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去り行く背中に___『違国日記』11巻を読んで

終わってしまいました。

物凄く好きな漫画が最終回をむかえてしまいました。


続きが気になって気になって、
という漫画ではありませんでした。

一巻を書店で見つけて、
すぐに手に取って、
買って帰って一気に読んだとき、
あまりに胸が苦しくて何度も叩いて黙らせなくてはいけなかったこと。

新刊が出るたびに、
嬉しいけど、
読むのに「いっせーの!」と勢いが必要だったこと。


主人公の朝ちゃんと、
槙生さんの心に寄り添いたいと思いながら、
それはきっと嫌なんだろうな、
とか思ったら近くまで行って立ち止まってその肩を見ているしかできなかったこと。


姉とうまく関係を築けなかった槙生さんに、
自分の姉との関係も少し重ねて見ていて、
だから余計息ができなくなるくらい苦しくもなったこと。


子供を産んで、
朝ちゃんのお母さんで、槙生さんの姉である実里さんのどうしようもない葛藤や、空虚を抱いている感覚や、それなのにどうしようもなくしっかりとした手触りの子供という存在への畏怖の気持ちが、
あまりに身近で、
だからこそ朝ちゃんが「置いていかれた」と吐露する場面に、
自分の骨が砕かれたように感じたこと。


びっくりするくらい、
心の流れに根を張っていた作品でした。

読むのに覚悟がこんなに必要で、
それなのに何も押し付けては来ない、
不思議な漫画でした。




あの、
最後の詩。

槙生ちゃんが泣きながら言った朝ちゃんへの言葉。

それに返した「あたしをあいしてるって言えないんだよ」に胸が掻きむしられ、
「それじゃ足りない」の
槙生さんの返事に撃たれて蹲った。

そう。
まったくたりない。
あいしてるなんて何度言ったって全く足りない。
それくらい、
ずっと幸せでいてほしいくらい、
その姿をずっと見せてくれていなくていいくらい、
ただ生きていてくれていたらいい、
その目が世界を受け入れてくれていれば、
歌がその胸に流れていれば。
本当はずっとそばで大切にしたいけれど、
そんなこと全く構わないって言い切れるくらい、
ずっと言い続けても全然足りないし、
満足できないくらいい、
あいしてる。

って、ぐらぐらして、しばらく顔があげられませんでした。

親とか、
子供とか、
家族とか、
そんな関係性の名前をとっぱらって、
ただつながったもの同士、
その幸せを願うことを許してもらえる相手との、
関係を築いていくその生々しさを、
私は見ていたように思います。


最後の一文で、
全てが報われたような気がしました。


ヤマシタ先生、お疲れ様でした。
とても贅沢な時間を貰いました。
これからも陰ながら応援し続けていきます。


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