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KindleUltimateと情欲の世界

KindleUltimateを始めた。というか、無料お試しを始めてみた。理由はいくつかあるが、国立国会図書館が所蔵している典籍が閲覧し放題なのが大きい。読み放題に向いている9インチのタブレットを買ったのもきっかけの一つだ。

 ついでなのでいろいろ見てみる。多くは「実用書」が読み放題で、あとは『東京カレンダー』とか『ダ・ヴィンチ』のような雑誌。それから、小野田ゆうこ『まんがでわかる 復縁方法』とか、高遠るい『はぐれアイドル地獄変』のようなキワモノ(?)の漫画が対象になっている。

まかり間違っても『ONE PIECE』の最新刊とかは入っていない。

 で『東京カレンダー』2018年3月号。

特集は「32歳からの神楽坂」で、32歳女子(たぶん総合職か企画職OL)が、部長(若い)につれて神楽坂で打ち上げをするというストーリーの元、神楽坂の石畳の通り(めちゃくちゃ高い店が並んでるところ)にある一品2080円税込みの店を紹介するという仕掛けになっている。

 即死である。表紙はどうみても不倫後の様相であり、内部を閲する限り抱いている側のスーツの男は「部長」で、カメラ目線の女が32歳のOLらしい。

 こうみえても僕もまたそこそこ不倫にはうるさい男。神楽坂ならぬ高級料亭でゲスい記事を書いて糊口をしのいだ時期もあるクズofクズないしking of クズである。「32歳神楽坂で不倫」ぐらいのテンションでは、「おいおい、東京カレンダーさんがこんなローテンションのネタ企画では、困りますなあ」ってなものである。

 ちなみに、『東京カレンダー』はウェブ記事ではわりとネタっぽい話も多いが本誌は、高級路線を志向するミドルエイジ向けの情報誌である。大正製薬の青汁の広告もあるしね。

 話をもどす。神楽坂特集は「社会人10年め、次なる大人のステージに立つ。」という見出しのもと「ここからが大人の正念場、「真の大人」になるべく、今からやるべきことが4つある」という煽りがくる。

1.大人しかいない店に当たり前に入る。
2.被り知らずな既視感のない店を選ぶ
3.連れ出した年下を感動させる店をもつ
4.名店で料理と向き合う粋な時間を過ごす。

な、なるほど。さすがは社会人10年め。学部を出てから10年で「歳下を連れ出すのか」と東京カレンダー力(戦闘力3000)の前にかなり圧倒される。

東京で最後に残された、まだ未開拓な地へ

「東京カレンダー読者にとって「港区」、「恵比寿」あたりは熟知したテリトリー。」

なんだそうだ。そこで神楽坂を探索するのだが、もうどこも徹底してかなり高い店ばかりだ。飯田橋のほうにいけば、旧泉鏡花邸の跡地を中心に再開発されて安い店も多くなったが、大黒天の裏側とか、「店の看板も出ていない」生半可ではない店がずらりと並ぶ。

 ここで取り上げるお店についてはいったことがないのでなんとも言わないが、取材はそれなりにしっかりとしている。「脱シニアな天ぷら劇場」とかなんとかならんかったのかと思うが。

で、先程みた「歳下」なのだが、これは勿論会社内の部下を指している。部下目線の記事が4つだが、頻繁に「デート」の文字もでてくる。ん? ああ。部下とデートね。そういうことも社会人になったらあるのであろうな。

女性側からすると、

「神楽坂でいい?」、そのセリフこそ大人の女性へのパスポート

らしい。神楽坂でデートに誘われたら大人の雰囲気のある女なのだ、ということらしいのだが、最初はもちろん社会人の常識「仕事のうちあげ」である。ちなみに女性1,男性2。19:30から開始で、22:00には男性1がどっかいってしまい、カフェに。

 記事はここで別コーナー。神楽坂の和の名店を紹介する。「いずれも名前だけ聞いたことあるだろうけ店の前には看板もないし値段も張ってない」最強の店である。お座敷天ぷらコースは2万円からである。気をつけよ。そしてお次は。

 土曜日の深夜12時過ぎしか食べられない幻のラーメンがある。

 と小宮山雄飛(知らない? マジでいってんなら死んだほうがいい)がおすすめする幻の名店の紹介が入ったりする。これもいい流れだ。「22時にカフェで〆る関係の大人の女」と一緒には絶対入れない店である。これも大人の神楽坂だ。で、著名人インタビュー二本。

そしていよいよ最後の記事へ。

"神楽坂デートの余韻を受け止める老舗ホテルがある"

……下心まる見えやんけ!!! 

最後の記事は全然神楽坂ではないタクシーにのって移動した先にある秘密のホテルに宿泊である。大人……とは……。

さすが『東京カレンダー』だぜ。もう俺たちのライフポイントはほぼゼロ。圧倒的な構成力によって32歳の神楽坂を、上品にエロでしめるそのセンスに脱帽する。これが東京カレンダー、これが神楽坂おしゃれライフ……! これからも夢を見させてくれ、東京カレンダーよ!


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