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海外のNFT反対派にNFTの何がだめなのか実際に聞いた話

昨年末に、「NFTって結局怪しいの?怪しくないの?」と、自分で界隈に入ったり調べたりしてまとめた以下の記事を公開していました。

それからしばらく経ち、結局自分は「現状NFTに多くの人を参入させるのは危ないので、すでにNFTに参加してる人たち向けにやってみようか」と、実験的にNFTの出品をしました。
(このnoteのサムネはその出品した作品の静止画版です)

すると案の定、「あなたの作品は好きですが、NFTを応援することはできません。あなたのFANBOXを登録解除しました」と、海外のフォロワーからリプライをいただきました。

※FANBOX:月額料金でクリエイターが限定コンテンツを見せたりとかいろいろするパトロンサービス。

ところで私は上の記事を書くにあたってNFT界隈の人たちと交流してきましたが、海外の反対派と直接交流したことはありませんでした。
そのため、noteに書いた内容はおもに批判的な別の記事や、別の人のリプライ内容などをふまえてのものです。

私のところに実際に批判的なリプライをもらったとき、海外の反対派がどう感じているのかをより知るためのチャンスだと思い、その後しばらくリプライを交わしていました。今回はそれらの内容をまとめて紹介します。

※前提として、今回会話したのは私のフォロワーと、おそらくエゴサか何かで駆けつけたもうひとりの反対派のみであり、どちらもNFTや暗号資産に精通しているかは定かではありません。
当然ここで得た情報はあくまで「その人が思っている」ことであり、反対派の総意ではありませんが、記事中ではわかりやすく表記するためにこの「反対派のフォロワー」を「反対派」と省略して表記することがあります。

※実際に会話したときは内容が行ったり来たりしていたのですが、わかりやすくまとめるために、会話の順番を入れ替え、またある程度カテゴリで分けて記します。

なぜNFTを批判するのか?:詐欺的な金儲け

反対派の意見と、それに続くやりとりは以下のような内容です。
反対派と私のやりとりをわかりやすく表記するため、noteの引用機能を使って枠を作っていますが、先程書いたとおり文章の順番は短くまとまるように入れ替えたりしてますので、引用というわけではありません。

反対派
NFT界隈の人(コレクターや投資家などの、投機で稼ぐ側)は、アーティストを詐欺にかけたいので、友好的に振る舞います
当然それは「これはお互いにとって有益だ」と言いこそするものの、実際はそう思い込ませてるだけです。


NFTに詐欺が多く、現状は悪いことが多いことも理解してるし、広めるべきではないとも感じています。しかしNFT自体はあくまで手段であり、詐欺だとは思いません。
(※ここで私の言った詐欺が多いとは、主にスパムメッセージを送ってウィルスを送ったり、偽のプロジェクトで金をだまし取ろうとする直接的な詐欺のことであり、これは本当にNFT界隈だと日常茶飯事で起こるほど多い)
たとえば投機としてではなく、FANBOXやSkebのようなクリエイターとファンとをつなげるシステムとして活用できるなら、自分はNFTを導入するのもアリだと考えています。
また投資家の活動も、当然彼らは最終的に自分たちが利益を得るために活動してるでしょうが、それ自体は本質的にはどこの企業でも誰でも同じことで、別段問題があるとも限りません。
そして、NFTで問題視されてる環境問題や詐欺は確かに解決されるべきですが、クリエイターが生活するための利益を得ることも重要です。
それらをふまえたうえで、私は極力表立って宣伝せず、また"絵描きとして見る~"の記事をつなげてリスクを明確にし、そのうえで、すでにNFT界隈にいる人をメインに売るつもりですが、それでも問題がありますか?

