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同性同士は事実婚と認められない?

同性パートナーを殺害された愛知県の男性が、事実婚の配偶者には認められる犯罪被害者給付金を不支給とした愛知県公安委員会の裁定取消しを求めた訴訟。

判決は、「同性同士は事実婚と認められない」として請求を棄却しました。

判決全文はまだ入手できていませんが、判決理由は、事実婚の配偶者と認めるには「同性間の共同生活が婚姻と同視できるとの社会通念が形成されていることが必要だが、裁定時に形成されていたとはいえない」と述べているようです。

注意すべきなのは、この裁定時が2017年であるという点だと思います。

公安委員会の裁定の違法性を争っているので、裁定時が基準になります。今から3年前の「社会通念」に照らして判断した結果であるので、現在同様の事件が起きた場合に、裁定は違憲であるという可能性までも否定したものではありません。

ただ、3年前の裁定に対する判断であったとしても、このような判決は、同性婚の制度化にストッパーになりうる点で大いに危機感を感じています。


ここで問題となるのが「社会通念」とは何か、です。

日本においてはパートナーシップ制度というものがあります。パートナーシップ制度が認められているのに、社会通念上、同性間の共同生活を婚姻と同視できないなんておかしいですよね。パートナーシップ制度自体の意味がなくなってしまう。

で、これが初めて導入されたのが渋谷区なんですが、開始されたのが2015年の4月なんですね。

2017年においてパートナーシップ制度が導入されていたのは、渋谷区・世田谷区・伊賀市・宝塚市・那覇市・札幌市のわずか6例にすぎない。

そうすると、2017年の段階では、パートナーシップ制度が全国に広まっているとはいえないために、社会通念上事実婚と認められないとされた可能性があります。

ここで私が思うのが、パートナーシップが先か、社会通念が先か、という問題です。パートナーシップ制度が認められたのは、社会通念上、同性間の共同生活が認められたからこそ、だともいえると思うのです。


したがって、パートナーシップの広がりは指標にはなるけれど

パートナーシップが広がっていないから同性間の共同生活が社会通念上事実婚と認められていないとは言えないと考えられます。そうであれば、2017年においても社会通念に照らして事実婚と評価しえたのではないでしょうか。


また、2020年4月の段階では日本の人口の4分の1以上をカバーする自治体で、パートナーシップ制度が認められているので、「社会通念」も変わったと言えるかもしれません。

原告は控訴をするようですので、高裁の判断が待たれるところです。

愛する人を失った苦しみは、同性パートナーだろうが異性パートナーだろうが変わりません。時代に合った判断を望みます。

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