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正しい課題の特定

バスケでも仕事でも失敗することがある。失敗にもいろいろあるのだが、どの段階で躓いているのか?をしっかり見極めて、指導しないと的外れになる。ぶつかっている課題を特定して、その課題にあった解決策(練習)をしないと、どんなに指導や練習をしても上達しない。

バスケで少し具体的な例を説明する。試合中に、頻繁に不用意なパスをしてパスカットをされる子がいる。この時に「パスフェイクを選択肢に入れて!」と指導するのは適切だろうか? もちろん、パスフェイクを選択肢に入れていないことも課題ではるが、そこが指導ポイントだろうか?

解くべき問題を特定することの重要性

イシューからはじめよ

慶應義塾大学教授の安宅和人氏が書かれた「イシューからはじめよ」は問題解決の名著である。英語のイシュー(Issue)は「解くべき課題」を意味している。同書では、良い課題解決のためには、解くべき課題を特定して最適な解決策で解かなければならない。と説かれている。良い課題でなければ、どんなに良い解決策をほどこして、インパクトのある課題解決にならず、それは「犬の道」と述べられている。正に課題解決は初手である「解くべき課題の特定」が最も大切と考える。

イシューからはじめよ 安宅和人 英治出版(2010/11)より加筆修正

ダブルダイヤモンド思考

デザイン思考の「ダブルダイヤモンド思考」というのがある。「イシューからはじめよ」と同じように「課題の発見」と「解決策の発見」のプロセスを明確に2つの段階に分けた思考法である。さらに「発散」と「収束」のプロセスを追加して、何をすべきかを具体化した点が特徴である。
「発散」と「収束」をもう少し説明する。最初の「正しい課題を見つける」プロセスでは、起点となる課題から「発散」させて幅広く課題の洗い出しをおこなった後に、何が課題の本質なのか?に「収束」させるために、解くべき課題を絞り込んでいく。解くべき課題が特定できれば、今度は「正しい解決策を見つける」プロセスになる。同じく、解決策一発で特定してしまうのでなく「発散」させて幅広く解決策を洗い出す。その後に、最良の解決策に絞り込んで「収束」させていくというアプローチである。発散と収束を2回行うので、その概念図が2つの菱形になることから「ダブルダイヤモンド思考」と呼ばれている。

 ダブルダイヤモンド思考

課題解決の議論をする際に「課題の議論」と「解決策の議論」を混ぜて話てしまうことがある。「課題の議論」をせずに、声の大きい人が解決策を決めつけてしまう場合もあるだろう。もちろん経験則から最適な解決策を特定できることもあるのだが、整理して思考することで、より効果的に問題解決ができる。発散と収束を意識しながら分けて議論できない人も多い。発散の時に他者の意見を否定することで発散を抑制したり、収束段階で更に発散したりなど。もちろん、プロセスに縛ら過ぎて、画期的な視点や違和感を抑制してしまうのはもったいないし、さっと議論したい時などは明確に分離して議論する方が効率が悪い。しかし、議論の際に「発散」と「収束」のどちらの議論をしているのか?を意識することは、安定した議論をするコツの1つである。チームや会社の中で、関係者の意見を4つのプロセスに分離して議論できると、皆の合意や共通認識を得やすくなるメリットもある。

新規事業開発の思考法

リクルートの新規事業開発では、社会の「不」を見つけてビジネスとして解決するアプローチを取っている。くらたまなぶ氏の「リクルート『創刊男』の大ヒット発想術」で説明されている。「不」とは「不満」「不安」「不便」「不完全」「不利」などのネガティブな事象を指す表現である。そのまま「課題」と考えてもらって良い。当然、筋の良い「不」や「課題 」に取り組まなければ、どんなに良い解決策のサービスを提供しても、筋の良いビジネスにはならない。リクルートの新規事業提案制度の「Ring」において、ダブルダイヤモンド思考をベースにして新規事業を考えるように推奨しており、検討資料やワークショップで繰り返し紹介している。もちろん、この思考法は、新規事業に限らず、通常のビジネスにおける問題解決の思考には有効な考え方だ。

