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甲斐扶佐義 写真展

=甲斐コロ毎日新聞取材記事20231018京都面.jpg (1200×1401) (galerie-miyawaki.com)

 甲斐さんと会ったのは今から三十数年前。この写真がきっかけだ。この写真をとったのは甲斐さんで、以前彼のホームページから借りてきたものだ。中央の人物はジャズピアニストのMal Waldron氏。若い私と、その隣にいるのは亀の井別荘の中谷太郎氏である。このころは福岡に住んでおり、両親が借りていた小さな別荘が湯布院にあったため、機会があるごとに湯布院を訪れていた。音楽祭のボランティアとかをしていた関係で、この時はMal Waldron氏のコンサートに呼ばれていったのか、お手伝いをしたのかどちらかだろうと思う。この写真はおそらく由布院駅でとられている。中谷太郎氏とWaldronを迎えに行ったときのことだろう。

 こうして甲斐さんと出会って、京都の八文字屋というバーに行くようになった。とはいっても年に1,2回しか行かないのだけれど。

 彼の写真の多くは、経営したカフェ、ほんやら洞の火災とともに燃えてしまった。残ったネガから素晴らしいものをえりすぐった展覧会が現在京都のギャラリー宮脇で展示があり、そのオープニングパーティーに行ってみたのだ。鬱状態の私が楽しめるかどうかはわからない不安の中ではあったが。
 ギャルリー宮脇 Galerie Miyawaki(京都 Kyoto)/ 甲斐扶佐義写真コロタイプ限定エディション (galerie-miyawaki.com)
 
 昔から、甲斐さんは町中で京都で見つけた美女の写真をとりまくっていた。そして名刺を渡して、誕生日にはただで飲ませる、と言って八文字屋に呼び込んでいた。そしてその美女を目当てに男たちが集まった…らしい。私は年に1,2度しかいかないから、そのビジネスモデルの成功の度合いはわからない。今回の展示の中にもその中の一人の写真があった。

 そしてやはりだが、写真家のもとには美女が集まる。私もそこにいた美女の一人を食事に誘い出し、そのあと二人で彼のバー八文字屋に向かった。1年ぶりぐらいに。 

 八文字屋は木屋町にある魔の巣窟のようなバーである。おそらく日本で一番汚いバーだった。過去形で書くのは、今はかなりきれいになったからだ。 昔は入ると動物の死骸の匂いがした。カウンターに座って、目の前の乾き物スナックをネズミが食べに来ていたこともあった。

 が、驚いたことに、動物の死臭はもうしなかった。展示会から流れてきた人でいっぱいだったので、人間の匂いにかき消されたのか、あるいは現在バー八文字屋で展示中の京都大学吉田寮写真展のために片づけたせいなのか。あの動物の死臭が懐かしく感じた。
 
  私はまた甲斐さんに写真を撮られていた。そこには美女に鼻の下を伸ばしている私がいた。昔のビジネスモデルは今でも健在だったのだ。

 
   

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