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新屋。秋田晴としょっつるがある町

『湧き水が点在していることから分かる通り、新屋は良い水で有名な場所だった。みそ・醤油・しょっつるなどの醸造業でも栄えた町で、日本酒の製造蔵もかつては12軒あったが、平成の時代に5軒、令和には秋田晴1軒のみとなってしまった。』

秋田市地域おこし協力隊の古屋です。
秋田市の中心市街地からも近い新屋地区を気の向くままに歩いた結果、『日本酒』と『しょっつる』という秋田を代表する産品を製造・販売されている、秋田酒造株式会社さんと仙葉善治商店さんにお話を伺うことができました。
冒頭は、秋田酒造株式会社の野本社長に語っていただいた言葉です。

新屋は、雄物川が秋田平野から日本海へと注ぐ河口近くに位置する秋田市の町です。雄物川は、山形県との県境の大仙山を源流に、県南地区から秋田平野を蛇行して流れています。その自然の恩恵を受けて産業が発達し、羽州街道が通ったことから宿場町として栄えた歴史を持っています。


まずは、1908年創立、秋田晴ブランドを展開する、秋田酒造株式会社さんをご紹介します。

秋田酒造株式会社 野本社長

『秋田の伝統文化を守り、発信するのが使命じゃないかと考えている。』

野本社長は東京出身。先代である、野本社長のお母さんが8年前に急逝したため、秋田酒造の社長に就任することを決断し、ここ新屋へ移住されました。新屋には、幼少の頃から両親の里帰りで訪れており、なじみがあったそうです。

『私が入社した頃はどうしようもない会社だった。全ての工程を見直さなければいけなかった。今のところは半分ぐらいできたかな。ヒト・モノ・カネの制約がある中で少しずつやってこられた。右も左も分からない状態から、特に取引先の方に助けられて何とかやってこられた。』

日本国内の日本酒消費量は年々落ち込み、コロナ禍の影響で更に消費量は落ち込んでいきました。

『コロナ前に秋田へ来てよかった。そうでなければ、会社は倒れていた。』

日本酒の輸出額は470億円程度。世界的な日本酒ブームの到来もあり、秋田晴は、味や品質を向上する取組をしながら、伸びしろのある輸出に活路を見出してコロナ禍で売上を確保しました。
また、地域資源としての存在も意識していると言います。

『大事にしたことは2つ。1つ目は、良いお酒を造り、良い状態でお客様に届けること。もう1つは、文化財である蔵を守ること。』

新屋の景観を守ることも大事だと語る野本社長。殊更に語ることはありませんでしたが、幼少期の記憶にある新屋を守ることが、彼の使命となっていると感じました。


続いて、酒蔵について紹介していきたいと思います。

炊き立てのお米から湯気が立ちあがる
伝統的な六角形の屋根の構造が蒸気を受け止める
お米を放冷する蔵人たち

『蔵人が伝統的な酒作りを大切にしつつも、おいしいお酒をつくるために、新しい知見・技術・設備を取り入れる。そのバランスが大事。』

麹を育てる部屋
昔ながらの製法で丁寧に育てる
製麹室の中です

社長就任後、多額の設備投資をし、おいしいお酒を造るだけでなく、完成後、瓶詰めされてお客様の口に届くまで、いかに品質を保つかに苦心されていることを語られていました。

品質管理に欠かせないサーマルタンクを揃えている
秋田晴の商品はこちらで販売しています
秋田晴のラインアップ!

こんなに隅々まで見せて頂けるのかと驚くと、『小学校、中学校、高校、養護学校の見学が年中来る。子供たちが来ると嬉しいので、全部受け入れてますよ。』とさらりと言われていました。

秋田酒造株式会社について詳細は下記URLから!
ホームページ:https://www.akitabare.jp/
ツイッター:https://twitter.com/akitashuzo 
インスタグラム:https://www.instagram.com/akitabare_suirakuten/


続いて、秋田酒造さんから数100m離れたところにある、仙葉善治商店さんの高井さんにお話を伺いました。

『うちは新屋に昔からある会社で、明治23年にできた会社。新屋では、魚が取れて、塩が取れた。当時の新屋は塩田が広がっていてたことや、江戸時代には近くに羽州街道があり、物資の運搬があったこと等から、新屋は栄えていた。新鮮な魚を塩漬けしてできたのがしょっつるである。』

全国区で名の知られているしょっつるが、新屋が発祥の地(という説)だともお聞きし、とても驚きました!!

『積極的な営業は行っていないが、数年前にレシピをたくさん開発し、スペアリブをしょっつるにつけてBBQに持っていくなど、アイディアを発信していた。しょっつるは冷蔵庫で余ってしまいがち。もっと多くの用途があり、沢山使って欲しいと願っている。』

どんなレシピを開発したのか、教えていただきました!

しょっつるナムル、しょっつるグリッシーニ、豚しゃぶのアボカドサルサソース、しょっつる焼きおにぎり等、、
その数なんと、26種類!

たくさんのレシピの中から、今回は「しょっつるスペアリブ」のレシピをご紹介します!

材料
・豚スペアリブ  500g
・しょっつる  大さじ4
・はちみつ  大さじ3
・酒  大さじ1
・ニンニク  2片

1.スペアリブにフォークを入れ、味をしみこみやすくします。
2.ニンニクスライスを一緒に入れて混ぜ、冷蔵庫で一晩漬け込みます。3.BBQ用コンロでしっかりと焼きます。
※最後の焼く工程は、オーブンでも美味しくできます。その場合は、210℃のオーブンで40分程度焼きます。

手軽にしょっつるの味が楽しめますので、ぜひチャレンジしてみてください。


ハタハタのしょっつるは、魚介類に食塩と消化酵素や麹を混ぜて長期間置いて完成します。秋田県の伝統的な魚醤であり、いしる(石川県)、いかなご(香川県)醤油と並んで日本三大魚醤の一つとも言われています。

魚醤はタイのナンプラーに代表される様な世界的にも使われている調味料です。
日本では、三大魚醤以外にも、雪ひしお(北海道)や、あみえび醤油(山形県)、まぐろ魚醤油(鳥取県)等、全国に数多くの魚醤があります。
秋田県内では、ハタハタ以外にも鱈や鰺、わかさぎ、岩魚などの様々な魚から魚醤が作られています。


秋田市の新屋地区は古くからその風土や気候由来のものづくりの土壌があり、その歴史を継承している人々がいました。

新屋にこんな歴史と産業があったとは、、
秋田市出身の古屋ですが、恥ずかしながら存じ上げず、驚きの連続でした。
今回の取材を通じて、日本酒としょっつるという新屋の風土に根付いて発展した産業がまだまだ伸びていくポテンシャルに手応えを感じました。

同時に、現代に新屋に住む人たちが何を思い、何を目指しているのかが垣間見れました。

しょっつるを活かした料理により、新屋、ひいては秋田の魅力がさらに伝わることが地域の発展に繋がるという思いも込めて、今回の記事を書かせて頂きました。

この記事を読んで頂いた方には、ぜひ美味しい秋田県産のお酒を手に取っていただき、しょっつる料理と共に楽しんでいただければ嬉しいです。
お読みいただきありがとうございました。


〈参考〉
・国税庁 ”酒類の輸出動向”
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/yushutsu/yushutsu_tokei/index.htm
・経済産業省 "縮小傾向の国内酒類市場;飲酒習慣が市場変化の要因に"
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20210906hitokoto.html


【著:秋田市地域おこし協力隊 古屋亮太】