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【地域円卓会議】令和5年度 地域に"ほけん室"をつくる事業「加賀市で15-25歳を過ごす若年女性のWell-being を考える」地域円卓会議(2024年4月20日)

2024年4月20日(土)令和5年度 地域に"ほけん室"をつくる事業の最終報告会を兼ねた企画として、「加賀市で15-25歳を過ごす若年女性のWell-being を考える」をテーマとした地域円卓会議をあくるめ財団の主催で開催いたしました。

今回は、6名の方がセンターテーブルメンバーとして着席し、論点提供者の「困りごと」に対してそれぞれの視点から知っている現状や課題などの事実を持ち寄り、テーマに対する理解を深めていきました。

また来場者の皆様とのサブセッションも行い、そこで話し合われた内容を踏まえて生まれた新たな問いや議論の深堀を行いました。

以下、開催報告となります。


第二回 地域円卓会議

テーマ:加賀市で15-25歳を過ごす若年女性のWell-being を考える地域円卓会議
〜石川県加賀市の若年女性の「生きづらさ」について、彼らを取り巻く環境を整理しながら、地域の大人や場所が、これからどのように彼らの「生きやすさ」と関わっていくべきかを考える〜

日時:2024年4月20日(土)13:00〜16:00
場所:みやびの宿 加賀百万石
着席者数:8名(論点提供者、司会、記録者含む)
参加者数:合計27名(全て現地)
参加者の属性:行政、女性協議会、助産師会、子育て応援ステーション、一般社団法人、企業、任意団体、自営業、その他
主催:公益財団法人あくるめ

論点提供:小杉 真澄(公益財団法人あくるめ 事務局/かがじょ基金主担当)

 あくるめ財団では、加賀市で15〜25歳を過ごす若年女性の抱える課題や困りごとを支援するKAGA JOJOJO FUND(かがじょ基金)を2022年に立ち上げました。加賀市で10代を過ごしたかつての当事者25名へのインタビューを通し、加賀市で過ごす若年女性の困りごとが多岐に渡ることが明らかになり、その支援も希薄であることが明らかになりました。

 今回の円卓会議では、令和5年度地域に"ほけん室"をつくる事業にて採択された2団体の活動内容について共有を行うとともに、加賀市の若年女性の「生きづらさ」について、彼らを取り巻く環境を整理しながら、地域の大人や場所が、これからどのように彼らの「生きやすさ」と関わっていくべきかを様々な立場の方と考えます。

着席者:

金沢大学融合研究域融合科学系 教授  眞鍋 知子 氏
合同会社スオ 小塩悠氏・小塩啓氏
ffirm youth clubメンバー 久保出千仁氏・大矢真子氏
一般社団法人 石川県助産師会 

司会:飯貝 誠(公益財団法人あくるめ 理事)
記録:
山口 美幸(公益財団法人あくるめ 代表理事)
亀田 萌理(公益財団法人あくるめ 事務局)

セッション1 

セッション1では、論点提供及び、着席者を中⼼に視点や事例の共有をおこないました。

事実の共有

・あくるめ財団は、かがじょ基金を通じて寄付を集め「地域に"ほけん室"をつくる事業」として2団体に合計200万円の助成をおこなってきた。
・1990年代〜2008年頃、日本では「バブル崩壊」「リーマンショック」が起きていたが、それらは「若年男性」の問題として扱われることが多かった。つまり労働問題=男性の問題であり、女性は「父が守る」「夫が守る」という前提で扱われてきた。
・2017年頃になると「JKビジネス問題」など若年女性の問題が顕在化し、内閣府の対策会議が開かれるなど社会問題として扱われ始めた。
・2020年の新型コロナによる自粛期間においても「ホームが安全ではない」若年女性の問題が顕在化している(ex: 非正規雇用には若年女性が多く就労しており、コロナ拡大に伴い職を失った人が多かった/家庭内DVの被害拡大)
・2024年4月1日に施行された「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」では、女性をめぐる課題は生活困窮、性暴力・性犯罪被害、家庭関係破綻など「複雑化」「多様化」「複合化」していると述べられている。

