つねひこ

渡瀬恒彦

2017年3月17日、渡瀬恒彦が亡くなられたとのニュースが入った。
松方弘樹に続くように……?と目の前が真っ暗になった。
渡瀬恒彦のイメージは最初は十津川警部、タクシードライバーの推理日誌の二時間サスペンスの主演だ。共に90年代から続く人気シリーズ。
おみやさん(仮面ライダーの石ノ森章太郎原作)、9課シリーズといったテレ朝刑事ドラマものもこの延長
優しそうな推理の上手い人、それが渡瀬恒彦に抱いていた最初の印象。
だがこれが映画時代、70年代の渡瀬恒彦を見ると印象が180度変る

――――「狂犬」である

映画史に残るであろうギラギラした男、それが渡瀬恒彦だ
「仁義なき戦い」、菅原文太がどこか人情のある男、松方弘樹がギラギラしつつも貫禄のある男なら、剥き出しなのが渡瀬恒彦だ。
70年代の渡瀬恒彦本人がギラギラした男だった。
芸能界で本当に喧嘩の強い男は誰か?役者にはかつては喧嘩自慢やはみ出しモノも多いが、それでも伝説的に名前が上がるのが渡瀬恒彦。
演技力に自信が無かったらしい若い頃の彼は、スタントも使わず自ら危険な撮影も行った。俺には身体しかないと。
当時の東映はそういうところではあったが、それでも渡瀬恒彦のは群を抜いていた。
狂犬渡瀬恒彦が一番解るのは文字通りのタイトル「狂った野獣」
バイクからバスの乗り移るシーン、そのバスを運転して横転させるシーン、自分で志願して運転した。
それどころか他の俳優まで乗せて。
狂犬渡瀬恒彦映画として「狂った野獣」は必見。狂気の映画の世界へようこそ
「北陸代理戦争」ではそれで大怪我をして、予告編にはいたのに本編では代役に変ってしまうのだが。
助演男優賞をとった「事件」
主演としてクーデターの首謀者を演じた「皇帝のいない八月」の頃までくると印象も違ってくる

渡瀬恒彦で言うなら実録ヤクザものなら断然「実録外伝 大阪電撃作戦」
主演は松方弘樹、副主人公が渡瀬恒彦のギラギラした二人の男の物語だ。
成りあがろうとするギラギラした男渡瀬恒彦、彼が目を付けたのが松方弘樹だ。
ほれ込んだ男を誘うのに、ボクシングジムで練習する松方弘樹に挑む渡瀬恒彦。
殴り合いから始まる男同士の関係だ。
後半追い詰められた渡瀬恒彦は弘樹の所へ転がり込む。
女をあてがってやると言う弘樹。一人の女を指名するが、ソイツだけはという弘樹。
誰でも良いと言っただろという恒彦、弘樹はその女を宛がう。
だが抱いた後に、その女が弘樹の女だったと告げられる。
どうしてそれを言わなかっのか詰め寄る恒彦に、弘樹は誰でもと約束したからだと返す。
ここで弘樹と恒彦の関係は完全な物となる。こうして二人は命懸けの決戦へ挑む。
間に女を挟んでいるが、完璧な愛情が弘樹と恒彦にはあるのだ。
(完全にガンダム鉄血のオルフェンズのアトラとクーデリアは確実に大阪電撃作戦の松方弘樹と渡瀬恒彦だ)

濃厚な男同士の恋愛を描いた映画といえば「戦国自衛隊」だ
千葉真一演じる自衛官と、夏木勲の戦国武将の濃厚すぎるロマンス
この二人、出会った時から一緒に機関銃をぶっ放す共同作業。そして二人きりで褌で語り合う。
現代からタイムスリップした千葉真一は何故褌なのか?
さらに後半で二人で語り合う時、千葉真一が武将の格好を、夏木勲が自衛官の格好を。二人が服を交換している!
そして槍と槍がクロスする!二人の思いと共に高まる波!いやマジで、胡蝶無しで。メタファーに溢れすぎている。
戦国自衛隊で渡瀬恒彦が演じるのは矢野という自衛官。
どうもかつての彼は自衛隊の中で決起を夢見るもので、千葉真一が共に決起してくれなかった事に不満を思っている。
千葉真一の中のイクサを求める血を見抜いたのが渡瀬恒彦と夏木勲だった。
戦国時代にタイムスリップしても尚、浜辺から動かぬ真一に恒彦は行動を起こす。
他の自衛官を唆し、地元の女どもをかどわかし、舟艇に篭城する恒彦。彼自身は女に餓えての行動ではない。
だが乱交の最中恒彦は女には興味を抱かない。彼は何かを待つようにナイフで何かを彫っている。
この恒彦らの行為についに真一は武力を持って行動に移す。
裏切ろうとする自衛官を容赦なく撃ち殺す恒彦。自分の生き方には最後まで責任を持たなければならないと言って
自らの言葉を証明するように、最後恒彦は真一に撃たれ絶命する。
その手には木彫りの拳銃が握られていた―――
恒彦を手にかけた真一は決心し決起する、この戦国時代を夏木勲と共に戦うと
濃厚すぎる男の愛と嫉妬の物語、それが「戦国自衛隊」だ。

ここに上げた映画、現在狂った野獣以外はAmazonPrimeに無料であるという。是非、狂犬恒彦を見ていただきたい。
勿論、90年代以降の知的な、優しい渡瀬恒彦も魅力的だ。
タクシードライバーやおみやさんの恒彦もまた大好きだ。渡瀬恒彦も好きな俳優の一人だ。


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