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27歳の女性が22歳のときのことを思い出して……

アムリタは、荻原永璃(本名だそうだ)が主催をつとめる劇団。結成からもう5年、になるはずだ。直接の後輩ということもあり以前はよく見にいっていて、つい昨日、一昨日、早稲田どらま館で再演を果たした。アムリタ9「みち・ひき」。美濃加茂での制作をひっさげて。

それは、標題のような作品だった。大学生だった頃……というよりも、何かに無我夢中だった頃の記憶はいつだって鮮烈に輝いている。その昔の懐かしさを4人の女優が、配役や地面を飛び交いながら演じるものだった。


荻原の相棒といってよい藤原未歩は、相変わらずすごい美人で、黒のワンピースを来て、笑って叫ぶ。まるで戦地で夫をなくした未亡人みたいだ、と思ったけど言わなかった。高身長(たぶん実際の身長以上に高く見える)の身体といい、覇気と優しさのある声音や感情表現の豊かな表情。恵まれているものがたくさんある。

河合恵理子はふわふわとした印象で場の空気を柔らかくするし、金子美咲は元気いっぱいに自転車や鳥になって想像力の自由さを体現する。一番印象的だったのは大矢文で、さっぱりした中居さん役がドハマリ。またやらないかなーと思っているとちゃんと中居さんやってくれるのがよかった。コンサバティブな服装でちょっと眠そうな空気感で、舞台の空間に時間の軸を与えている。

とはいえ、主役ということでいえば白樺汐の音楽だったろう。リニアに奏でられるBGMは、彼女たちの織りなす空間と時間をしっかりと支え、目立たないけれど中毒性のあるリズムがミニマルな世界観をくっきりと浮かび上がらせている。

がんばっていた。27歳の女子たちが、旅に出て、河になり、昔の大学までの道を辿り直し、演劇をやっていることを思い出し、観客に聞いてもらう。演劇は自由な芸術で、鳥になっても魚になってもいいし自転車にもなれるけれど、いつかこの時間は終わってしまうのだ……。

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もし、この舞台をやっている女優がみな18歳でぴちぴち(?)しており、才能と努力でもって27歳の「私」を想像しながら演じていたとしたら、僕は号泣していたかもしれない。

でもそうではないのだ。4人の女優はそれぞれに魅力的だったし、働きながら演劇をしていて、涙が出るほどかっこいい。河合がちょこっとストレートネックなのも、藤原が少しピュアさを失いスレてしまったのも、シゴト、という演劇の外側がその身体や心性を造形したから。

でも、アムリタは、一度変革の時期に来ているように感じた。演劇をテーマにすえてよいのか。自由さや純真さを見せつけるような芝居でよいのか、藤原はいつまでスレてしまうのか。

次の進化を楽しみにしつつ、串カツ食べて帰った。



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