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確定申告と、税理士さんのこと。

この文章は、アドビ株式会社の特集企画「僕と私の確定申告」に寄せて書いたものです。



東京都の市外局番「03」から始まる見知らぬ番号から電話がかかってきたのは、2020年7月のことだった。

「◎◎税務署です。2月にご提出いただいた、昨年分の確定申告についてお話があります」

電話を取ってすぐに告げられたそんな言葉に、心臓がドキッとする。ちゃんと確定申告は期限までに提出したし、何も思い当たる節がない。何か悪いことをしたっけ……? と不安になりながら、スマホの向こう側にいる相手の言葉の続きを待った。

「昨年の確定申告で、間違っている箇所がありました。修正して再申告をお願いしてもよろしいでしょうか?」

予想だにしなかった言葉に、驚き、そして焦った。今さら間違っている? 会計入力ツールで、ちゃんと順番に従って入力したのに? 無事に書類も受理されて、還付金も受け取ったのに?

今日はそんな一本の電話から始まった、私と税理士さんの付き合いについて、そして確定申告についての話を書きたいと思う。

会社員をやめて、私が個人事業主一本で働き始めたのは2020年4月のこと。とはいえ、会社員時代も複業をしていたので、開業届けを出して個人事業主になったのは、今から約4年半ほど前、2018年のことだ。

最初は複業としての個人事業主だったので、売り上げもそんなにあったわけではなく、「確定申告は自分でやろう」と決めていた。お金の管理をするのは昔から苦手だったけれど、これから個人として活動するのであれば、最低限のお金についての基礎知識があった方がいいだろうなと思ったことも理由のひとつ。

幸いにも、今の時代、便利なツールがたくさんある。会計入力ツールに登録して、ポチポチと項目に沿って入力を進めていくだけで、初年度の確定申告は完了した(コツコツと前もって入力することや、資料を整理したり管理したりするのが苦手なので、確定申告直前に大変な思いをすることになったけれど)。

「なんだ、意外に自分でもできるじゃん」というのが、最初の確定申告を終えた時の感想だったように思う。

でも、「お金についての最低限の知識を身につける」と言ったものの、今思い返してみればツールに言われた通りに入力していただけだったので、確定申告についての理解はほとんどないまま、つまりは「やり過ごしていた」だけだった。

税務署からの電話を切ったあと、自分であらためてその年の確定申告を見直したけれど、どこがどう間違っているか、サッパリわからない。ちゃんと理解しないで、ただツールに指定されるがまま入力していただけだった自分を悔やんだ。

税務署に電話を掛け直し、間違っている箇所について聞いても、「貸借対照表がまちがっています」「詳しいことはご自身で調べてください」との一点張りでなかなか教えてくれない。

困り果て、さらには仕事もバタバタしていた時期だったので心身ともに余裕がなく、私はTwitterでこんなヘルプをすることにした。

「わからないことがわからない」という状態にあった私は、完全にお手上げで、ひとりで解決することを諦めて「プロに頼るしかない」と思った。その時には会社員をやめて個人事業主だけで仕事をしていたので、そろそろ税理士さんにお金周りのことを依頼してもいいかな、と思っていた時期だったこともある。

そしてこのツイートをして、何人かの知人友人から連絡をいただき、一番はじめに連絡をくれた友人に、税理士さんの紹介をお願いすることになったのだった。

友人が紹介してくれたのは、個人の税理士さんではなく、さまざまな税理士さんが所属している、とある法人だった。その会社と契約すると、担当の方がひとりついてくださり、税務面のさまざまなサポートをしていただける。

まず、はじめての面会をしてみて驚いた。私は税理士さんに対して「ピシッとしている真面目な方」という固定観念をなぜか持っていたから、当日に打ち合わせに現れた方が、想像よりも若く、そしてラフな感じの方であることにびっくりしたのだ。

最初の面会から、お金についてのいろんなお話を教えていただいた。

その時の私の「確定申告の間違い」についてざっくりと説明すると、確定申告が構成されている損益計算書と貸借対照表のうち、後者の「資産」にあたる部分が間違っていたのだという。「負債」として計上するべき部分を「資産」として計上していたため、「資産」がマイナスになり、意味不明な表になってしまっていたのだ。

