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転職活動記#2 「美の壺」かと思ったら「美の巨人たち」でした

現在、テレビ制作の仕事をしている僕が転職活動をして受けた会社について報告するシリーズ

先日、「笹川さん、美術番組興味ありますか?」とエージェントの担当者から連絡があった。
「美術番組好きですよ。NHKの日曜美術館とかいつも観てますし」と答えると
「ホントですか!いま丁度NHKの美の壺のスタッフ募集してるんですよ」とのこと。
美の壺も大好きでいつも観ている。草刈正雄が出てきて、コントを交えながらVでひとつの美術品を紹介していくという番組だ。ナレーションは木村多江さん。

トントン拍子で話は進み、3日後に面接を受けることに。会社は日本を代表する経済新聞のグループ会社のN映像。

しかし、面接前日になってエージェントが信じられないことを言ってきた。
「笹川さーん、すいませーん、、美の壺じゃなくて美の巨人たちって番組でした。」

えっ、それ何?聞いたこともないし、観たこともないな。ていうか、エージェントがクライアントの担当番組間違えるってどういうこと??すでに頭の中では、美の壺のスタッフとして、草刈正雄をアテンドしたり、刀とか鎧とかをかっこよくブツ撮りして活躍してるイメージでいっぱいだった僕は正直腹が立ったし、
モチベーションもだいぶ下がった。

でも、気を取り直して面接前にオンエアくらいチェックしておいた方がよかろうと、tverなど検索するが出てこない。
エージェントに確認すると「NHKプラスとかtverで観れると思いますよー」ってきたが、
第一テレ東の番組がNHKプラスで観られるわけないし、この人はtverで観れないことも確認してないのかと、怒りが込み上げてくる。
数分後に「すいません、ネットもテレ東で観れるみたいです」と送られてきたが、結局「ネットもテレ東」にも上がっていなかった。
本当にこのエージェントは大丈夫なんだろうかと不信感を募らせる。

面接当日。茅場町の駅からすぐ近くにある喫茶店でエージェントと打ち合わせ。
エージェントは前の打ち合わせが長引いたとかで、10分遅刻してきたが僕ももうこのくらいのことでは腹も立たない。
そして1時間ほど担当者と話して、N映像の面接に向かった。

N映像の面接担当者は、常務取締役と番組の総合プロデューサー。
僕は今まで経験してきた相撲のハイライト番組でのこと。番組リサーチで活躍したことをアピールした。しかし、先方の反応は
「わかりました。それ以外で普通の番組の経験は?」
えっ、普通の番組って今説明したじゃないかと思ったんだけど、表情には出さず
「今説明させていただいたのが、僕の経験した番組全てです」と自信を持って答えた。
「そっか、リサーチはディレクターがやるからさら、ロケの現場を回せるADさんが欲しかったんだよ。君はそういう経験ないみたいだね」
とキッパリ言われてしまった。もうこの時点で、不採用が決まったようなものだ。
なんだよ、それならそうと最初からそう言ってくれと言いたかった。そのあと、お互いいくつかの質問のやり取りがあり、僕は笑顔を絶やさずにN映像を後にした。

帰り道、茅場町の駅の駅に降りると、眼鏡をかけた小太りのサラリーマンが血相を変えて走りすぎた。なんだ?と思って視線をやる。
「社長!お願いですから!」とその小太りのサラリーマンは社長と思しき大柄な男性の手にしがみついている。まさに藁をも掴まんとする感じ。
「君もしつこいな!13時しかダメだと言っているだろ! い・ち・じ!」と小太りの手を振りほどいて足早に去っていった。彼の今にも泣き出しそうな表情が忘れられない。

彼らの間に一体なにがあったのかわからないが、働くってタイヘンだ。

そしてその3日後に、お祈り連絡をもらった。

つづく

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