第百二十六回 Gt 虎|MOVIE TORAVIA 虎年特別企画「厳選!一度は観ておきたい虎おすすめ名作ホラーMOVIE」(後編)

僕の連載では初の特別企画ということで、自分が観てきたホラー映画の中から、みんなにも観てもらいたいと思った作品を厳選して紹介している訳ですけど。選んでたら色々出てきちゃって。今回は後編として、前回紹介しきれなかった作品を解説していきたいと思います。

最近はNetflixで韓国のゾンビ映画が“Kゾンビ”とか言われて散々もてはやされてますけど、日本のホラー映画も“Jホラー”として注目を集めて、ハリウッドでリメイクされていた時代があったんですね。そのブームのきっかけを作ったのが、前回紹介した「リング」なんですよ。今回はまず、この「リング」がなぜそこまで日本のホラー映画の金字塔と言われるまでになり、海外でJホラーブームを作るまで評価されたのか。その分析から語っていきたいと思います。

リング

『リング』(1998)

まずこの「リング」は、時代にも合ってたんですよね。当時はどこの家庭にもビデオデッキというものがあって、ビデオにダビングをしていた。今はそんなことしないじゃないですか?昔はそれをみんなが日常的にやってたからこそ、「リング」の"ビデオをダビングする"という行為があまりにも身近すぎて、そこにものすごい恐怖を感じた訳ですよ。「着信アリ」は、その時代にちょうど日本の日常生活の中に携帯電話が広がり出した頃だったから、みんな携帯の着信音が鳴っただけで新鮮で、驚いて喜んでた。そういう時代だったんですね。

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『着信アリ』(2004)

「着信アリ」はそこを逆手に取って、携帯の着信音を"恐怖を感じるアイテム"にしていった訳ですよ。だけど今なんて、スマホの着信音が鳴ったぐらいじゃ誰も驚かないし喜ばないでしょ?驚くのは災害を知らせる緊急速報の音の方だから。今の「ビデオって?」「ダビングって?」とか「ガラケーって?」っていう世代の人にはなかなか「リング」や「着信アリ」で描かれた恐怖は伝わらないでしょうね。だからそれを考えると、その時の時代性が作品の恐怖をさらに倍増させてたところがすごくあったんだなと思ったんです。

「リング」という作品が素晴らしいのは、効果音が少ないところなんですよ。みなさん、気づいてました?例えばね、"井戸の音"とか"貞子の音"というだけで、作品を観たことがある人は“キーコー”っていう音が聞こえてくるじゃないですか?それぐらいしか、あの映画は効果音が入ってないんですよ。効果音は控えめにして日常の音しか入れないことで、貞子や井戸が出てきた時の効果音で強烈な印象を与えてるんです。対して、アメリカのホラー映画とかを観てもらえればわかるんですけど、恐怖に至るまでの過程に効果音がたくさん入ってくるんですよ。だから、ハイライトの場面で効果音が入ってきても、そこまで恐怖を後押しするような効果は感じない。そういう意味で、「リング」は効果音の使い方でもホラー映画として革新的だったと思うんですよね。それ以降の日本のホラー映画はその影響を受けてたと思います。「呪怨」とか。

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『呪怨』(2000)

怖い音だけを中心に聞かせて、それ以外の音では変に恐怖心を煽らない。そういう効果音の使い方をするようになっていきましたよね。それほど、「リング」という作品は偉大で、後々のシーンに大きな影響を与えていった、世界に誇れる日本のホラー映画だと思いますね。

ということで、ここからは海外の作品に目を向けていきたいと思います。何に恐怖を感じるのかというところでは日本と海外ではカルチャーが違うので、作品選びが難しいところではあったんですが。まず選んだのは、有名な“死霊館”シリーズから「死霊館 エンフィールド事件」を紹介したいと思います。

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『死霊館 エンフィールド事件』(2016)

“死霊館”シリーズというのは、超常現象研究家のエド&ロレイン・ウォール夫婦が遭遇した実際の事件を元に2013年からシリーズ化。スピンオフまで制作されたホラー作品なんですけど。実際、このシリーズはほとんど観たんですよ。観たんだけど、エクソシスト系の超常現象だからそんなに怖くないんです(笑)。なんだけど、その中でも「死霊館 エンフィールド事件」は唯一面白かったんで、観るならこれをおすすめしたいですね。監督は大人気シリーズ「SAW」を作り出したジェームズ・ワンですから。

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『SAW』(2004)

この"死霊館"シリーズにしても「エクソシスト」、「シャイニング」にしてもそうなんですけど、海外ホラーは主に超常現象、ポルターガイストを見せるものが多いなと改めて思いましたね。最近も、ちょっとタイトルは忘れちゃったんですけど、小説家が曰く付きのところに住んで、その原因を探ろうとしてたら幽霊に乗り移られちゃったという作品を観たんですけど。大体の海外ホラーは、何か異常な状態、「事態が起きて、その原因を突き止める」という感じのお話しの流れなんですよね。原因究明に向かって何かをしていくところが冒険チックで、そこはホラーというよりもゲームっぽいんですよね、俺からすると。そういうものがむちゃくちゃ多いなと思いますね。その中で「死霊館 エンフィールド」は、解決するために超常現象と頑張って戦おうとする映画なんですけど。そこで戦いすぎると「コンスタンティン」のようなアクション映画になっちゃうんですが。

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『コンスタンティン』(2005)

日本と違って、向こうの人は幽霊を見るとなぜか戦いたくなるみたいで(笑)。"悪霊、幽霊を退治する"という方向に向かうんですよ。「エルム街の悪夢」でもフレディを殴ったりしてますもんね。

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