Solanaアビトラ戦場で、1日で億以上稼いだボッター達 -あのぷりさんも諦めた戦場で-

この記事は、Solana Advent Calendar 2023(https://adventar.org/calendars/8810)の25日目の記事になります。

お久しぶりです。皆様。

FTX崩壊に続くSolana危機から一転、TwitterをみればSolana Solanaと皆が騒いでいる状態で、微笑ましい限りでございます。

さて、FTXの崩壊の阿鼻叫喚の中、とんでもない爆益を出している人たちがいました。

そう、BOTを駆使したアービトラージャー達です。

彼らが何をどのようにして儲けたのかをみていきましょう。

記事は無料で読めます。価格は投げ銭用です!



①ブリッジに時間のかかるトークンは、アービトラージの良戦場



ブリッジに時間がかかるアセットは、アービトラージャーの格好の獲物です。「鞘ができてからやってくる」人たちに対して、事前にブリッジをしておいた人が100%優位に建てるためです。拙著のアビトラ戦記にも同様の記載をしており、いわばアービトラージャーの中では常識の一つでした。

特にブリッジに時間がかかるアセットは狙い目です。その典型が【高apr-apy】で既に述べた、SolanaのrenDOGEです。DOGEチェーンからSolanaチェーンにブリッジをするのに50分近くかかるので、DOGE下げのときに、事前にDOGEをデルタニュートラル状態でSolanaのrenDOGEにしておいたものと、そうでないものとの間で決して埋まらない差ができるからです。このあたりは【実践】の【イーロン砲】編もご参照ください。他の例としては、SolanaのMaticpoが挙げられます。こいつは、PolygonからワームホールでSolanaにブリッジしたMaticです。PolygonからSolanaに持ってくるときに2‐30分かかります。 また、片方のチェーンでは担保として取り扱われているけれども、もう片方のチェーンでは担保としては取り扱われていないといった歪みがある場合は、価格暴落時に売り圧のずれを生じさせる原因ともなります。

拙著 「アビトラ戦記(2022年8月頃発行)」の「鞘の生じやすい場所」より抜粋

アービトラージャーの中で常識とはいえ、初心者に知られたくないテクニックではありましたが、これまたアービトラージ界隈では有名なぷりさん(https://twitter.com/Pri_eth)がnote(https://note.com/pri_eth/n/n2fa58077a1a8?sub_rt=share_h)で、(大変迷惑なことに)全てをばらしてしまったので、もう観念して私も書いてしまう決意ができました笑

②ボッターがやってくる…!


良戦場となると、自動取引プログラムによるトレーダー、つまりー、ボッターがやってくるものです。もちろんやってきました。

大要、SolanaにrenDOGE(renprotocolをつかってwrapしたDOGE)とMATICpo(wormholeをつかってwrapしたMATIC)とUSDCを常備しておき、Solana側で高値がついたら、そちらで売り、他方で、それぞれのネイティブチェーンやそれと接続するDEXで安値で買い戻すというBOTです。Solanaとネイティブチェーンの間で、在庫のMATIC/DOGEが偏ったらブリッジして調整しているようでした。

こうしたBOTがいくつか見受けられましたが、しかし、思ったより競争が激しくなりません。

理由は一つだと考えられます。

そう、EVMと非EVMまたぎだからです。

EVMの正確な定義はググって頂くとして、誤解をおそれつつあえてざっくりいうと、イーサリアムと同じプログラム言語でDappsやスマートコントラクトが作れてしまうチェーンのことをEVMチェーンといい、それ以外のチェーンを非EVMチェーンと呼びます。

そして、じっとボッターの方々を眺めてみると、ボッターといえど、EVMと非EVMを縦横無尽に駆け巡っている人はそこまでいないことに気が付きます。それもそのはず、学習コストが倍になるからです。もちろん、ボッターの中には、EVMと非EVMの違いなど気にもかけずに走り回っている方もいると思いますが、少なくとも参入障壁になっていることには間違いありません。

かくして、Solanaには数えるほどしかいない、renDOGE&MATICpoボットが、鞘を独占して毎日のようにアービトラージをしているという状態が続いていました。ただ、ボラが大きくなると、ボットで保有できる在庫の上限に達するのか、人間が参加して鞘をかっぱらうチャンスも時々でてくるという状況にありました。

③だれが流動性を?