事例の共有

・仙台市では18-39歳を対象とした「仙台市 女性の暮らしと気持ちのアンケート」の実地調査が行われている。
・この調査は「若年女性の困難な状況の背景には、過去の傷つき体験の影響があるのではないか」という仮説が設けられており、「15歳当時の暮らし向き」についての質問を通じて、子ども期の貧困とその後の困難の関係にも触れられている。
・アンケートの結果、15歳当時の暮らし向きが苦しかった人は「家計が苦しい」「メンタルヘルスの問題を抱えている」割合が、それ以外の人と比較して約2倍であった。
・また15歳当時の暮らし向きは苦しかったが、現在は困難を抱えていない人の要因を分析したところ「自分のことを気にかけてくれる大人が周囲にいた」等の解答割合が高く、周囲の大人の適切な関わり方が重要である考えられている。
・あくるめの助成金を通じ、加賀市で若年女性(15-18歳)を対象にし、参加者が自分自身について知り、表現することを目的とした第三の居場所「ffirm youth club(ファーム ユース クラブ)」では、年間を通じて3つのテーマ(ジェンダー・人間関係・見た目)に関するワークショップが年間7回行われた。
・あくるめの助成金を通じ、「大人向けの性教育セミナー」が年間3回行われた。なお能登半島地震の影響により、予定していた4回目の講座実施は見送った。
・「大人向けの性教育セミナー」に参加した人のうち、この活動に賛同しもっと関わりたいと思うメンバーでコミュニティが発足された。

視点の共有

・若年女性に直接なにかを行うプログラムの場合、集客に苦戦した。チラシの配布、設置等に取り組んだが、最終的には信頼できる大人からの口コミの影響力が高かった。
・集客には発信力が重要ではないか。
・「大人の性教育セミナー」について、男性の参加者は参加しづらい。
・全ての小中高に、平等な包括的性教育の講座が提供されているとは言えない。
・企業にとっても重要なテーマではないか。協働ができると感じた。

評価の共有

・若年女性は、自分の心を尊重してくれ、気にかけてくれる周囲の大人の存在や場が重要なのではないか。
・厚生労働省「あなたのミカタ」という支援情報ポータルサイトでは、各自治体・民間団体の窓口一覧が検索できるが、加賀市は出てこないのは、問題ではないか。
・「ffirm youth club」に参加した学生より、「同じ物事であっても一人一人の感じ方が異なることを実感できた」「他人と違う自分を認められるようになった」「ルッキズムという言葉を知ることができた。他人の目を気にしていた自分に気づいた」「私は私でいいんだと気づいた」「社会人になってもこういった自分に自信をもって生きていけるようなコミュニティがあったらいいと思う」とフィードバックがあった。
・「大人の性教育セミナー」について、アンケートで「やや満足〜満足」と答えた人の割合は100%であった。すべての人がこの講座を聞くべきであるという声もあった。
・「大人の性教育セミナー」を受けたあと、何らかの形で活動に協力したいとコミュニティへの参加を希望する人は7割以上であった。非常に関心の高いテーマといえるのではないか。27名の申込があり、実際15名が参画している。

サブセッション

サブセッションでは、会場の来場者およびzoomメンバーで少人数のグループをつくり、テーマに関する意見交換を行いました。グループには、センターテーブルのゲストも各自同席しました。本来であれば、サブセッション終了後に複数のグループから挙がった内容を「事実」「事例」「視点」「評価」に分けて記していますが、今回は時間の関係で1名より挙がった声をまとめました。

評価の共有

・行政に関わっている方より、厚生労働省「あなたのミカタ」という支援情報ポータルサイトで、加賀市の相談先が掲載されているないことは大変残念に思うとの声が挙がった。今後改善していきたいとの評価をいただいた。