そんな説明を受けたあと、修正をお願いするのに加えて、月々のお金面のサポートと、毎年の確定申告についても依頼するようになった。

税理士さんにお願いしてよかったな、と思うことは、いくつもある。

まず、言わずもがな確定申告や、日々のお金の管理ストレスから解放されたことだ。中でもやっぱり毎年2月頃にやってきていた「確定申告しなきゃ……」という焦りがなくなったことは一番大きい。

あとは、お金について不安なことや、わからないことがあれば、なんでも相談に乗ってもらえること。たとえば私の場合、本屋を始める時にどのような管理の仕方が最適なのかや、借り入れについてのアドバイスや事務的なお手伝いもしてもらったし、最近で言えば、インボイス制度が始まるにあたって、どのように立ち振る舞えばいいのかについて相談に乗ってもらったりもした。

とはいえ、こういった実務的な部分は、依頼を始める前にも想定の範囲内だった。

けれど、想像しなかった「よさ」がある。

それは、「チームの一員として、人間的なお付き合いをして応援してくださる」こと。そのことが、何より税理士さんにお願いして本当によかったところだと思っている。

今私がお願いしている会社の税理士さんたちは、全員が全員、ただのクライアントを超えて「人」として向き合ってくださるのだ。

私が自身でやっている本屋でポップアップに出店した際には顔を出してくださったり、担当編集した本が出版された際には、その本を買ってくださったり。税理士さんへの依頼は、「お金の管理の外注」といった淡白なものなのかなと想像していたけれど、そんなことはまったくなかった。柔らかく優しく、じんわりと心が温まるような関係性。

「あかしさんは、マイペースに、自分の心を守りながら成長されているところが素敵です」

ある日、打ち合わせの日にこんなことを言われたことがある。「成長第一」ではない私の考えをしっかりと理解した上で、リスペクトをしてくださっていることが伝わって、本当にうれしかった。

フリーランスで働いていると、「チーム」を感じることはなかなかに難しい。もちろん、プロジェクト単位でチームを組み、そこで素敵なチームワークを感じることは多々あるのだけれど、自分のことをずっと俯瞰的に「定点」で見てくれる人というのは、意外にいないものだ。

だからそういった意味でも、日々のお金事情について赤裸々に共有し、私の状態を定点的に見ていてくださる方がいることは、とてもとても心強い。

あの年、確定申告を間違えていなかったら、私は今も自分でわからないながらも適当にお金の管理を済ませていたのかもしれない。そして困った時には、ただただひとりでパニックになっていたのだろう。

あの出来事があって、今の税理士さんに出会えて本当によかったな、と思っている。

ここからはちょっとTIPS的なお話。

確定申告は、自分でやるにしても、税理士さんにお願いをするにしても、「書類の管理」が欠かせない。

私は「確定申告が間違っている」と言われた時に、その年の領収書や確定申告の書類を探し出すのがとても大変だった。ちょうど引っ越しの時期が重なっていたこともあって、物理的な書類があっちこっちへ行ってしまっていて、探すのに5時間以上要したと思う。もしこれをPDFでひとつのファイルにまとめてPCに保存していたら……と思うと、その無駄な時間のもったいなさを悔しく思う。

あとは今、税理士さんに定期的に領収書や書類を郵送しているのだけれど、そのコストもどうにかしたい。「何の資料を送って、何を送ってないっけ?」というのもすぐに忘れてしまい、自分の中でよく混乱してしまう(お恥ずかしい)。

書類の管理を、簡潔に、わかりやすく整理する。それは個人事業主に欠かせないスキルだ。

そんな時に便利なのが、今回ご紹介いただいた「Adobe Acrobat オンラインツール」だ。

PDF書類の結合機能や、書類のサイズの圧縮機能があって、さらにモバイルアプリの「Adobe Scan」だったら、撮った写真をテキスト検索可能なPDFに変換できる機能もある。膨大に存在する領収書や書類を整理し、ひとつのファイルにまとめることができるのだ。

毎年の確定申告のファイルを、ひとつのファイルでまとめて保存しておけば。税理士さんとの書類のやりとりをオンラインで完結できれば……。想像しただけで、なんと便利なんだろう、と思った。

今年からさっそく私も利用してみる予定だ。少しでも、税理士さんと自分の負担が減らせるといいな。みなさまもぜひ、使ってみてください!!


ありがとうございます。ちょっと疲れた日にちょっといいビールを買おうと思います。