解くべき課題の特定の難しさ

冒頭の頻繁にパスカットをされる話に戻る。パスカットされる事象は表面的な課題である。これを課題と設定して、子供達に「パスカットされないようにしろ!」と裏返しの指示しても意味をなさない。なぜなら、パスカットされようと思ってパスをしている子はいないからだ。表面的な事象の指摘やそれを裏返してやらないように伝えるアドバイスは余り意味がない。
では、前述の通り「パスフェイク」を入れていないことが課題だろうか?「パスフェイク」を入れることは、前述のアドバイスよりも具体的な指示である。だから子供達も「パスフェイクを入れること」を選択しようと考えて、試すことができる。ところが、今度は毎回パスフェイクを入れると、パスフェイクが相手にバレてしまう。その課題が出てきたら「もっと思い切ってパスを出せ」と指導してしまえば、場当たり的なアドバイスになってしまう。そうなると、子供達は混乱してなかなか上達しない。これは、課題を特定せずに解決策を提示している例と言える。
以上の様に、特定の解決策を指導するよりも先に「何が本当の課題をなのか?」を考える必要がある。それを選手や部下との間、チームや組織であればアシスタントコーチ間や同僚との間で認識を揃えておく必要がある。

課題を広く捉える方法

経験豊富な指導者であれば、すぐに解決すべき課題を特定して、それを正す指導法やアドバイスができる。もちろん、そのような指導者に教えを請うとうのもあるが、そのような環境でない場合も多いだろう。
スポーツのプレーの議論であれば、過去の知見から課題がパターン化されていたり、指導方法が確立できていることがある。しかし、スポーツであっても「チームワーク」や「目標設定」などのプレー以外の課題であれば、幅広く議論する必要がある。ビジネスでは多様な問題が起きるので自ら思考して課題を特定しなけばならない。更に、新規事業開発やベンチャービジネスでは、ユニークな価値提供をする必要があるので、まだ誰も気づいていない独自課題を見つけることが不可欠であり、ゼロから自力で考えなければ意味がない。

1)ブレイン・ストーミング

では、どうすべきか?というと、ダブルダイヤモンド思考で説明した通り、課題を「発散」させることである。発散とは、アイデアをたくさん出すことである。この段階では、それは違うだろう?などを考えずに、たくさん出すことだけに集中すれば良い。
その点で、一人で考えるよりも、複数人で考えることが有効である。ビジネスでは「ブレーン・ストーミング(以下、ブレストと呼ぶ)」といって、脳内に嵐を起こさせて、たくさん思いつきアイデアを出すという思考法がある。
ブレストでは、他人の意見を否定しないことが最大のルールである。他人の話に乗っかっても良いし、あえて他人の話の流れを変えてしまっても良い。参加者は、たくさんアイデアを、この場合課題を出すことが重要となる。たくさん出すために、1人が長く話すのではなく短く説明して、より多くの人に、より多くの意見を出してもらうことを意識する必要がある。「発散」のプロセスは多様性が活きるところだ。同僚やアシスタントコーチにも参加してもらい多数で多様な意見を出し合うのが良い。同じような思考の人ではなく、全く違う思考をする人を混ぜるのが良い。ちょっとぐらい変な発言をしたり、変な考え方をする人に参加してもらうことが良い。議論ができるならば選手である子供たちを入れることも有効かもしれない。

2)KJ法|グループ分けをする

「ブレスト」は、思考の幅を広げて、多様な観点での課題の抽出に有効なのだが、果たしてこれで十分なのか?が分かりづらい。どんなに意識していても、参加者の思考や議論が偏ってしまうのが普通である。声が大きい人や話が長い人、話が上手な人に偏ってしまう。そこで、出てきたアイデアを付箋紙などに書いて、それらをグループ分けをすることが有効である。グループ分けは「KJ法」と言われるアプローチである。KJ法は「収束」のプロセスでもあるが、ブレストの途中で入れることで、発散のヌケモレを見つけるために有効である。ブレストをして、KJ法でグルーピングして、そのグループ分けをきっかけに、またブレストで発散させると議論の網羅性が上がっていく。