セッション2

サブセッションであがった内容を参考に、再度センターテーブルメンバーを中心に対話を進めました。今回の円卓会議では、これまでのセッションから生まれた新しい問いについて話し合いを行いました。また、時間の都合上話し合えなかった問いもあり、次回以降への積み残しも見えてきました。

問い1「大人の理解が足りない、相談相手が少ない、居場所が少ないという若年女性の課題はなぜ起きているのか」

<センターテーブルから挙がった意見>
・その課題がなぜ発生しているのか、という以前に、私たち大人もまた居場所や相談相手がいなかったのではないか。そういう大人が子どもたちを育てている。大人世代の生きづらさや困難さが子ども世代の生きづらさに繋がっている可能性がある。
・高校生のゲストから「ワークショップを通じて自分らしくていいんだと思えた」という感想を受けて、助産師会のゲストよりも「講座に参加した大人からは、受講後に私はこのままでいいんだ」と発言があったことが共有された。全く同じことを子どもも大人も言っていることから課題が連続していることが分かる。
・このままではどの世代も生きづらさを感じていることが普通になってしまう。

問い2「どういった状態になれば、理想的と言えるのだろうか」

・自分を表現して、それが受け止められる状態。女性だけではない。男性もそう。
・家庭とか日常生活でも場面にとらわれず、表現する・しないについても自分で決められる状態。ここでは表現できる、ここでは表現できない、というのではなく。
・自分が実践したコミュニティについては近すぎない・踏み込みすぎない場所であること。「緩やか」という言葉をキーワードに取り組んできた。

問い3「居場所ってどうやったら増えていくだろうか」

・人にどう思われるか、ではなくて、人に優しくしたい・支え合いたいという気持ちが積み重なっていったときに居場所が生まれると思う。
・クリエイティブな力は、境界を飛び越えていく力がある。
・若年女性について、男性をどうこの問題に当事者意識を持ってもらえるかが重要。
・集客面について、性別で分断されない告知が重要。
・大人がつくりだす環境に、大人はもっと自覚的であるべき。
・地域が「生きやすさ」の追求がこんなにも難しいものか自覚させられた。
・弱い紐帯(ちゅうたい=絆)の強さという言葉を思い出した。毎日顔を合わせるような強いコミニティ(=強い絆)、よりもちょっとした繋がりや弱いコミュニティがあれば重要である。

参加者アンケート集計

参加者数:合計27名(現地 27名)
アンケート回収:18件(回収率 約66%) 内訳:googleform 5件・紙アンケート 13件

質問1 どちらから参加していますか?

・加賀市 12名
・金沢市 2名
・白山市 2名
・能美市 1 名
・小松市 1名

質問2 所属する組織や団体を教えてください。

・自営業 7名
・職能機関 1名
・行政 3名
・企業 1名
・NPO/市民活動団体等 2名
・自治会等の地域組織 1名
・無回答 3名

質問3 本日の地域円卓会議をどちらでお知りになりましたか?

・Facebook、Instagram等のSNS 2名
・主催者からの案内 8名
・友人、知人からの紹介 4名
・あくるめ財団の公式WEBサイト 3名
・無回答 1名

質問4 本日の地域円卓会議に参加しての満足度をお聞かせください。

・とても満足 7名
・満足 7名
・ふつう 3名
・とても不満足 1名

質問5 その理由をお聞かせください。

とても満足を選んだ方
・大人に居場所、相談相手がいない現実が子供への関わり方になっていると思いました。改めて気づきました。
・事業の振り返りを通して様々な人のフィードバックをいただいたため。
・真鍋先生の話 小杉さんのまとめ 山田さんの感想 ユースの言葉。
・一年の活動のまとめとともに、今後の課題が見えたこと。この回の中でも新たな気づきがあったこと。大変有意義な時間でした。