鞘取りの基本は、流動性です。流動性がないとなかなか鞘はとれないです。当時、SolanaにMATICpoの流動性を出している主体は二つありました。

一つは、ATRIXです。ATRIXは、Uniswap v2型のプールを基調としつつ、そこから当時存在した板取引DEXであるSerum DEXに板を出させるというプロトコルで、そこにMATICpoとUSDCの流動性が0.7M強ほどありました。しかし、これではどれだけバグっても大した鞘にはなりえません。なぜなら、何らかの理由で、流動性にあるUSDCを一瞬ですべて吸い尽くしたとしても0.35Mにしかならないからです。

そこで、注目されるのがもう一つの流動性の主体です。そう、それがJump Tradingです。Jump Tradingないしそのクリプト部門であるJump Cryptoというのは、仮想通貨でマーケットメークをしているマーケットメーカーの一つです。

彼らがやっていることはインサイダーしかわかりませんが、マーケットメーカーである以上、Solana中に板を出しまくっていたJumpは、大要、次のことをやっていたのではないかと思います。

①アセットをどこかから借りる。
②Solanaでアセットを高く売るように板を出し、売れればCEXで安く買い戻す。
③Solanaでアセットを安く買うように板を出し、買えればCEXで高く売る。

シンプルですね。マーケットメーカーはこうして飯を食っているわけです。例にもれず、Jumpは、SolanaにMATICの売り板と買い板を出しまくってました。

そして事件は起きます。

④FTX崩壊の裏側で…



FTXから資金が引き出せないという悲鳴がツイッターでやまない中、なんとSolanaで1MATICpo=88ドルの巨大な買い板が出始めたのです。88ドルの板が引っ込んでも、40ドル、16ドルと次々にでてきます。

当時のMATICの価格ご存じですか?1MATIC=0.77ドルとか0.85ドルとかですよ?市場価格の100倍近くの買い板がとてつもない金額で出てきたわけです。

当然、先に述べたrenDOGE/MATICpoボットたちはそれを見逃しません。ネイティブチェーンから、次々にBOTでSolanaに運搬されてきました。そして、一撃で約5600MATIC(当時4500ドルほど)を418000USDCにするなどのアービトラージを次々に決めたのです。

①一番グロカッタやつ(当時のスクショです。是非拡大してみてください。)

②その次にグロカッタやつ(こちらは今からでも無料で確認できます。)
https://birdeye.so/profile/DbmimdEBtWNU6aBr7p7UbmF1nd8xsvLJEav9MxJuiYvy?chain=solana

こうして一晩、寝ているだけで億り人、いや、2億り人ボッターが出てくる事態となりました

⑤何が起きたのか。



「当時、Solanaに何億もぬける流動性があったわけない!」

みなさんそう思われると思いますが、これは買い板を出してしまっていたウォレットを辿ればわかります。

そう、Jump Cryptoです。

プロ中のプロの彼らに何があったのでしょうか。

真実は彼らにしかわかりませんが、私なりの推測をしてみました。

①当時、FTX Internationalから資金が引き出せないと大騒ぎになる中で、FTX International内のクリプトの価格が完全に壊れていました。相場の何倍にもなるといった具合です。

②その理由は分かりませんが、当時一部の悪い人たちが、「パナマからなら資金が引き出せる」「FTX JPからなら引き出せる」ということで、ウォッシュトレードをしたという噂があります。つまり、引き出せない口座から、引き出せる口座に資金を移すため、引き出せない口座でショート引き出せる口座でロングを同時に行い、引き出せない口座の資金を全部使って価格を吊り上げ、ぎりぎりのところで、引き出せる口座でロングの利確を行い、資金を引き出そうとしたということです。現物でも同様のことができます。

パナマのKYC口座を買った外国インフルエンサーもいたようで、このような説明は筋がとおると個人的には思っています。

③その結果、MATICの現物価格も跳ね上がり、FTX内部で100ドル等を記録したのではないでしょうか。もしそうであれば、FTXとSolanaを使ったマーケットメイクをしていたJumpのBOTが、FTXから資金が引き出せないことを検知しきれず、「FTXのMATIC価格が100ドルならSolanaで88ドルでMATICを買おう」と動作をしても不思議ではないですよね。

かくして、Jump Tradingは、野良ボッター達にぼこぼこにされて、一晩で何億も失ってしまい、そのまま、Solanaのマーケットメークから撤退してしまいました。

⑥終わりに



「世界にはすごい人がいるもんだ」

そう、思ってしまったそこのあなた。

実はこの億り人の一人は、DEG鯖にいる日本人の方なんです。誰かは秘密ですが👀

彼がこうしたチャンスをつかめたのは次の3つの要素が重なってのことでしょう。

①CEXリスクをとっていなかったこと。もし、FTXとSolanaでの裁定であれば、彼のBOTは、Jumpと同様ボコボコにされていたに違いないこと。

②安定稼働していたこと。FTXが崩壊する中で、めちゃくちゃになっても止めなくても済んだというのは非常に大きいでしょう。

③人力では張り付ききれない戦場をBOTにより完全支配することで、戦場での取りこぼしをなくしたこと(BOTがあれば私も私生活上の都合なしで、同じようなことをしていたでしょうし、ぷりさんも一緒でしょう。)。

草コインを当てるだけがクリプトではないです。是非、いろんな稼ぎ方を模索してみましょう!




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