最近の #半分青い

5/1火

「立て板に水のように喋る」秋風羽織のアシスタント、菱本わかなの服装と髪型、繊細なものを過剰に乗せた感じがひたすらにかわいい。ピンクハウス…知識としてしか知らない私からすれば、ドラマ内で菱本わかなが着ているそれは十分に甘く可憐だが、当時のピンクハウスを知る人からするとあのスタイリングはまだまだ糖分が足りないらしい。ピンクハウスおそるべし。

すずめの父に対して電話でまくしたてる菱本の、

「"上等やないか"ということは、yes,d'accordということでよろしいですね?」

という台詞が良い。 d'accordはフランス語で、分かった、了解、という意味だけど、この当時のこういう層にはこうやってフランス語を混ぜる言い回し、流行ってたのかな。

5/2 水

すずめが秋風羽織に電話をかけ、父親が勝手に弟子入りの話を断ったことを詫び、「どうか私を見捨てないでください」と頼み込む。秋風の差し金で秋風羽織のアシスタント菱本と散英社の担当が楡野家をたずね、楡野家の説得にかかる。

そんな中すずめは一人場を抜け出して律に電話をかけ、あとはお母さんを倒すだけ、もう少しでいけそう、と状況を報告する。

すずめ「頑張る前に律の声を聞いときたかった」
律「告白か?」
すずめ「いや違う。」

これ、数話前にも似たようなやり取りをしていた律とすずめ。「告白か?」「冗談だな」というやり取りを真顔でできる相手。うまく例えが浮かばないけど、そういうことを言える相手というのは、とても貴重で、奇跡的な相手だと思う。まぶしい。

5/4 金

すずめの上京決定を祝いともしびにて梟会の四人でクリームソーダで乾杯。

律「すずめは悲しいのが長持ちしん。今泣いたカラスがもう笑う」

なおがこの時だけすずめをいつものように、スズ、ではなく「そいで?スズちゃん」といった感じで、スズちゃん、と呼ぶのがなんだか素敵。

なおの差し金で、なおとブッチャーをともしびに残し、律とすずめが二人だけでともしびを出る。外は天気雨。半分は青く、晴れていて、半分雨が降っている。

すずめ「ねぇ律、この前大雨の時あったやん。あん時さ、雨満喫しようと思って、土砂降りん中傘さして外出たの。そしたらやっぱり左側は雨の音聞こえんくて、今も聞こえん。

律……左側に雨の降る感じ、教えてよ。どんなんやったっけ。」

律「傘に落ちる雨の音って、あんま綺麗な音でもないから、右だけくらいがちょうどいいんやないの?」

すずめ「律さ、将来ノーベル賞とるんやろ?なんか発明してエジソンが取り逃がしたノーベル賞、とる。……雨の音が綺麗に聞こえる傘!」

律「雨の音が綺麗に聞こえる傘!いいな、それ。」

すずめ「じゃあ律作ってよ。約束。」

その瞬間、二人の横を通った車が水溜りを横切り、しぶきがはねた。

律はとっさに、着ていたパーカーの袖ですずめのスカートの濡れた裾を拭く。

律「安もんだから、このパーカー。」

すずめ「私はちょっとかわいいの着てきた。みんなに会うのが久しぶりやったから。」

律「うん。気づいとった。」

すずめ「家帰ったら、洗う。」

すずめのモノローグ、〈ドキドキしとった。ほいでも、この気持ちはないことにしよう、と私は思った。心にしまって、やがて忘れよう、と。律にそんなのは気持ち悪い。私と律にそんなことは、似合わない。それでもいつものように夜がやってきて…。〉

これがとびっきり良い。律はかしこくて、素敵な男の子だ。すずめに踏み込まない。関係性に名前をつけようとしたりしない。すずめのことを、ゆっくり、 大事に、待っている。というかんじがする。

5/7 月

律は京大ではなく東京の私立大学に進学することになる。
綺麗な顔とひょうひょうとした出で立ちによって忘れがちだが、律くんはプライドが高くハートが弱い。自尊心が繊細だ。それは律くんの両親、とりわけお父さんがよく認めるところ。

