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【人間観察】隣の可愛いおばさん

金曜の夕方。19時前。

「お疲れさまです~。」

隣の部の女性が席に戻ってきた。

50代のおじさんばかりの部の中で、彼女は紅一点。
その女性もおそらく50代なのだけど、品のある顔立ちに、小動物のような愛嬌があって。ふわっとした可愛らしさの中に、ふと色気を覗かせることもあって。

「隣の可愛いおばさん」
心の中で、私はそう呼んでいた。


あれ。どうしたんだろう。私は不思議に思う。
なぜならおばさんは、1時間ほど前に「お先に失礼します」と出て行ったはずだから。

部のおじさん達が、どうしたの?と尋ねる。

「スマホをデスクに忘れちゃって、取りに戻ってきたんです。」

おじさん達の慰め声が聞こえる。なるほど。

「家に着いて、酎ハイを開けたタイミングで、気付いたんですよ。スマホがないって。それでもう一度出社しちゃいました。」

私は思わず、『金曜の仕事終わりにるんるんで帰って、自宅で嬉しそうに酎ハイをプシュっと開けて、意気揚々と飲もうとした瞬間、あ!と忘れ物に気付くおばさん』を想像した。

ふふっと笑みがこぼれる。

どの動作も表情も、愛くるしいのだ。そのおばさんがすると。
福山雅治が何をしてもカッコいいのと同じ原理で。

「あースマホがあって良かった!では皆さん、良い週末を。」
そう言い残して、おばさんは颯爽と二度目の帰路へと向かった。

私は背中越しに声だけ盗み聞いていたから分からないけれど、周りのおじさん達もきっと、おばさんの再登場に笑みをもらったに違いない。



どこまでも可愛らしいひとだなあ。

私もいつかこんなおばさんになりたいな。
こんな風に愛らしく年を重ねたいな。

そんなことを思った、金曜日でした。

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