3)強制的に発散させて考える

ブレストやKJ法によって、アイデアを発散させるプロセスは慣れている人には容易ではあるが、慣れていないとなかなか発言できない。全員が不慣れだと全く議論が盛り上がらない。また、ブレストでは声の大きな人、話のうまい人、発想力がある人が喋りすぎてしまう問題もある。そのための工夫として2つを紹介したい。
1つ目は、ブレストの初段に個人ワークの時間を取り、参加者が独立して自分の考えを準備する方法だ。例えば、一人が5つの課題を考え、それそれを1枚の付箋紙に書き出す。この時、他の参加者とは会話せずに個人でワークに取り組む。個人ワークの時間を取った後に、発表をしながらブレストをスタートさせる方法だ。これにより、アイデアの発散効果と同時に、参加者の参加感も醸成でき、先々の納得感や当事者意識を高めることができる。
2つ目は、マンダラートだ。9x9のマスのシートを準備して、それを埋めようとすることで、強制的に発想を広げるアプローチ方法である。メジャーリーガーの大谷翔平選手が、この「マンダラート」を使って野球選手としての目標設定をして有名になった思考法だ。「マンダラート」は、まず、9x9マスのシートの中央のマスに目的を記す。次に、その周辺の8マスにそれを実現するために必要な要素を書き出す。最後に、それらを実現するために必要な要素を残りのマスに書き出す。これによって、より具体的な要素を抽出するアプローチだ。大谷選手のマンダラートの例では、なりたい目標を設定して、それを実現するための64個の具体的な行動を書き出したことになる。リクルートの新規事業提案制度のRingでは、事業アイデアを考えるための最初の1歩として「マンダラート」を使った発想法を紹介しており、多くの社員が活用している。

4)フレームワークで網羅性を高める

ブレーンストーミングとKJ法を使うアプローチは、全く分からない状況から課題は何か?を考える時に、既存の考え方にとらわれないために、非常に有効なアプローチである。しかし、理論が整理されている分野では、すでにある整理方法(フレームワーク)を利用するのが有効だ。

■ゲームモデル

日本バスケット連盟(JBA)から「ゲームモデル」というフレーワークが提示されている。攻撃開始からシュートまでに、①トランジション、②クリエイト、③チャンス、④ブレイク、⑤フィニッシュというプロセスで分解されていいるという整理だ。チームプレーにおける課題特定では、これらを使うのは有効であり、他のスポーツでも活用できそうである。(参考)http://www.japanbasketball.jp/wp-content/uploads/01_U12-Block-DC2022-01.pdf

■プレイヤーのスキル

また、前述のバスケのパスカットされる問題に戻る。これはプレイヤー個人のスキルの課題と言えるので、一連のプレーをプロセスで分解したフレームワークが使えるだろう。基本的にスポーツでは、目や耳で状況を把握して、頭で考えて、手足を動かして実行するというプロセスを繰り返している。例えば、以下の様に整理して、どこのプロセスに課題があるかを考えることができる。
 ①状況の認知力
 ②選択肢の判断力
 ③正確な実行力

パスカットの例では、パスフェイクを具体的な指導としたが、この場合は、②の「選択肢の判断力」において「パスフェイク」を選択肢として意識できていないという課題と設定したと言える。②の判断力は「広い選択肢の把握」と「適切な選択」に分かれるだろう。広い選択肢でいうと「パスフェイク」だけでなく「バウンド・パス」「フレア・パス」などの選択肢を把握できていないことも課題かもしれない。
②の「選択肢の把握」から離れて、④の「正確な実行力」で考えると、パスが弱いのでカットされるたり、受けるが走っている先にリードパスができていないのでパスが通らないのかもしれない。①の「状況の認知」で考えると、相手のディフェンスの位置が見えていないかもしれない。そもそも、見ようとしていないのかもしれない。既存のフレームワークを利用することで、幅広く考えられる課題を把握することができる。

■「見立てる」「仕立てる」「動かす」

似たようなフレームワークがリクルートで使われている。リクルートでは従業員の個人のスキルを分解して整理するために、以下のフレームが使っている。
 ①見立てる力
 ②仕立てる力
 ③動かす力
上述したスポーツの一連の動きのプロセスを表したフレームワークと似ている。リクルートでは従業員の強み・弱みを整理することに使い、研修もフレームワークに沿って準備されている。そのため、マネジャーはメンバーを育成する時に、「この点が弱いよね」と整理して共通認識を作り、適切な研修や指導を選んでいる。詳しくは以下の投稿を読んでもらうと良い。

