【広島商人】知られざる戦後復興の立役者(17)美しい心
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17 美しい心
板ばさみと葛藤は、私の思いもうけぬうちに進行していたが、魂の通じ合う援助の友も、思いもうけぬところに見出された。
寒気はいよいよ目の前に迫り、罹災者に対する仮家屋の措置は緊急を要し、広島へ早く資材を送るようにと、各方面に請求しても、その請求に応える気配はさらにない。
資材はますます不足してくる、物価は高くなるばかりで、関係方面よりは、電灯もない暗い夜でも、やっと夜の白みかかる朝からでも宅へやってきて、早く製品を配給するようにと、たび重なる督促をうける。
「久保さん、県庁へ行って、敷物はできましたか、はやく配給
してくださいと課長に話しこめば、久保さんがひきうけているから
大丈夫だ、久保さんのところへ行ってみてくださいと
いわれるんじゃあ、いったい、あんたあどうする気持ですかい。
おりおうたもんじゃああるの、何べんきても」
「そういうてくれやんな。
お金を請求されるよりも、まだつらいけんのう」
「へえ、困ったことよのう。
課長は課長で上司から、なにうしとるんか、
仕事の方はやりよるのかねときついやつが、くるらしいぞ。
うちの方もよ、毎日のようにせめられちゃあ、どうにもならん」
「まあ、もう少しの間、待ってください。
準備がはかどり出したら、どしどしやる考えでおるんじゃあがね」
「課長も、久保さんに、どんなにか期待しとるらしいぞ。
同じ課の内に猛烈な反対的意見があるけえの」
と、役所内部のことを話していく人もある。
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この文章は昭和31年11月に発行された「広島商人」(久保辰雄著)の冒頭です。(原文のまま、改行を適宜挿入) 広島は原爆が投下された約一か…
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