反対派
暗号通貨の価値を保つためには、新規参入者を増やす必要があります。
そのためあなたのNFTを買った人も、価値が暴落する前に作品が売れることを望んでいるため、新しい人を界隈に勧誘しようとするでしょう。
NFTを作ることそれ自体が、NFT(界隈)を支持していることです。あなたは「NFTは悪いことばかりだが、金儲けのほうが大事だ」と言っているようなもので、それは道徳的に批難されるべき行いです。
NFTにあるのは価値でなく、スペクタクル(見世物的話題性?)と強欲だけです。


確かに「NFTは悪いことばかり」で「金儲けは大事」ですが、このふたつは結びつけて考えなければいけないことでしょうか?
「NFT」「NFTを扱う人たち」「NFTを扱う悪い人たち」を分けて考えることはできないのでしょうか?
NFTのどこに価値があるのかは個々の判断に委ねられるのでとても難しい部分だと思います。現にいまのNFT界隈に価値があると感じている人がいる以上、簡単に価値がないと断言はできないと感じます。

反対派
もしあなたが有害な方法でNFTを行うなら、あなたはその有害性から切り離すことはできません。あなたがそれを生み出してるのです。
両者は本質的に結びついています。詐欺師やペテン師がNFTを好むのには理由があるのです。
NFTは依然としてシステムに問題がありながら解決できておらず、依然としてNFTはURLを指していて、分散化されていません。
(※現状、Openseaなどの主要な市場でつくられるNFTは、大容量の画像データそのものをトークンとして埋め込むことが困難なため、代わりとして同じく分散型のファイルシステムであるIPFSと呼ばれるものにデータを保存し、ブロックチェーンにはそのURLを記載している)
NFTには知的財産権も所有権もなく、誰でも画像のコピーを保存することができます。NFTによって達成される価値は何もなく、あなたの利益の代償は地球全体が払うことになるのです。
(※この地球が払う代償については、次のカテゴリにて)


先に言ったように、私はNFTそのものが有害だとは思えません。
たとえば海外においても以下の記事ではCryptoPunksやBored Ape Yacht ClubなどがMLM(マルチ商法)に酷似してると指摘されてはいますが、「この技術を普遍的に断罪するのはあまりに弱気だ」とも記しています。
NFT Projects are just MLMs for Tech Elites
https://every.to/napkin-math/nft-projects-are-just-mlms-for-tech-elites
NFTに特別な権利はなく、完全な分散化もされておらず、誰でも作品をコピーできることについては、私の記事で書いたとおりすでにわかっていることです。しかし、作者と所有者を繋ぐレシート(NFTとして成立している売買取引の情報)があれば、そこにはまず承認欲求的な価値があるでしょう。
それは一見無意味に思えるかもしれませんが、Youtubeのスーパーチャットのように、ファンとクリエイターをつなげる意味では価値があります。

その後数日待ちましたが、いまのところこれより先に返信は来ておらず、またこの時点でフォローも外されていたので恐らく新たな反応は来ないと考えられます。

これらのやりとりから、反対派は「NFTが唯一無二の価値であると言いながら、実際には何の権利もシステム的な保護もないこと」「それにも関わらず悪い部分を隠しながら投資家やコレクターたちが儲けのためにNFTを広め、危険な暗号資産の界隈に人を呼び込んでいること」が詐欺であると主に考えているようです。
また、それを知っていようが知っていまいが、クリエイターがNFTに参入することは「詐欺の金儲けのための道具を増やす」ことで、彼らに加担しているに等しいと思われているようです。

NFTのシステムの問題に関しては、「絵描きとしてみる~」でもひととおり書いたとおりで、唯一無二でもなんでもないNFTに存在価値がないのか?といえば、そうではなく、売買情報が残るレシートだけだとしてもそれなりの使いみちはあるのでは?と考えています。

つまり重要なのは事実と異なる情報が流れていることですが、これは一般大衆にわかりやすく説明しようとすること・また概念として"NFTアート"を指してまとめて伝えようとすることによって起こる部分も大きいです。

たとえば
「NFTとは複製が容易なデジタルアートに唯一無二性を与えることで価値を与え、世界で一つだけのデータとして売買できる」
と書けば、誰でもわかりやすいですが
「ブロックチェーン技術によってNFT=非代替性トークンをイラストに紐づけて、スマートコントラクトによって非中央集権的な売買を行う。作品自体は結局誰でも複製できるが、売買記録はメタデータとして確認でき、いつでも本当の発行者と所有者を確認できる」
と書いたらどうでしょう。おそらくNFTを知らない人が読めば、見慣れない単語が多すぎて滅茶苦茶に目が滑ると思います。

