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いおりさんと熱い球体

まだ冬の寒さを残す春先。
赤坂の釣り堀で、いおりさんと村松とだらだらと空き時間を楽しむ。水音がざわざわと周辺に響いている。
水中に浮かぶ魚を探して歩き回った。

釣り堀を出て、地下鉄の入り口から吹く風に逆らって階段を下った。
丸ノ内線と日比谷線を乗り継いで、恵比寿へ向かう。
村松と別れ、高架下の壁画を横目に駒沢通りを渡り、隠れ家のようなたこ焼き屋に入った。

いおりさんは、ハイボールを頼み、それをお猪口に入った熱燗のようにちびちびと飲んでいく。
梅水晶の歯触りを楽しみながら、またちびちびとグラスを進めていく。

注文した4種類の創作たこ焼きが届き、熱々の球体を恐る恐る口へ運んだ。
熱い。と本音。丁寧に冷ましながら味わっていく。

ハイボールの横に瓶のコーラを置き、少し冷めたたこ焼きと一緒に味わっていく。
まだ熱い。でも美味しい。適温になったたこ焼きは相変わらず綺麗か球体を保っていた。

次に届いた牛すじに、意表を突かれる量の一味で赤く染めていった。
癖で辛くしてしまうと微笑んだ。
一口食べる。美味しい。でも辛い。

学生時代を振り返りながら、芸人に至るまでの話を、時折り照れながらも、転々と教えてくれた。
ハイボールのグラスよりもコーラの瓶が底を突いていた。

店を出ると、僅かな寒さが肌に触れた。
信号を渡り、恵比寿の夜を静かに下っていった。


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