーや調教師、オーナーから笑いの渦が巻き起こり、激闘を終えたホースマン達の、国境を越えた新たな友情が芽生えたのであった。

　表彰式は盛大なものとなった。
激戦を戦った2頭が、互いに威嚇をしながらも中央に収まり、その勇姿を誇らしげに世界に見せつけている。まさに、両雄並び立つ、であろうか。

　右にヴァイオレットエヴァーガーデンの関係者、左にゲメインシャフトの関係者が並び、主催者の依頼もあり、翔馬と未来が2頭の前に立ち膝で、優勝馬に与えられる記念馬服を広げた。

　満場から、これ以上ない声援と拍手が起こり、やがて自然発生的にシュプレヒコールが沸き上がった。

「ショーマ！ミライ！ショーマ！ミライ！ショーマ！ミライ！･・･」

　2人は固く握手を交わした。
「次はどこだろうな？」未来が言った。
翔馬は少し考えて、
「フランスは来ないんだよな?」と聞いた。
「さて・･・どうしようかな?」未来が、意味ありげに笑う。
「ん?お前何か隠してないよな?」
「いや別に。ただ、フランスはお前のホームだからな。圧倒的に不利だろ?」
　RIZING SUNが何を言ってるんだ！翔馬は笑った。

「まあ・･・どこででも会えるさ！馬に乗っている限りな！」

　2人は、金色の光を輝かせている2つの背中を見つめていた。そして、その背中に祈りを捧げる。

〝どうか、彼らに栄光がありますように。そして、彼らの夢が叶いますように〟と。

　PS・･・いつもお目に留めて頂き、心より感謝申し上げます🥹🥲次回配信は11月4日土曜日午前8時です。切磋琢磨し合う2人、進撃はまだまだ続きます🐴💨🔥
　しかしながら、イクイノックス･・･まさに怪物😅圧倒しました💪次走JCの予定！リバティアイランドとの一騎打ちか?楽しみですね😊それではまた👋👋

　　　　　　　　　AKIRARIKA

🐴💨🐴💨🐴💨🐴💨🐴💨🐴💨🐴💨🐴