少女Xの反対側へと

暖かい空気の上を反逆の拳を突き上げるように冷たい空気が通り過ぎていく。
それはまるで綺麗事を並べる世界の裏で生きる孤独な少女の泣き声のように僕の心を塗りつぶす。
少女の声はどこまでも透明で、彼女が受ける悲しみがどれほど深く救いようのないものであるかを露わにしている。

誰かの悲しみで満ちているようで、結局は自発的に悲しんでいることに気がつく。
それは心地いいものだから害はないとばかり思っていた。
厄介なことにこの感情Xは自己陶酔の作用に加え、思考回路をより単純で生産性のないものへと変えてしまう効果を含んでいた。

少女が泣く場所へ。
全てを背負い走っていく。
上辺だけ美しい言葉達が頭をよぎる。
意味のないことを考え、悦に浸るのは味気のない平凡な毎日だけでいい。
今は現実に足をつけなければならない。


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