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むかし、新興大金持ちによる『ネオヒルズジャパン』で、仕事術の特集が組まれていたんだよ。

ネオヒルズ族。

いまでもいるのか、いないのかよくわからないけれど、「ネオヒルズ族」という言葉が世間で沸いたことがあった……ということを唐突に思い出した。

いまはシンガポールで投資家として活躍している与沢翼氏や、ほかに誰がいたっけ? IT事業で財をなした「ヒルズ族」の次の世代、主に情報商材やインフルエンサービジネスでお金を稼いだ人たちがその中心にいた。

ヒルズ、というのは六本木ヒルズ森タワー併設のレジデンス(マンション)の謂いである。

一軒家ではないけれど、下は毛利庭園があって、そばには森ビル、テレビ朝日。住環境としても悪くはないらしいが、主にそこに住んでいるのは整形外科医だと聞いたことがある。で、そのネオヒルズ族が「ネオヒルズマガジン」という雑誌を作ったことがある。かなりの金額をぶっこんで作った趣味の雑誌であり、まったくおもしろくない。

ネオヒルズ・ジャパン 与沢翼責任編集長 (双葉社スーパームック) 与沢 翼 責任編集長 https://www.amazon.co.jp/dp/4575454125/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_aPMvzbR0S3WN8 @amazonJPさんから

まだ売ってた。世の中わからないものだ。

この雑誌の主目的は、2013年ごろの「ぶいぶい言わせていた」与沢翼氏のフォロワーたちに活躍の場所というか、知名度を与えることだったと思しい。与沢翼の仕事術という、なぜか普通のサラリーマンが一日の大半をスマホをみて過ごしているなど現実感を喪失している記事があったりして、いろいろ考えさせられるものがあるムックではあった。グラビアはお世辞で褒めても「ひどい」の一言だった。

で、唐突にこれを思い出したのはツイッターで「最底辺」という言葉を見たからにほかならない。『ネオヒルズ・ジャパン』は次のようなウリ文句をもっていいる。

年収1000万超を目指す若きビジネスマン必読マガジン。
突如として話題になった新ビジネスセレブ「ネオヒルズ族」。

TV、週刊誌、人気漫画がこぞって彼らを取り上げるが、未だその全貌は謎に包まれたまま。本誌は「ネオヒルズ族」全面協力のもと、彼らの全てを初公開。
最下層の落ちこぼれだった彼らがいかにして短期間でここまで成功できたのか。そこには、この格差社会で生き残るヒントが隠されていた。

妙な話だけれど、この売り文句は僕は鮮烈に覚えていて、「格差社会で生き残る」という言い方はむしろ2017年の今のほうが強烈なメッセージとなっているように感じられた。

それは「孫正義、堀江貴文を超える!?」という煽り文句に鮮烈だろう。孫正義も堀江貴文もあまりお金に執着はないと思うけれど、もはやネオヒルズ族にとっては金額の大小が人物の価値なのだ。

だが、むしろネオヒルズ族たちは「金」の向こう側を探していた。それは「名誉」と「文化」だった。

自分たちのライフスタイルや生き様、あるいは容姿を評価されたい一心がこのムックには溢れている。しかしそれは全て『VOGUE』や『スタジオ・ボイス』の醜悪なパロディに堕ちている。文化に帰属するのは簡単なのに、手に入れるのは難しい。

金が文化を生みたかった夢。それが「ネオヒルズ・ジャパン』という雑誌なのだったのだろうなと思った。


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