課題を特定する方法

ダブルダイヤモンド思考でいうと1つ目の収束は、課題の絞り込みである。実際には、これは非常に難しい。見当違いの課題を解くべき課題として設定してしまうこともある。実際にはやってみないと分からないということが多い。新規事業やベンチャービジネスが、たくさんの挑戦と失敗の上に、成功方法が見つかるという生態系からも難しさが想像できる。そのため、解くべき課題を特定するための画期的な方法はないが、4つの視点を示したい。

1)細かく分ける

スポーツでも仕事でも、うまくいく時と行かない時がある場合がある。どういう時はうまくいくのか?いかないのか?を細かく分けて把握すると、うまく行かないないパターンを把握できる。課題があると思っていても、課題がおこならない時があるとすると、解像度を高くして細かく分けることで、課題を特定できることがある。バスケで言うと、バックコートなのか?フロントコートなのか?サイドライン際か?などの「場所の分解」がある。試合開始直後なのか?後半なのか?朝一番の試合だけか?などの「時間の分解」もあり得る。当然、「人の分解」もあり得る。マッチアップ相手の背の高さなど、相手もあるし、コート上の味方の組み合わせもある。ここでもフレームワークを使って分解することが有効である。このようにシチュエーションを分解して、失敗が起こる課題を特定しやすくなる。
ビジネスではシチュエーションではなくお客さんを分解して解像度を上げることが多い。商品を買ってくれるお客さんと、買ってくれないお客さんがいる。何も考えずに、お客さんにぶつけていくと、確率的なガチャとおなじになってしまう。少しでも買ってくれるお客さんを見つけるには、お客さんを分けて狙い撃ちをした方が効率が良い。消費者であれば、年齢、性別、地域などもあるだろうし、家族構成やライフスタイルの違いもある。法人顧客であっても、従業員数や成長率や業種でも分類できる。社長の年齢や後継者の有無など、提供するサービスによって有効な分類方法があるだろう。これを「セグメンテーション」と呼ぶ。狙うべき顧客の解像度を高める思考方法である。

2)データで確認する

スポーツに戻ると、同様の問題として、コーチの直感や思い込みで評価してしまうことがある。直感や思い込みも事実の把握ではない。最近、シュートが決まっていないという評価をする時、データを収集して統計的に評価するべきである。直感や思い込みで正しい課題を特定できることもあり得るが、数値がないと説得力が下がり、指摘を受けた本人の納得感も不十分にになる。良くなってきたとか、最近が悪くなったなどの評価は、具体的に◯%良いとか、◯%下がっているとか具体的な数字で示すべきである。
私のミニバスチームでは、毎回の練習で、フリースローや1分間シュートをおこなっているが、その成功率を計算して、折れ線グラフで見える化している。小学生だと、すぐに割り算ができないとか、帰ってからスマホで計算するとしがちだが、その場ですぐに成功率が分かるように、試投数と成功数で割り算ができる表を体育館に準備しておおき、その場でグラフ化するまでさせている。それのデータを確認することで、事実として成長を把握できるし、小学生だと保護者の方に見てもらい、褒めてもらったり励ましてもらったりする効能がある。

3)観察で把握する

とはいえ正確にデータを取ることができないケースも多い。できたとしても、全てのデータを把握することは時間的にもコスト的にも合わないかもしれない。その場合は、トラブルが起きている事象をしっかり「観察する」ことが大切である。パスカットの選手の場合も、幅広く考えられる課題を広げた後に、本人の動きをビデオで確認すると、パスのモーションが大きいことで、相手に予測さてしまっていることに気づけたら、問題は①状況の認知力や②選択肢の判断力ではなく、③正確な実行力に課題があると絞れる。モーションが大きい子と小さい子の違いを観察すると、どうも足の使い方が違うと気づくかもしれない。こうやって観察して、違いを見つけていくことで課題を特定できることがある。

