第百十二回 Gt 虎|MOVIE TORAVIA 海外ドラマシリーズ『ザ・ラストシップ』について語る(ネタバレあり)おまけ『イカゲーム』

みなさん、海外ドラマの『ザ・ラストシップ』って観たことあります?

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『ザ・ラストシップ シーズン1』

俺は前情報で「シーズン2までしか面白くない」っていうのを知ってたんで、それ以降はあまり期待してなかったんですけど。改めてシーズン5まで観ちゃうと、すごいドラマだなと思ったし、ウイルスやワクチンとか、今観ると面白いんじゃないかなと思ったので、今回はこのドラマを分析していこうと思います。

まずこのドラマの凄いところは、目的が途中から変わっちゃうところなんですよ。ウイルスの話がいつの間にか戦争の話になっちゃうとか。そんなドラマ、他には無かったなって思うんです。でも、それでも最後まで観られちゃう。そこはバランスがいいからだと思うんですね。普通の海外ドラマって、必ずサブストーリーがあるんですよ。そうやって本編とは関係ないストーリーを挟んでシーズンを延ばしていく。でも『ザ・ラストシップ』はサブストーリーに行くことなく、目的が変わってもそのまま突き進んで行くんですよ。シーズン2までは纏まりがある感じなんだけど、「シーズン3はこんな感じ」「4はこんな感じ」ってシーズンごとに、映画みたいに目的が変わっても突き進んでいく。そこがめっちゃ面白くて、このドラマは最後まで観られちゃったんですよね。

知ってます?このドラマ、Amazonの評価がめっちゃいいこと。Amazonって意外と辛口評価が多いから、ここまで評判が良いドラマってなかなか無いから、「なんでこんなに評価が高いんだろう」と思って俺はこれを観たんです。だから、船とか軍艦が好きで観たんじゃないんですよ。でもね、こういう海軍を扱ったドラマを作るってなった時、アメリカは国がバックアップにつく訳ですよ。こういうところなんだよなと思いましたね、日本のドラマとの差は。ドラマで国が全面的にバックアップしてくれることって、日本では無いですからね。このドラマはアメリカの海軍が全面協力してて。シーンによってはCGもありますけど、軍艦「ネイサン・ジェームズ」とかアメリカ海軍の駆逐艦は本物を使ってると思うんですよ。出てくるミリタリー系のものとかも、ちゃんとしたものを使ってるし。ミリタリー系は僕好きなんで、これに出てくる武器とか着てるものもちゃんとしてるものだなというのは分かるんです。そういうところは日本のドラマと違って凄いなと思いますね。

次に凄いなと思ったのは、エリック・デイン演じる艦長のトム・チャンドラーの存在。途中からレオナルド・ディカプリオに見えてくるぐらい意外とイケメンなんですよね。でも、そのチャンドラーはシーズン後半に向かって太っていっちゃうんですね。役柄でどんどん心を病んでいくからそうしたのかなと思ってたら、本当に心が病んじゃってうつ病になってたらしくて。それでこの撮影自体もしばらく止まってたみたいなんです。そこも凄くないですか?本人が心が病んじゃってたってところがちゃんと役柄にも繋がってたんだって思うと「凄っ!」って思いましたね。

あともう一つこのドラマが凄いなと思うのは、世の中がコロナに襲われる前にこれが撮影されてたってことなんですよ。アメリカのドラマだから、ザ・アメリカなところ、「アメリカ最強」みたいなところはもちろんあるんだけど、世界にウイルスが蔓延してしまった時のアメリカの友好関係ってこんな感じなのかって。そうなった時のアメリカを中心とした世界情勢、パワーバランスが浮き彫りになるところは凄いなと思いながら、なるほどと思っちゃいましたね。その中で日本の立ち位置はというと、「ワクチンだ」って言ってワクチンじゃないものが送られてきて、それで消滅していくんだけど。でも、その中には生き残りが居て。アメリカに騙されたと思い込んで彼らと戦ったりするんだけど、最後は仲間になっちゃうの。この日本に配布されたワクチンの話とか、あながち無い話じゃないなと思いましたね。今だけに。そもそも、コロナに襲われる前までは「ウイルスが世界に蔓延?何のこっちゃ」みたいな感覚だったじゃないですか。ウイルスが蔓延する=バイオハザードの世界だと思ってたんで。

バイオハザード

『バイオハザード』(2002)

そこでこのドラマがまた凄いのは、ウイルスを扱ってるのに、ゾンビが出てこないところなんですよ。そこがリアルで。ウイルスが蔓延したらワクチンを作るという流れは、まさに今と同じなんですよ。それで、そのウイルスが治まってきた時のダメージ。「人口が減ってダメージが残っている世の中ではどんどん争いが勃発してこうなっていくんだよ」というのがシーズン5に至るまで、綺麗に描かれてるんですよ。

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『ザ・ラストシップ ファイナルシーズン』

観てるといろいろ想像しちゃうんです。変異したウイルスは人間だけじゃなく、次は植物を死滅させていって食糧危機が起こるとか、「これ、あるかもな」と思いましたもん。ドラマは年月を飛ばし飛ばしで描かれてますけど、「世の中が食糧難に陥って最後は戦争」というのは物語としてはいい流れだなと思いましたし。実際にダメージが残った世界がそういうことになったら、多分こうなっていくんだろうなと思いましたね。だから、ちゃんと戦争で終わったところは逆にリアルで、素晴らしいなと俺は思いました。これをコロナ前に観てたらシーズン5まで観きれてないかもしれないです。今だから「これ、あるわ」ってすんなり観られた。コロナでドラマほどの打撃はまだ受けてないものの「本当ならこうなってもおかしくなかったのかも」という感覚で観られちゃいますね。そんなリアルな一面もありつつ、これは海軍、軍艦の話なんで、海の上最強っすね!海上のバトルも楽しかった。ただ最後に『プライベート・ライアン』のオマージュっぽくなるのがアレでしたけど。

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『プライベート・ライアン』(1998)

やれGPSだなんだが普通に使えて、ドローンを飛ばして人が乗ってないもので攻撃する時代だったらこうはならなかったけど、色んなものが使えなくなってしまったら、結局は当たって砕けろという原始的な戦争になっていく。それを言いたかったのかなと思いましたけどね。あとこのドラマが面白いのは、シーズン5まであるのに、メインキャストたち、重要人物がわりと早いシーズンからバンバン死んでいく。そこも新しくてよかったですね。スコット博士とかシーズン2で殺されたんで、「こんなに早くに死んじゃうんだ」って。

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限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…

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