上京直前に律くんがすずめに河原で打ち明けた、

「でもすずめ…これはすずめだから言うけど たぶん俺はそんなにできないんだ」

これは紛れもなく、和子さんが言うところの、「心の真ん中」に他ならないとおもう。

"マグマ大使は英雄だからいつだって英雄じゃなきゃいけない"とむかし和子さんが言っていたことを思い出したすずめは、この笛は律にとってずっと重荷になっていたのかもしれないと感じ、とっさに笛を川に捨てようとする。そして律くんはすずめの手を掴んで止める。

「やめて、捨てないで」

すずめはゆっくり笛を三回吹いて、りー、つー… と呼ぶ。
律くんは、はい。と答える。

「これは、捨てないでください」

これは、いちばんにはなれない、と悟っておそらく静かに絶望した律くんにとって 唯一、自分を何者かにする、希望の鍵のようなものなんだな、とわたしもその時気付いた。 美しいシーンでした。


5/14 月

「何があっても、全てあの時のときめきからはじまっていることを 忘れるものか!」

これは秋風羽織の作品、として作中で使われているくらもちふさこの作品の中で本当に登場するモノローグだけど、この、ときめきに対する力強い決意、いいなーー、って思います。 このドラマにぴったりな台詞。

そのあとすずめが叫んだ

「私は先生のセリフを、先生の漫画を、先生の世界を!いつもそっと抱きしめて生きてる!」

という台詞もとても好きです。

律くんはマンションの隣人で大学の同級生の正人と仲良くなる。この2人がとてもいい。ひょうひょう淡々としているけど人類、とりわけ女の子への愛が豊富で深すぎるあまりやたらとモテる正人と、 賢くて繊細で思慮深すぎる律くん。

律くんの部屋のチャイムを鳴らして律くんを呼び出した正人と律の会話がすき。

正人「律、飯食った?」
律「正人、ここ!」
正人「ん?キスマーク?」
律「なんつってー! 嘘。」
正人「お前ね…」
律「何食う?」


5/15 火

喫茶おもかげにて律くんと隣人の正人くんがナポリタンを食べるシーン。

律「でも正人のほうがもてんじゃん。」
正人「そりゃそうだよ俺やさしいもん。ディスコとか行くだろ?マハジャロとか。」
律「マハジャロ!やっぱいくんだ。すげーな。」
正人「お立ち台とか、軽い女ばっかだと思ってたりするでしょ。でもさ?うちにあった扇子。あれ、こうやってするといい匂いすんの。その子が言うには、こうね、風を送った時にいい匂いがするようにって扇子にも一滴オーデコロンを垂らすんだって。そういうの聞くとなー、あー、女の子だなーってキュンとするんだよね。」
律「そんなんだから何人にもなっちゃうんだよ。彼女が。」

5/19 土

秋風先生のところをクビになったすずめが律の家にいき、東京最後の夜だから…と、正人と3人でマハジャロにいく。 家に帰り、すずめをベッドに寝かせて自分たちは布団で寝る律くんと正人の会話。

正人 「あの少女漫画とかによくある幼馴染ってやつ?」
律「いや、それより少女漫画っぽい。一緒の日に生まれた。」
正人「じゃあ逆に一緒に寝たってなんもないんじゃん」
律「なんだけどさあ。まあ一応、お互い子供じゃないし。」
正人「ふーん。なんか、いいね。甘酸っぱい感じが!……青いね!」
律「は?」

律は自覚をしてますね、たくさんたくさん。でも私は男の子になったことがないので男の子のこのへんの機微がわからんなー。わからんからこそ面白い。 まだまだ青い、半分よりもっと青くて楽しい、などと思いながら… わたしは80年代の終わりから90年代のはじめの東京の空気感(勿論生まれる前のことなのでフィクションで知るそれが)がすごいすきで、その中で若い人たちがどんな風に恋をしていったのか、ということにもとても興味がある。 携帯のない時代の恋愛、その最後の世代がこの辺くらいなのでは、と思う。 喫茶おもかげに置いてある電話に呼び出しの電話がかかってきたりするの、すごい!素敵!と思う。 来週からも楽しみです。

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