コレに関しては「NFTは誰でもいつでも閲覧できる売買記録=レシートのようなもの」という説明をしたうえで、「それを活用してデジタルデータを売買することで、ファンとして"正規の手段で購入した"という実績を残せる手段がNFTアート」みたいな段階的な解説が大切かなと思います。
(NFTアートの説明に関してはまた人それぞれ解釈が違うと思うので、この説明で万人を頷かせることはできないでしょうが……)

当然、「問題はあるけど今のブームに水を差すのも」とリスクを隠したり、そもそも発信者自身が本当に間違った認識でいることもあります。
こうしたことは確かに罪の意識がないだけで詐欺的かもしれませんし、非常に厄介な問題だと言えます。

しかし、じゃあそこにクリエイターが参入したら彼らの悪事に加担したというのは、ちょっと納得できませんでした。
「NFTは詐欺師が金稼ぎの道具として使ってるから、悪用される可能性がある時点でその行為は悪ですよ」が通ってしまったら、「ヤクザがタピオカミルクティー屋でシノギにする可能性があるからタピオカを売るのは悪」とかも通ってしまうのでは……?みたいなモヤモヤがあります。
いやすごい変な喩えになってしまいましたが、別の例えで言うと海外の観光地ってだいたい、日本に比べたらめちゃくちゃスリとかぼったくりが多くて治安が悪いわけですけど、じゃあそこで商売するのは何も問題なくて、あくまで悪いのはスリやぼったくりだよね……と思ってしまいます。

それに、身も蓋もないことを言ってしまえば、じゃあクリエイターが参入しなければ投資家は困り、NFTはマイナーなまま消滅したかと言えば、たぶん彼らは今までどおり数多の手段でNFTを売り出す方法を模索して勧誘を続けてると思うんですよね。

それだったらやるべきことはNFT自体を否定することではなく、NFTがどんなものか、またリスクは何があるのかを明確にして、一般に周知させるのが重要なのではと感じます。
まぁそれが難しいんですけど……


なぜNFTを批判するのか?:環境について

これは先のやりとりで反対派が言った「あなたの利益の代償は地球全体が払うことになるのです。」から続く話です。


地球全体の代償とは、環境問題のことでしょうか?
例えばイーサリアムはPoS方式を目指していますが、そうなれば反対派も環境への問題はないと考えますか?
(※NFTでおもに使われている仮想通貨イーサリアムはPow方式というシステムを採用しており、マイニングという大量のPCによる莫大な計算処理によって売買取引の記録が為されている。結果、多量の電力消費とそれに伴う発電所からのCO2排出などが問題になっている)

反対派
環境破壊はその一部("地球全体の代償"の一部?)に過ぎませんが、PoSでそれが解決されるかどうかについても懐疑的です。
システムの不誠実さが問題であり、それを解決すると言いながら、未だ解決されていません。


少なくとも懐疑的であるならば、実際にPoSになった結果を待つまでは誰も批判も肯定もできないでしょう。

今回の議論では殆どがNFT界隈の人たちに関する話だったので、環境問題の話題が出たのはごくわずかでした。
また、その言葉もやや抽象的だったので、相手が具体的にどう言いたいのかはイマイチつかめていません。

とはいえNFTの環境問題(私の場合は環境問題よりは半導体不足の影響を危惧しています)は当然イーサリアムでは重要な課題です。
上のやりとりにあるPoS方式はイーサリアム・プロジェクトが今後実装しようとしてるもので、マイニングとは別の計算処理システムによって、一回の取引にかかる消費電力を大幅できると考えられており、すでにカルダノ等の一部の仮想通貨は先駆けてこのシステムを採用しています。

しかし、このイーサリアム2.0は2020年12月に発表され、段階的にアップデートを続けてきましたが、未だPoS方式にはなっておりません。

私がまだNFTを広めたくない要因としては、このイーサリアムがまだPoWのままであるという理由も少なからずあります。


なぜクリエイターを批難するのか?