満足を選んだ方
・加賀市における現状の把握と実験的な取り組みについて知ることが出来ました。
・取組内容がよく分かりました。人それぞれの感じ方や価値観を認めることにはとても力がいること、そしてそれには自己肯定感が必須であり、その部分をどう育むのかは絡んでいると思います。
・2団体の成果というか、やってこられたこと、試行錯誤、悩みながら事業をされてきた足跡が聞けて、知れて、よかったです!これからも頑張ってください。何か力になれることがあれば!
・話がいろいろ面白かったです。「弱い紐帯の強さ」ということが印象に残りました。どの報告も話も気づきがありました。
・とても楽しい内容でした。都合上途中退席してしまったので、もっと聞きたかったです。

ふつうを選んだ方
・登壇者だったが、議論をうまく深められなかった。
・大変難しい、大きい論点だった。社会全体の問題と行ったり来たりしてしまう。

とても不満足を選んだ方
・いろいろな考えを聞くことができて、とても面白かったです。眞鍋先生の話、興味深かったです。

質問6 本日の議論の中で、印象に残ったこと、良いアイディアだと思ったことがあればお書きください。

・ありのままの自分を認めていける環境を整え、実際に参加者が変化したということが特に印象的でした。
・大人が自由に生きれていない、居場所がないと感じているから若年女性にも届かないことみんな生きずらさを抱えているんだなあと改めて感じました。
・弱い紐帯の強み、大人の居場所がないから、それが子供にも影響する。
・親世代にも地域に居場所がないのではないかという仮説。
・包括的性教育、男性の性教育、大切だと思います。助産師会に参加しずらい、恥ずかしいと感じる男性のことも承認すること、その価値観も大切にすることで、お互いに知ることで、着地点があるとよいなと思いました。
・あくるめ財団を通じてよいコミュニティができたなと思いました。ありがとうございました。
・生きづらさの分解、、やってみたいですね。
・眞鍋先生のお話が心に残りました。困難な状況を乗り越えた人が何に助けられたのか。
・ゆるい繋がり、大人の居場所、生きづらさの回復
・香水の話
・高校生の言葉で「日常のどんな時でも自分らしさを出せる、そんなずっしりと構えていられる自分でいられる社会」が理想というのを聞けて、胸が熱くなりました。
・地域の居場所が、ゆるい人の繋がり、弱い絆の強さになる。
・ふだん出会うことのない世代、職業、立場の方たちと出会えて、繋がることができて、よかったです。弱い紐帯の強さ、まさに一期一会だと思いました。
・まず広報していく、そのためにイベントや活動も断続的にしていくことが必要。口コミも大事。知った人が他の人に広めていく、よいツールはないかな?「場」は大切だが、傷ついた人は逆に逃げて関わらないでおくはず。「ほけんしつLINE」みたいに24時間相談できるとか。その方がアプローチしやすいだろう。
・ゆるいネットワーク、いろいろな人と繋がるといいですね。

質問7 会議運営に関して、ご意見、感想等ありましたらお書きください。

・参加への一時的な抵抗があったので、男性の参加も可能であるような文章があってもよかったかもしれません。いつも実りある会をつくっていただきありがとうございます時間がもっと欲しかったです。
・あくるめさん、1年間本当にありがとうございました。みなさんに支えられて一つのプロジェクトを終えることができました。あくるめさんのおかげで自分たちがユースにできることを実現できました。くじけたときに連絡をしたこともあり、こころの支えにもなってもらいました。みなさまに、感謝申しあげます。まことに、ありがとうございました。
・ありがとうございました。いつも小杉さんの鋭い意見に感嘆していました。山田さん、最後のメッセージも素敵でした。短い一年でしたがまずは一歩と感じました。お世話になりました。今後も頑張ります。

当日の会場の様子

当日の記録

当日、センターテーブルメンバーの発言をその場で書き起こしております。一部の表現漏れや誤字、脱字などが起きている可能性もございますが、ご了承ください。記録を通じて、当日の雰囲気を感じていただければと思います。

アーカイブ(youtube)

期間限定とはなりますが当日の様子をyoutubeにアップいたしました。ぜひご覧いただければ幸いです。前半後半の2本です。


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