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こんぽんと歓楽街のガラス

新宿。歌舞伎町。
大寒波の歓楽街を根本さん、いや、こんぽんと歩く。
今にも凍えそうに縮まる高校の後輩。
風林会館を横切る。喫茶店「パリジェンヌ」の店内をガラス越しに覗き、かつての銃撃を想像してみた。

幾多の電飾に照らされた区役所通りを進む。鈍い音が乾いた風へと吸い込まれていくバッティングセンター。
時折、清々しい金属音が響く。今度はネット越しのしたり顔を想像した。

その先にある餃子屋に入店。2階に上がり手前のテーブル席に着く。
微力な暖房に当たるも、店内にも押し寄せる寒波の猛威に圧倒される。

豆苗と餃子を数種類注文。
待ちながら一服。ベリー風味のフレーバーが凍てつく店内に広がる。
紙でなく葉っぱで巻かれた吸い殻が大人しく灰皿に横たわる。
向かいで徐にココアシガレットを咥えた。

豆苗が到着。ニンニクがたっぷり効いた旨みが広がる。
茎の緑で埋まっていたお皿の白地が早くも姿を現してきた。

豊富な餃子を前にして箸が進む。
レモンサワーをちびちびと飲むこんぽんと、高校時代の話で盛り上がる。
高校時代を知っている人と、同じ業界にいてお酒を飲んでいることに、少なからず感慨深い気持ちを思ったりしてみた。

一口飲み、「高校生ってあの頃どんなものだったかな」と考える。
あの子の飼い猫の優しい名前だったりが思い浮かぶ。
向かいでまた火を点ける音。
餃子と同じくらい美味しそうに吸い込む。

さらにお酒と餃子を追加し、ワンタンで温まる。その間だけ寒波を忘れるように体温が上がった。
一息、二息ついて椅子にもたれるこんぽん。
三度訪れる寒波。

窓際の席は冷気が強い。
ガラスの外のさらなる寒さを黙視し、「このまま横になりたい」とこぼす…同意。

アウターでは凌ぎ切れない寒さが待ち受ける外へと渋々繰り出した。
「寒いって言葉にしたくないけど、さすがに寒いですね」と残念そうに言い、ポツポツと来た道を戻る。

「けっこう酔いました」と、サブナードへ階段を下り、多少の暖を取る。
ささやかではありますが、といった程度の温みで鼻を啜る。

改札で高校の後輩の背中を見送って別れる。
地下街に並ぶ店の中をまた、ガラス越しに覗いた。店じまいを急ぐ姿を見て、自分も改札へと急ぐ。
眠そうな猫の写真を思い出した。


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