海外の人が、(たとえいままで一度も応援のコメントを送る手間をかけなかったとしても)NFTに対してネガティブなことをすぐに言いにくるのが私にはどうしても理解できません。
そんなことをすれば、応援してくれる人が多くいるNFTにかえってクリエイターが流れてしまうと思います。
FANBOXをやめたこととそれを言いにくる理由もです。まるで「お金とファンを失いたくばNFTをやめろ」と脅しているように見えます。

反対派
脅しではありません。道徳的な立場です。
この流行を広めるアーティストを金銭的に支援するつもりはありません。


NFTに反対してるからクリエイターへの支援を止めるということ自体は個人の主義主張ですから何も問題はありません。
問題は、それをわざわざクリエイターに直接伝えることです。そこにはNFT批判の意味はなく、ただいたずらにクリエイターの心を傷つけるだけです。

反対派
自分の選択したことがどんな影響を与えるかを把握することが大切です。
あなたはNFTが自身にどんな悪影響を与えるかわかっていないようで、私は、それを伝えるためにこうして会話しています。
(以下、環境問題やシステムの欠点などの話に続く)

私のこのやりとりのきっかけでもそうですが、NFTをはじめたときには批判とともに「残念です、さようなら」といってフォローを外したり、それこそ私のように支援を打ち切られることもあります。

やりとりのなかで書いたように、個人的にこれをする理由がイマイチ理解できなかったので、会話の途中途中で何度か訪ねたのですが、こちらもあまり納得する答えは得られませんでした。

たぶんここらへんは国民性というか文化の違いと言わざるを得ないのかもしれません。いや、見つけてないだけでもしかしたら日本の人でもわざわざフォロー解除をリプライで言いにくる人もいるかもしれませんが、少なくとも「NFTアートには手を出すな!」の記事を貼ったりして危険性を伝える人しか私は見たことない気がします。

正直この「支援やめました」「フォロー解除しました」はクリエイターをNFTにのめり込ませるだけで誰も幸せにならないというか、むしろ真っ先に幸せになるのは反対派が敵視してるNFT界隈の投資家とかになってしまうと思うのですが、まぁ道徳的理由だそうですから、たぶん何を言ったところでどうしようもないかと思います。
(クリエイターを傷つけるメッセージを送るのは道徳的に良いのか……?)

まとめ

こうして文章で書き出してまとめると、相手の意見に対して私がカウンターで返すみたいな行動の繰り返しになってしまい、どうしても反対派の意見が弱く見えてしまう気がします。
しかし、反対派の言ってることは概ね正しいとは思います。
私自身、NFTは20年前のインターネットのような、そこらじゅうにウィルスや詐欺がある危険地帯だと思ってますし、それ以外でも問題は山積みだと感じるからこそ、NFTをポジティブなものとして紹介することをほとんどやらず、リスク面ばかり紹介してるわけですから。

しかし、今回の反対派は完全に「暗号資産での金稼ぎ=悪」として、すべてを結びつけて考えてしまっている印象がありました。

反対派にしろ、賛成派にしろ、コミュニティに入るとどうしても同じ意見の集団に影響され、自身にもバイアスがかかりがちです。そのまま侵食されると、その集団を否定するひとたちを強く拒絶したり、過激に攻撃するようになってしまうこともありますし、外部から何を言われても「それは間違っている、私が正しい」とすら考えてしまうかもしれません。

私ができる限り両者の意見を客観的に見ようとしてるのも、後方腕組みマウントみたいな変なバイアスかかってそうだな~という自覚はめちゃ感じてますし、公平を気取っておきながら、自分と意見が合わないものに対して過剰に拒絶をしてないか?と時々不安になります。

みなさんもどうか、NFT参入を考えている場合はしっかり情報を精査するよう心がけ、また時には自分自身も疑っておいたほうが良いかもしれません。

ちなみにNFT参入した私はこういう穿ったスタンスで全く宣伝活動もしてないので全然売れてはいないです。よかったら見てね。
(NFT、記事で何度か言ったように、実は作品自体は誰でもダウンロードして保存できるのでふつうに保存しにいくだけでもいいです。当然権利は一切放棄してないし無断転載は厳禁なので私的使用の範囲内で。)

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