余談ではあるが、「観察」と似たもので、ビジネスにおいて自社の顧客を知る上で「顧客ヒアリング」という、顧客の声を聞いてくるという活動がある。特に、新規事業開発では「顧客ヒアリング」は欠かせない。しかし、顧客ヒアリングも注意が必要である。新規事業の提案で「90%の顧客が欲しいと言っています」というような説明を聞くことがある。この「顧客ヒアリング」は有効だろうか?有名な事例としてT型フォードを開発したヘンリー・フォードの言葉がある。「もし顧客の声に耳を傾けていたら「もっと早い馬が欲しい」と言われただろう。」実際には、顧客は何が欲しいのかを分かっていないという事例である。
この事例の学びは、顧客の声を聞くということは解釈が入り、事実とは異なるということだ。顧客理解において、あえて「観察」として事実を理解することが重要である。観察が十分にできない時に効率的な手段として「顧客ヒアリング」をしているとして理解しておくことが大切だ。

4)実際にやってみる

ビジネスでは、とりあえずやってみるのが難しい事が多いが、スポーツであれば、特定のシチュエーションを簡単に再現できる。例えば、ダブルチームで囲まれた直後のパスでパスカットされているという仮説があるならば、そのシチュエーションを再現して仮説を証明するのが良い。パスが弱いと仮説するならば、基本の対人パスをやらせてみてボールのスピンや球威を確認すると答えが分かることがある。もちろん、仮説が外れることもあるが、仮説検証では間違っているという事実が分かるという意味で進歩であると言える。
ビジネスでは、新規事業開発では仮説検証を行いながら進めることが多い。しかし、ビジネスでは、検証するにもコストが掛かってしまうので、いきなり本格的な商品やサービスを作って検証しない。上述の例でいうと、ダブルチムになった時にパスカットが起きやすいならば、実際に練習試合しなくても、そのシチュエーションの練習をすることで課題を特定できるのと同じだ。新規事業では、課題が全く分からないことも多い。その場合は、例えばWEBサービスでいうと、広告のクリック率、サービスの購入率、翌月再訪問率などの段階の仮説を立てて、まずは最低限の機能を開発して、実証実験を行う。統計的に有意差がでるほどのサンプルを得られれば、仮説検証ができる。これによって、どこが課題なのか?の事実を把握することが重要である。

5)本当の原因を考える

5W1Hという言葉がある。When:いつ」「Where:どこで」「Who:だれが」「What:何を」「Why:なぜ」と、1つのH「How:どのように」で情報を整理する方法である。ビジネスでは、5W1Hを押さえたコミュニケーションをによって抜け漏れのない情報伝達を実現できると言われる。
一方で「トヨタの5W1H思考」という言葉あるが、これは上述の5W1Hとは異なる。「Why:なぜ」と5回考えることで、本当の原因を特定して、最後のH「How:どのように」課題を解決するかと考える手順である。表面的な問題ではなく、その問題を引き起こした問題は何か?と5回も遡るということだ。例えば、走るのが遅くなったとする。どうも走り方に問題がありそうだと分かる。調べると左足に課題がありそう。左足の中でも小指が腫れている。どうも新しい靴と足が合っていない。靴を元に戻したら、早く走れるようになったという課題の特定法である。

実際のビジネスでは、原因と結果が複雑に絡み合うことがある。例えば、リクルートのSUUMOを考えてみると、SUUMOにはたくさん住宅情報が掲載されている。たくさん情報があるので住替えを考えている消費者がたくさん手に取ってくれる。消費者がたくさん手に取ってくれるから、たくさんの不動産会社が広告費を支払ってくれる。そして、また、不動産会社がたくさんの物件を掲載してくれる。という循環モデルである。このような因果関係を図解する方法をシステムシンキングと呼ぶ。世の中の事象は、分かりやすい因果関係だけではなく、生態的として複雑に絡まることが多い。その現実を受け止めて、図解して整理することで、本当の原因を特定することができる。実際にシステムシンキングを扱えるようになるには、勉強が必要であるので書籍などを参考にして欲しい。

この投稿では、課題解決には「正しい課題特定」が不可欠であることを示した。次に、課題を発散させる方法と、発散した後に解くべき課題を特定する方法について記しました。スポーツでの課題特定は、ビジネスよりもシンプルに特定することが多い。小さいころからスポーツを通じて意識しておくと大人になってからも非常に使えると考える。

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