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読書後の感想|罪の声

「きょうとへむかって、いちごうせんを……」
額から流れ出る汗に気づかず、俊也は天を仰いだ。
これは、自分の声だ。         

プロローグより

人気映画の原作。映画は日本アカデミー賞でも賞をもらっていた。本の実物を書店で見ると、主演の小栗 旬と星野 源の二人の写真が表紙となり、それがなかなかカッコよく、つい購入意欲を刺激され手に取った。しかしページをめくると!?

 

ある日、京都でテーラーを営む曽根 俊也は、自宅で古びた手帳とカセットテープを発見する。読めない文字が詰まった手帳からはわずかに「ギンガ」と「萬堂」という言葉が読めた。カセットテープを聞いてみると、子供の頃の自分声が録音されていた。しかしそれは31年前に起きた未解決事件、通称「ギンガ・萬堂事件」の犯罪に使用された音声だった――!!

 

 ズバリあの戦後最大の未解決事件「グリコ・森永事件」をもとにした、犯人が使用した「罪の声」の本人であり真実を知りたい曽根 俊也と、新聞の特集記事として事件を追うことになる主役の阿久津 英士は、互いに違うきっかけで、小説中の昭和の未解決事件「ギンガ・萬堂」事件を探ることになる。それぞれ違う角度から事件に少しずつ迫っていくが、やがて俊也は同様に事件を追う阿久津の存在を知り、自分のことを知られることを怖れるようになる。阿久津はその人脈と直感で、当時の警察の捜査、株の売買、闇の人間関係と追い求め、俊也に近づく。だがそれは、事件の真相と犯人グループ「くら魔天狗」の内部事情に迫ることでもあった。

 もともと人気があって映画化した作品だが、ノーマークだった。まぁたまにはいいかと、つい買って読んでみたが、予想以上の大当たりだった。調べる漢字は多かったが、読みやすく、テンポよく進行し展開に目が離せなくなるほど面白かった。作品中、事件のために犠牲になってしまった「罪の声」の持ち主(俊也ではない)の告白・感動の再開と涙を誘うシーンもあったが、さすがに泣けなかった。しかし最後に著者が語っているが、モデルにした「グリコ・森永事件」の発生日時、場所、犯人グループの脅迫・挑戦状の内容、その後の事件報道について、極力史実通りに再現したとのことで、とてもリアルで真実味があった。あらためて事件について知ることも多々あった。「子供を巻き込んだ事件」の結末という著者の想いも伝わった。機会があったら「グリコ・森永事件」についても調べて比較してみたい。

内容もよかったが、テーマにも好感が持て、物語がよくまとまっていて全体の完成度も高い良作。

読んだ後、読み進めながらイメージした小栗 旬と星野 源以外のキャストは、映画では誰がどう演じているか楽しみにして観たが、映画は映画でとてもよくできていて面白かった。

また著者の別の作品も読んでみたい!


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