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映画評論8「コンテイジョン」

新型コロナウイルスに揺れる世界。
この世界を2011年の時点で、非常にリアルに描いていたことで話題になっている映画「コンテイジョン」
遅ればせながら観てみたので、今回はこの作品について書いていきます。

作品情報

コンテイジョン:2011/11/12 公開
視聴日 :2020/05/09

監督:スティーブン・ソダーバーグ
脚本:スコット・Z・バーンズ
出演: マリオン・コティヤール、マット・デイモン、ローレンス・フィッシュバーン、ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロー、ケイト・ウィンスレット

「エリン・ブロコビッチ」「オーシャンズ」シリーズで知られるスティーブン・ソダーバーグ監督作品。

2020年の現在、新型コロナウイルスの驚異にさらされている我々が見ると、鳥肌の立つような描写が数多くあり、まるでこの世界を予言していたかのような映画です。

ストーリー

物語は香港から始まります。香港からアメリカに帰国した女性が、2日後、死因不明のまま亡くなります。

時を同じくして、香港で青年、ロンドンでモデル、東京でビジネスマンが原因不明の死を遂げます。

未知のウイルス感染による死亡を疑ったCDCや、WHOなどにより調査が始まりますが、感染を抑えることはできないまま、ウイルスは全世界に広がっていきます。

懸命な調査により、徐々にウイルスの全貌が明らかになっていきますが、一方では陰謀論を訴える者により、政府がワクチンを隠している、レンギョウ(という植物)が治療薬になるという噂が蔓延し、人々は薬局に殺到し暴動にまで発展します。

この物語はワクチンの開発に成功することで、ウイルス感染に対する一応の解決が得られるという結末になっています。

感想

すごい映画です。
(前回の「Fukushima 50」でも同じことを書いていますが…笑)

2011年に観ていたらまた違ったのでしょうが、2020年の新型コロナに揺れる今だからこそ、その凄みがよくわかります。

単に、面白い映画だね。では終わらせられない恐ろしさがあります。

コンテイジョンというのは、英語で接触感染という意味です。
新型コロナでも人々の様々な接触が感染経路の一つと考えられていますが、作中でも、触った後のドアノブをしばらく映すなど、接触についての描写も意図的に描かれており、よりリアルさを増しています。

infodemic

この映画のキャッチコピーは「【恐怖】は、ウイルスより早く感染する。」ですが、これは新型コロナの流行により一般に浸透してきた言葉「infodemic」が意味するところです。
(専門家の間ではSARSの時から用いられていたようです。)

実際のウイルスよりも早く情報が広がる様を表現した、Information(情報)とEpidemic(流行)をかけ合わせた造語です。

マスク、トイレットペーパーの品切れや、食料品の買占め、熱いお湯を飲むことで感染を防げるなどのデマ、他県ナンバーの車を傷つけるなどの行為、日々SNS上で巻き起こる口論、すべてこのinfodemicによるものです。

作中でも、買占め、暴動、レンギョウについてのデマなど、2020年の世界を見てから作ったのではと思ってしまうほどリアルに、恐怖が蔓延したときの人々の行動が描かれています。

この作品のリアルさの根幹には、このような、人々の行動の描写があると思います。
一人の人間としての人、集団になったときの人々、人の集まった集合体としての組織、その生々しいまでに人というものについて考察したであろう描写が、この作品の恐ろしさをより一層際立たせています。

ワクチン開発~衝撃のラストへ

本作ではワクチンの開発に成功するのですが、ここでも人や組織についてリアルな描写がされています。

作中では誕生日による抽選を行い、ワクチンの接種ができる人が決まります。
例えば、今日は4月24日生まれの人が接種を受けられます。というようにです。
一番遅い人は365日後に接種が受けられるということです。

しかし、ここでも政府高官やその家族、WHOの幹部職員など、優先的にワクチンの接種を受けられる人たちが描かれています。

治療に当たる医療従事者などが優先的に摂取することは合理性もあり、一般の方の理解も得られると思いますが、日本ではおそらく、賭け麻雀問題で処分された黒川氏あたりも、優先的にワクチンは回ってくるのでしょう。(黒川氏については、今回の問題以外のことは知りませんし、これが良い悪いということを主張しているわけではありません。)

ラストシーンで明らかになる事実が、冒頭のシーンの意味を明らかにし、また、この映画の寒気のするような凄みをより強くします。

これについては、ぜひ実際に映画で観ていただきたいです。

この映画が好きな方へのオススメ

「感染列島」

監督: 瀬々敬久
出演: 妻夫木聡、檀れい、国仲涼子、佐藤浩市、田中裕二(爆笑問題)、池脇千鶴、カンニング竹山

同じくウイルス感染を題材とした映画です。
観た当時はリアルな描写だと感じた記憶がありますが、コンテイジョンを観た後では、リアルさにはやや欠けるでしょう。

良くも悪くも、日本らしい、日本映画らしい作品といえるかもしれません。

檀れいの好演が光ると個人的には思います。
新型コロナを経験した今、もう一度観ると違った見方ができるかもしれないですね。

僕ももう一度観てみようかな。

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