たった一人の「族」

家の裏手に川があり、川の向こうに道がある。その道はかつて暴走族が走ることで有名で夜中の一時半とか二時になると警察官のサイレンの音と、暴走族のゆったりとした速度で走る騒音が聞こえたものだった。

いつからか、そんなものは聞こえなくなった。

聞こえなくって、僕はどこかでそうした暴走の「音」を楽しみにしていたのdらおうと気がついた。暴走族の行為を認めるにせよ認めないにせよ、それが醸し出す世界、音、環境・・・・・・ずっと続くと思っていたものは儚く消えてなくなる音でしかなかった。

さっき、わずかな時間だけど、暴走する音が聞こえた。大声と、エグゾーストノートと共に。

昔読んだSFの中で、世界の終末を見せてくれるタイムマシンの話があった。それは灼熱の世界で最後の虫が息絶えるシーンであったり、極寒の世界で震えながら死んでいく象の姿だったりしたが、人がみるたびに「世界の終り」のありかたは違っていた。なんだかその話を聞く度に、笑えるような、泣きたくなるような、悲しい気持ちになった。

最近、普通に歩いている時でも似たような気持ちになる。



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