傷つける言葉選び

同じ事象でも、表現に用いる言葉で全然違うイメージを与えるということは良くある。

例えば締め切りが迫ってる案件があったときに、「あと10分しかない」と「あと10分ある」とでは全く雰囲気が違う。

「締め切りまで残り10分」であることはどちらも同じだけど、「〜ない」と否定形で言われると、暗い気持ちになる。

否定形を用いること

今日の試合で、実況のアナウンサーが打席に立つバッターについて「(今季)ヒットは3本しか打っていません」と紹介した。

※「3本」とだけ聞くと、「"しか打ってない"と言われても仕方ないよ」と思う人もいるかもしれないが、バッターは投手だったから、ヒット3本が著しく悪い数字ではない。また打率については.107で、これも投手の打率としては、特出して劣るような数字ではないことは断っておく。

アナウンサーは事実をそのまま伝えれば良かったのに、なぜ「〜打っていない」とわざわざ否定形の表現を選んだのか、非常に気になった。

いや、はっきり言って気に障った。

ビジターチームのバッターだから、貶しても問題がないと判断したのだろうか?はたまた、そういう言い回しでも何も問題がないと思ったのだろうか?

「(今季)ヒットは3本です」と事実だけを伝えれば誰も傷つかなかったのに、「3本しか打っていない」と否定的に表現することで、傷つくひとがいることに気がつかなかったのだろうか。

百歩譲ってプロ野球の世界に明るいOBがそう紹介するならまだしも、そうではないアナウンサーが、なぜそういう表現を用いたのか、非常にモヤモヤした気持ちになった。

アナウンサーが「その程度の打者だから、簡単にアウトになる」という意味を込めて、「〜しか打ってない」と言ったのだとすれば、選手の力を否定しているわけだから、こんなに悲しいことはない。

幼稚だから、「じゃあ何本打ってたら『◯本打ってます』って紹介してくれんの?」「線引きはどこから?教えてよ」とすら思ってしまった。

いずれにせよ、ホームチームびいきの実況・解説になることについては、なんとも思っていない。だけど、野球中継はホームチームのファンも、ビジターチームのファンも見ていることをどうか念頭に置いていてほしい。

そして不必要に見ているひとを傷つけないで欲しいな、と切に思う。

言葉のプロであるアナウンサーだからこそ、同じ事実を伝えるのであれば、視聴者を傷つける言葉選びには注意して欲しいな、と少しわがままながら願う。

#エッセイ #コラム #言葉

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